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過激な隠遁~高島野十郎評伝 №72 [文芸美術の森]

ノート 11

   早稲田大学名誉教授  川崎 浹

父母の墓と思ふにあらざれど
何とて来しかこゝよ筑紫野

この野辺と思ひも更らになく立てば
東も西も日は暮れて行く

(なに故にこの野に立ちしか知らねども
この野辺に立ちゐて思ひも更らになし
東も西も日は暮れてゆく

山路行くさびしきものとは思はねど
つれ人なきぞなほゆたかなり

一人行く山路けはしといふなかれ
つれ人なければ思ふことなく

夕暮るゝ昼の姿の黒々と
たゞ一すぢに明け渡りゆく


下上後前大地四方八方十万足の裏からまで吹きつけて来る吹雪の中、
身をよける片物もなく


花も散り世はこともなくひたすらに
たゝあかあかと陽は照りてあり

『過激な隠遁~高島野十郎評伝』 求龍社


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