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雑記帳2023-11-1 [代表・玲子の雑記帳]

2023-11-1
◆武蔵小金井の三光院サロンの今秋の講座は斉藤陽一さんの『絵巻の魅力』です。
今回は2講目の『鳥獣戯画戯画』を紹介しましょう。

『鳥獣戯画』は『源氏物語絵巻』『伴大納言絵巻』『信貴山縁起絵巻』とともに、「四代絵巻」と呼ばれ、いずれも国宝に指定されています。

全長44mに及ぶ絵巻は甲、乙、丙、丁の4巻からなる絵巻は、彩色を施さず、すべて墨のみでえがかれています。詞書(ことばがき)もなく、制作年代も定かではありません。また、どういう絵師が描いたのか、宮廷絵師なのか、絵仏師なのか、画僧なのかわかっていません。制作年代は各巻で異なっていることから見て、平安から鎌倉時代初期に描かれたらしい。どうやら異なる時期に複数の絵師によって段階的に描かれたと想像されています。

また、多くの人に親しまれている『鳥獣戯画』は京都、高山寺に伝わっているものの、どのようにして高山寺に伝わったのかは不明。こうした謎だらけの絵巻ですが、謎を知らなくても十分に楽しめるのが絵巻なのです。
現在、鳥獣戯画絵巻は甲乙巻は東京の、丙丁巻は京都の国立博物館に寄託されています。

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斉藤さん持参の甲、乙、丙、丁の4巻

講師の斉藤さんは現役時代、担当するNHKの番組「日曜美術館」で『鳥獣戯画』をとりあげました。その折、ゲストに漫画家の手塚治虫さんを招いたところ、手塚さんは非常に驚かれ、「戯画は漫画そのもの」というメモをのおしています。斎藤さんは「一体、漫画というものはどれだけ進歩したのだろうか。もう何百年も前にやられてしまった。」という手塚さんの声を聴きました。今世界中で日本のアニメは人気ですが、そのルーツはすでにこの時代にあったのですね。信貴山縁起絵巻にも既にアニメのテクニックが見られるそうです。

ちょうど、上野の国立博物館では「やまと絵」を開催中で。国宝四代絵巻は機関限定で展示されていました。
平安末期、それまでの中国の山水画から脱して日本独自でしゅ。画風が生み出されたのがやまと絵です。

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国立博物館のやまと絵展ポスター

さて、絵巻の甲巻の前半は、上質の杉原紙に擬人化した動物たちの遊びが描かれます。
「兎と猿の水遊び」はいきなり絵から始まります。泳ぎの得意な兎、下手な猿の構図はまるで夏休みの子どもたち。絵巻の中から音や声がきこえてきそうです。

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兎と猿の水遊び

注目すべきはこの画面の最後に秋草が描かれていることです。秋草は日本絵画を象徴する重要なモチーフで、夏の遊びがおわって秋になったことをあらわすのです。源氏物語にも多くの場面に登場しますが、夏から秋、やがて冬に向かって滅び去る、そんな時間の経過を示す役割をもっています。画面にすやり霞や秋草を用いて晩秋の風景に変わる、異時同図法は日本画独特の手法です。

「賭弓(のりゆみ)」は兎チームと蛙チームの弓試合です。

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平安末期、権力を誇った後白河上皇は大の遊び好き、同時に絵巻も大好きでした。上皇の命により、宮中の「年行事絵巻」がつくられましたが、弓試合も宮中行事の一つとして描かれています。、

次ぎの画面は「宴会の酒肴を運ぶ」場面です。

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ご馳走一杯の画面には焼き鳥役の動物も登場します。すべての動物がごっこ遊びに参加しています。

