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第五福竜丸は平和をめざす№1 [アーカイブ]

第五福竜丸から伝えたい

               第五福竜丸平和協会事務局長、展示館主任学芸員  安田和也

  きょうも第五福竜丸展示館には子ども達のにぎやかな声がひびく。「わーでけえ」「なにこれ?」「本物かあ」の声があがる。4月半ばから6月にかけては、春の修学旅行や社会科見学のシーズンであり、小中学校、高校の生徒たちの見学が多い。年に400校を超える学校の見学があるが、展示館では、ボランティアガイドの方たちが、ほぼ全ての学校にお話をしている。また一般来館者のグループにもお話している。21世紀が始まった2001年春にボランティアの会がつくられ、展示館で「説明が聞ける」ことが知られるようになってきた。 

 ビキニ事件から半世紀以上が経ち、直接事件を知らない世代が大多数になることは、ある意味では当然であろう。しかし、被災した船の実物が保存されているからこそ、多くの人が足を運び、あるいは公園に遊びにきた市民が見学していく。入場料を取らないことも大事だ。展示館では、第五福竜丸の被災の模様や乗組員の被害とともに、マーシャル諸島の被ばく者、戦後の核兵器開発とその被害、核兵器に反対する人々があることも伝える。また、この船が、アジア太平洋戦争直後の日本の復興の時期に建造され、食糧難の時代に遠洋漁業に従事した木造船として、現存する唯一の貴重な資料であることも話している。

 来館者の感想を紹介しよう。「私は家で母たちに第五福竜丸のことを話しました。母が「そうなんだ、わかった!」となっとくして、父や妹たちにも話していました。みんなの耳に第五福竜丸のことを聞いてもらいたいと思いました」(小学6年・女)。「過去はもう変えられないものです。第五福竜丸の悲劇は真実です。しかし未来は私たちの手で作りだしていくものです。説明を聞いて、原爆や戦争のない平和な世界が広がればいいと思った」(中学3年・男)。 

 今年は、新藤兼人監督が作られた映画映画「第五福竜丸」の公開50年にあたる。展示館では、5月半ばから6月末まで映画についての企画展と上映会を開く。新藤さんは、「第五福竜丸は生きている」の言葉を揮毫して下さった。たくさんの市民の声で残された第五福竜丸、原水爆のない、平和な港に錨を下ろすその日まで、この船は生き、航跡を刻みつづけるだろう。久保山愛吉無線長の遺した言葉、「原水爆の被害者はわたしを最後にしてほしい」とともに、第五福竜丸は、いまこの世界に生きる者たちにメッセージを発信しつづける。

 新藤兼人監督と第五福竜丸   

 東京・江東区夢の島公園、ここは40年前までは都民が出すゴミの廃棄場所であった。その埋立地は、後に造成されて都立公園となった。その海に面した一画に木造の遠洋マグロ漁船・第五福竜丸の展示館がある。


 新藤兼人監督(現役最高齢監督、97歳)が、1958年から制作し59年2月に公開された映画「第五福竜丸」、そのビキニ水爆実験に被災した船の実物が保存される小さな博物館である。第五福竜丸は、全国の多くの市民による「原水爆反対」「被害を後世に伝える」との平和のとりくみで遺され、都によって展示館が建てられたのだ。   
  ビキニ水爆被災から55年、事件を直接知らない国民は7割に達するという。いまを生きる市民にとって、映画「第五福竜丸」は、歴史を生きた事件として追体験する貴重な映像となっている。何度か来館された新藤監督は、“どうしても撮っておきたかった”、“劇ではあるがドキュメンタリーのように事実に忠実に撮る手法で作った”と話してくださった。資金もないなかで、焼津ロケの宿代も払えず食事はゴハンと味噌汁とおしんこだけ、国際的に多くの賞を受賞した「裸の島」の収入により数年後に支払った、というエピソードも紹介された。興行的にも「暗い」内容は、なかなか当時の庶民の足の向くところではなかったという。

 ビキニ事件から55年を経たいま、私はこの映画を観て感動を新たにする。ここには、貧しいが朴訥とした田舎の漁師町に生きる人びとの姿があり、その海の男たちに突然降りかかった水爆実験の「死の灰」、被ばくとその後の経緯、それに関わった人々が描かれていく。無線長・久保山愛吉とその妻、宇野重吉と乙羽信子という名優は、英雄的主人公ではなく、市井の漁師とその妻である。夫と妻のまなざし、子どもへの想い、取巻く人々の暖かさ、当館が所蔵する久保山さんへのお見舞いの手紙3千通からも感じられる、その心が静かに伝わってくる。水爆という巨大な破壊、暴力とその理不尽さが、観る私たちにひたひたと迫る。


映画公開50年記念企画展と上映会

5月16日より6月30日まで企画展「新藤兼人監督・映画第五福竜丸50年」をおこなう。

6月の毎週土曜日 映画「第五福竜丸」の特別上映会開催入場無料

                               <但しカンパは歓迎>。

  夏休み子どもイベント 7月25日(土)8月2日(日)9日(日)11:00am◇平和の絵本のおはなし会―マーシャル諸島の子ども達のお話を読みみんなで考えます。◇工作教室―牛乳パックでつくろう第五福竜丸 いずれも参加無料・予約不要  

                     イベント等の問合せ 、

                                        東京都立第五福竜丸展示館  URL http://d5f.org)                                    

                      東京都江東区夢の島3-2 夢の島公園内

                                        TEL:03-3521-8494 FAX:03-3521-2900                                                                  E-Mail:fukuryumaru@msa.biglobe.ne.jp                   


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