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行くも良い良い、行かぬも良い良い(往きは良い良い…改め)物語 №99 [文芸美術の森]

行くも良い良い、行かぬも良い良い……物語
こふみ会通信 №99 (コロナ禍による在宅句会 その14)
「蚯蚓鳴く」「蕎麦」「鰯雲」「冷ややかに」
         俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

当番幹事(下戸氏&小文さん)から連名で、下記のような≪令和3年9月の句会≫の案内が届きました。
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9月に入り残暑が厳しいだろうと思いきや、拍子抜けの涼しさです。
サックサックと作句が進むことと思います。
さて、兼題と日程が決まりましたのでご案内いたします。

【9月兼題】
①蚯蚓(みみず)鳴く
②蕎麦(そば)の花
③鰯雲(いわしぐも)
④冷やか(ひややか)

【スケジュール】
投句締切:9月13日(月)
一覧配信:9月16日(木)
選句締切:9月20日(月)
結果発表:9月23日(木)
を予定しております。

*天句にはいつものように鑑賞短文をお願いします。
*今月幹事を務めますのは下戸と小文です。投句送信は両名までお願いします。

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【上載の通知によって作成・投句された今回の全作品】は下記のとおり  16名  64句

【蚯蚓鳴く】
蚯蚓鳴く 女の髪の湯の香り【茘子】  
この星の綻ぶところ蚯蚓鳴く【すかんぽ】    
蚯蚓啼いて龍虎のごとし睨む猫【一遅】 
蚯蚓鳴くねぐらが空へすっぽ抜け【華松】
蚯蚓鳴くにあらず地球が泣いている【弥生】   
校庭はタイムカプセル蚯蚓鳴く【下戸】     
蚯蚓鳴き女友達ひとり減り【舞蹴】    
土深き埋もれる言葉みみず鳴く【小文】     
蚯蚓鳴く ラインの返事 待つ夜更け【紅螺】
蚯蚓鳴く弁当のおかず一つ増え【玲滴】
蚯蚓鳴く其処より闇の深まりて【虚視】    
行き先はきめておるんか蚯蚓這ふ【矢太】
蚯蚓鳴く「逢いたい」とありし古手紙【鬼禿】  
蚯蚓鳴く八時閉店早よ帰ろ【尚哉】
みみず鳴く ひと晩中の 事でした【孝多】   
暑も涼も 寝苦しき夜 蚯蚓鳴く【兎子】

【蕎麦の花】 
戸隠をめぐりて白し蕎麦の花【尚哉】      
白白白 白白白白 そばの花【孝多】       
雲渡る山肌一面そばの花【玲滴】  
阿蘇の野に座布団敷くや蕎麦の花【下戸】   
バス停は2キロ先らし蕎麦の花【虚視】   
見はるかす信濃は蕎麦の花明かり【弥生】
あちこちに白き風吹く蕎麦の花【小文】   
山の奥山また見えて蕎麦の花【舞蹴】      
白馬の三山照るや蕎麦の花【すかんぽ】 
蟄居さえ いずれ実になる 蕎麦の花【兎子】  
蕎麦の花マスクの一茶とすれちがい【鬼禿】 
蕎麦の花厳しき土地を飾りたり【華松】   
谷に落つ 斜面に健気(けなげ)蕎麦の花【茘子】 
蕎麦の花旅ゆく僧の五六人【一遅】     
雨雲の 限界集落 蕎麦の花【紅螺】   
なにごともなかったように蕎麦の花【矢太】 

【鰯雲】
鰯雲ひとは流れて転がつて【すかんぽ】    
肩寄せて 言葉は不要 いわし雲【孝多】   
鰯雲突然やってきた別れ【玲滴】      
鰯雲だれもが無口になってゆく【矢太】   
拭く窓のそばより浮かぶ鰯雲【小文】   
渾身の一打逆転鰯雲【虚視】     
健やかな君がいた日の鰯雲【弥生】
ECMO外(と)れ今 生きており鰯雲【鬼禿】  
鰯雲「遠くへ行きたい」聴こえ来る【尚哉】
いわし雲飛行機キラリ山の端へ【一遅】 
鰯雲着物の裾に揺れている【華松】
待ちぼうけハハハと笑う鰯雲【下戸】     
山手線乗っても降りても 鰯雲【茘子】   
鰯雲 空がわらうよ 独り見る【兎子】     
青い芥子 チェレラ峠の 鰯雲【紅螺】     
風を読む人差し指に鰯雲【舞蹴】 

【冷やか】
突っ掛けし今朝のサンダル冷やかに【舞蹴】     
冷やかや鏡拭いても磨いても【矢太】  
5行目で途切れし詩の冷やかさ【下戸】     
秋冷の病床遠くなりにけり【すかんぽ】 
冷やかな片恋の朝迎へたり【小文】      
月明かり白き障子の冷やかに【虚視】   
冷やかは人の心の中にあり【華松】     
目覚めれば 頬冷やかに 35度4分【兎子】 
声消えし避暑地の窓の冷やかに【茘子】  
冷やかや 熟成五年の 酒母と【紅螺】
叢の露冷ややかに古戦場【玲滴】      
悲しめど 季は冷ややかに 移り行く【孝多】  
冷やかにさくさく終わる老暦【鬼禿】
季節(とき)動き干し物の陰冷やかに【尚哉】 
文机の冷ややかで知る風の章【一遅】      
冷ややかに硝子曇らせ夜が這ひ来る【弥生】