「空を飛ぶ兎」には秋の夜の観月が描かれ、月の中では兎が餅をついているようです。今昔物語の兎がモデルだといわれています。

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「甲巻」は全部で23紙あります。前半の10紙につづく後半は、絵巻通常の杉原紙を使った前半にたいして、使用済みの紙をすき返した再生紙に描かれています。画風も異なっているため、別の絵師が公的な注文品ではなく、極私的な形で制作されたのではないかと推測されています。

「猿の僧正への贈り物」には権力者に贈り物をする様子が描かれています。

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猿が僧正になって威張っている様子は人間の世界と全く同じ、それだけで面白いのですが、別の視点からみてももおもしろいことにきづきます。
ここに登場する贈り物の中に鹿や猪があり、猪は馬の見立てだと言われています。
「甲巻」に登場する動物たちの8割が実は兎、猿と蛙です。甲巻の三役は、いずれも説話や伝承で、「不思議な力をもった存在」とされていました。

乙巻にはこの三役は登場せず、牛、馬、犬、庭折など身近な家畜が描かれます。
仏教では、「牛・馬・犬・鶏・豚・羊」は「六畜(りくちく)」と呼ばれ、それらの出産と詞は「穢(けが))れ」の対象とされました。
甲巻には六畜は描かれていない、猪を馬に見立てたのはそのためです。

「印地打(いんじうち)」の場面では、兎が猿をおいかけています。横にはひっくり返った蛙がいます。
印地打は節句の行事として行われた子どもたちの石合戦です。

「蛙の田楽おどり」には猫やイタチも登場します。
「年中行事絵巻」にも「田楽」の場面があります。「田楽」は怨霊をしずめるため、御霊会(ごりょうえ)などの時に催されました。

『鳥獣戯画』の中で、最も親しまれている場面は「蛙と兎の相撲」ではないでしょうか。」兎を投げ飛ばして見栄を切る蛙の図は「異時同図法」ですね。

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「蛙と兎の相撲」は真に遊びに徹していて、実際の力士の取り口「河津がけ」を蛙がとっているなんて、誰だってわらってしまう。先に紹介した、遊び大好きの後白河上皇の今様を「梁塵秘抄」に見ることができます。

     遊びをせんとや生まれけん 戯れせんとや生まれけん
      遊ぶ子供の声聞けば 我が身さへこそ ゆるがるれ

「法会(ほうえ)」には読経する猿の僧正と供養の参列者たちが描かれています。

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膝で印字を結ぶ蛙は釈迦如来象にになりきっているよう、ミミズクは聞き耳をたてています。
法会が終了し、猿の大僧正にはお礼の品々を献上されます。
膝で手の指を結ぶ蛙の僧正は釈迦如来の像をまねて満足げ。様々な供物を運ぶ動物たちが描かれる場面で甲巻はおわります。

過去のずさんな修復の斎、バラバラにされて散逸してしまった画があったり、継ぎ合わせた際に順序を間違えたのだはないかと思われる場面もありますが、それを抜きにしてもとにかく『鳥獣戯画』は面白い。
当時、貴族の家の男子は寺で教育を受けました。年中行事を教えたり、一緒に遊んだりするために絵巻を使ったと考えられます。
手塚治虫も、絵巻には子どもも大人も楽しめる魅力があると言っています。

乙巻は、甲巻には描かれていない身近な動物や想像上の霊獣、珍獣が描かれた一種の動物図鑑です。
巧みな動物描写から甲巻後半の作者と同一人物ではないかとされています。

丙巻は、甲巻、乙巻とは異なる画風で、制作年代は鎌倉時代初期と思われます。
前半は人間たちの、後半では動物たちの遊戯が描かれています。

丁巻の制作年代も鎌倉時代。
最初から最後まで人間たちで構成され、即興的なタッチで描き出された画面は、他の三巻には見られない特徴で、近年は「名人が他の巻をパロデイ化したもの、敢えてくずして描いた」との評価もあるということです。」、

三光院の10月の精進料理のメインは里いものあんかけです。寺の畑で収穫されたばかりの里いもをいただきました。

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