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図書館の可能性№1 [アーカイブ]

図書館の可能性 

                               

                    昭和女子大学教授 大串夏身

はじめに 

 「生涯学習」は、ほとんどの地方自治体が政策の一つとして採り上げていますが、成功例ばかりではないようです。元来、生涯学習は、市民の自発的な学習欲求に発するものであり、自律的であるべきだからです。立川市の市民組織『知の木々舎』は、市民が自ら、手作りで学習組織を創り、ネットマガジンと講座を展開するとのこと、その発展を期待します。昨年、立川市中央図書館で、市民講座「大串夏身の情報検索術」の講師をお引き受けしたことがあります。6回の授業に約20人の市民のみなさんが、熱心に情報検索の世界に入ってこられました。これがご縁で、多くの方と顔なじみになりました。  

 さて、熟年のみなさん、生涯学習に意欲をもやすみなさん、余暇を活かしたいと思うみなさん、こうしたみなさんに、図書館は、豊かな情報をもたらしてくれます。図書館を専門とする私の立場から言えば、「情報基盤は図書館で創ろう」と呼びかけたいのです。

図書館の可能性は人間の可能性でもある。

 図書館の可能性は人間の可能性でもある。図書館の利用を通して、人が育ち、人間として成長し、成長した人間がより良い社会を作り出していく。これが図書館の究極の目的である。同時に図書館の可能性を示すものでもある。図書館は人間が作り出してきた図書や雑誌などを集めて整理し、保存して、人間がそれらを活用する場・施設である。人間が作り出してきた図書や雑誌などは人間の知的な創造物である。                           知的な創造物には、写真、音楽CDDVDビデオ、インターネット情報源なども含まれる。それらの利用を通して人が知識・知恵を作り出し、知的な創造物を作り出し、また、先に述べたように人が育ち、人間として成長し、成長した人間がよりいい社会を作り出していくものである。また後世に知的な創造物を伝えるという目的ももっている。                                 

 図書館で入手した資料・知識・情報を人間が活用することによって、子育てに役立つ、健康になる、学習の成果が上がる、読書習慣が身につく、美しい図書に出会う、生活に役立つ、ビジネスに役立つ、企業経営に役立つ、研究成果がまとまる、楽しみが増える、新しいアイディアが湧くなどの効用をもたらす。これらは、利用者の人間としての、幼児として、生徒としての、学生としての、社会人としての、それぞれの可能性を広げるものである。また、その結果として、社会の中によりいい効果をもたらすことにもなる。このように考えると、図書館の可能性は人間の可能性である。これは社会の中に図書館を置いたときの可能性と言える。           

 可能性と言った場合、いま一つ考えられる。それは図書館それ自体の可能性である。それは、図書館の活動・サービスを充実させることである。図書館は活動・サービスを充実させることによって、住民の利用機会を増やし、利用を促進する。利用の機会が増えることは、利用者の図書館の活用の内容を豊かにして、それだけ利用者にさまざまなものをもたらす。利用者の人間としての可能性を高めることにつながる。図書館自体の可能性つまり活動サービスを充実させることは、このように、利用者の可能性を高めることにつながる。                     

 図書館の活動サービスを充実させることによって図書館の利用者が増え、図書館の活動が支持され、図書館が一層充実していくことが可能になる。もちろん、そのためには充実プラン具体化のために、計画的で効率的な経営、設置母体へのはらたらきかけ、公共図書館の場合には、議会や行政当局、教育委員会へはたらきかけが必要であり、住民への日常的な図書館のサービスのアピールが必要であることは言うまでもない。これは、図書館の内部の可能性であって、前述の社会の中に図書館を置いたときの可能性がより強く、より広くあらわれるようにはたらきかけるものである。その意味で狭義の可能性と言っておこう。

 さらに、図書館の可能性を高めるためには、次のような考え方がある。それは、(図書館の価値)を高めることを通して、図書館の可能性を高めるという考え方である                           (図書館の価値)を高めることによって、図書館に対する認知度が高まり、理解が深まり、図書館を充実させるようにはたらきかけが行われ、その結果、資料費が増え、職員の数が増え、図書館がより多く作られ、図書館の可能性を高めることができるというものである。しかし、実際にはすぐにそのようにうまくいくとはかぎらない。価値という直接的に表現できないものを中心にすえているために長い時間がかかることになる。まず図書館を利用者が利用して、プラスの効果を得た、あるいは、得るだろうという事例について、公共図書館を舞台にして考えてみよう。公共図書館に寄せられる質問を手がかかりに考えてみる。              『図書館の可能性』青弓社 


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