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検証 公団居住60年 №113 [雑木林の四季]

XⅥ 規制改革路線をひきつぐ民主党政権、迷走の3年余

   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治 

7.内閣府「都市機構の在り方に関する調査会」

 2011年の後半になり政府・民主党内に消費税増税と社会保障の「一体改革」案づくりが本格化し、そのまえに「身を切る行革」の証しとして独立行政法人と特別会計の改革、国有財産の見直しが急浮上してきた。
 行政刷新会議は9月15日、「独立行政法大改革に関する分科会」を新期開設し、独法改革のさらなる推進をきめた。そして翌12年1月20日に「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」を閣議決定した。新聞各紙は「付け焼き刃の行革」(朝日)、「身を切る行革アピール」(読売)などの見出しで、現行102法人を65に4割減、17特別会計を11に減少、国家公務員宿舎の売却、国立競技場の命名権活用などの具体案を報じた。のこる65法人のうち都市再生機構と住宅金融支援機構は同年夏まで結論を先送りしたことにかんして、読売は「2法人は独法の目玉だ。見直しができなければ、画竜点晴を欠く」と煽った。
 「基本方針」は都市機構にかんしては、「業務の分割・再編、スリム化」「会社化の可能な部分について全額政府出資の特殊会社化」を検討し、12年夏までに結論を得るよう指示した。
 この閣議決定にもとづいて内閣府に設置された「都市再生機構の在り方に関する調査会」(会長吉川広和DOWAホールディングス相談役、委員ほか7人)は、2月9日の第1回会合にはじまり、3月16日の第4回で「論点整理」、28日の第6回に「機構の在り方の基本的な方向性」をまとめた。その間、全国自治協や不動産業者等からの意見聴取をしている。検討すべく整理した論点は50項目にもわたっていた。「基本的な方向性」といいながら、粗雑、矛盾、問題だらけなのは、吾川会長も議論のなかで自認している。
 都市機構の在り方調査会は、全16回の会合をへて12年8月28日に「報告書」を発表し、政府の行政改革実行本部に提出された。報告書の発表前に日経(8月18日夕刊)は一面トップで報道し、「URの改革案が固まったことで民主党政権が進める独立行政法大改革にメドがつくことになる」と、政権のねらいを書いた。
 報告書は、賃貸住宅の再編が機構改革の柱であるとし、その主旨は賃貸住宅の分割、株式会社化につきる。
 まず機構組織を、①運営改善分野(新しい行政法人に移行する)と、②企業経営分野(当面は政府100%出資の特殊会社とし、速やかな株式売却も視野にいれて民営化する)に2分割し、これを事業ごとに位置づける。都市再生事業とニュータウン事業は運営改善分野として新法人に移行し、賃貸住宅事業については運営改善分野と企業経営分野に2分割して再編する。
 住宅資産は行政法人と事業会社に分割するが、両分野とも基本的に市場家賃で運営する。区分は固定化せず、状況に応じて、行政法人の資産を事業会社にたいし業務委託や追加譲渡をおこなう。行政法人に移行する賃貸住宅は、用地ごとの管理方式を導入して損益管理を徹底し、収益上有利な集約事業を優先する。事業会社においては、行政法人の繰越し欠損金を解消したうえは、速やかに株式売却をおこなうことを想定した取り組みをし、収益の最大化をめざし、資産・負債を削減するため、民間と同じ基準での売却を積極的に進める。
 報告書は、概ね以上の改革案をふまえ2013年度中の法案提出をめざし、所要の法改正等を速やかに実施すべきである、と結んでいる。
 報告書は9月14日の全閣僚が出席した行政改革実行本部で了承され政府方針となった。政府は政策立案、法案の準備にとりかかったはずである。しかし政局は急転し、11月16日に国会は解散、12月16日の総選挙で民主党は大敗した。
 第2次安倍内閣は成立するとすぐ、規制改革会議を復活させた。そして11124日、2013年度予算編成の基本方針を閣議決定するなかで、つぎのことを確認した。
 「特別会計改革の基本方針」(2012年1月24日閣議決定)及び「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」(2012年1月20日閣議決定)は、それ以前より決定していた事項を除いて当面凍結し、2013年度予算は、現行の制度・組織等を前提の編成するものとする。特別会計及び独立行政法人の見直しについては、引き続き検討し、改革に取り組む。

『検証 公団居住60年』 東信堂


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