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●校庭はタイムカプセル蚯蚓鳴く【下戸】
鑑賞短文=きっと土の校庭。校庭自身が自分や、仲間達の思い出が詰まったタイムカプセル。遠い思い出が蘇る。蚯蚓の鳴き声が聞こえてきそう。(舞蹴)

●蕎麦の花マスクの一茶とすれちがい【鬼禿】
鑑賞短文=ユーモアたっぷり。またひとつ、可能性の枠をひろげてくれた作品。
嬉しくなります。気持ちが、ほぐれます。有難うございました。(孝多)

●阿蘇の野に座布団敷くや蕎麦の花【下戸】  
鑑賞短文=何か鳥になって風に乗り阿蘇の広い野を見下ろしているような楽しい句。
蕎麦畑は本当に座布団を敷くようにぽつんぽつんと畑の中にあった記憶があります。川合玉堂の「早乙女」を彷彿とさせます。(茘子)

●バス停は2キロ先らし蕎麦の花【虚視】
鑑賞短文=長閑な自然の風景と、あっけらかんとした諦めと、今この時間を楽しむ。そんな景色が見えました。(兎子)
鑑賞短文=旅自粛の昨今、信濃路ののどかないい旅をありがとう。2キロ先のバス停に行く道で「マスクの一茶」にでも会えますよ・・・(鬼禿)

●見はるかす信濃は蕎麦の花明かり【弥生】
鑑賞短文=こふみ会としてはめずらしく正統的な句。
内容的にはオーソドックスで類句もありそうですが、声にして観賞した時の句調の美しさ・テンポの心地よさは秀逸です。(すかんぽ)
鑑賞短文=蕎麦の花を花明かりと見る感性に感服いたします。(華松)
鑑賞短文=なんの説明を加えなくても、雄大な風景と、地元の人との交流が目に浮かんでくるようです。大きな句です。(尚哉)

●なにごともなかったように蕎麦の花【矢太】
鑑賞短文=今はコロナの猛威に苦戦したり、殺伐とした日常を送っている私達。
それでも小さな花は健気に逞しく生きている。「大丈夫だよ」と優しく語りかけてくれるような句です。(小文)

●渾身の一打逆転鰯雲【虚視】
鑑賞短文=鰯雲をバックに弧を描いて走る白球。想念の中で、無理なく秋の空を見上げさせる秀句です。(一遅)

●蟄居さえ いずれ実になる 蕎麦の花【兎子】
鑑賞短文=コロナによる長い蟄居生活。嘆いても始まらないので、またとない機会と捉えて時間を有効に使おうと心がけている。蕎麦の花がやがて実を結ぶように、この時間がコロナ収束の日には何かの形で実をむすぶだろう。私の思いを見事に句にしてくださいました。(弥生)

●冷やかは人の心の中にあり【華松】
鑑賞短文=冷やかさを見える触れるモノではなく、人の心という見えない触れないものと捉える。その視点に新鮮さを感じました。句の域を越えて、人とはなにかを語りかけてくる。(下戸)

●肩寄せて 言葉は不要 いわし雲【孝多】
鑑賞短文=確かにあった遠い日の情景。鰯を平仮名にする事で、チクリと胸が痛む甘酸っぱい気持ちが上手く表現されていると感じました。(虚視)

●雨雲の 限界集落 蕎麦の花【紅螺】
鑑賞短文=限界集落という厳しい現実のいっぽうで、蕎麦の花の咲くそこにも人の営みがある、心がほっとするような句だと思いました。(玲滴)

●山手線乗っても降りても 鰯雲【茘子】
鑑賞短文=都会にだって、美しい空があるんだよ。いや都会だからこそ、心に沁みる。(矢太) 

●蚯蚓鳴く 女の髪の湯の香り【茘子】
鑑賞短文=何か 少々エロくて 素敵です  (紅螺)

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≪今月の成績一覧≫

◆トータルの天=虚視・49点
代表句=バス停は2キロ先らし蕎麦の花
◆トータルの地=舞蹴・35点
代表句=風を読む人差し指に鰯雲
◆トータルの人=弥生・34点
代表句=見はるかす信濃は蕎麦の花明かり
◆トータルの次点=矢太・29点
代表句=なにごともなかったように蕎麦の花

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幹事より、ひと言≫
●この度、初めての幹事を仰せつかりました。毎月当たり前のように兼題が出され、ネット句会が進む事の難しさを痛感致しました。スマホでしかツールのない私には全く歯が立ちませんが、下戸さんが快くお手伝いを引き受けてくださり助けてくださいました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。電話で打ち合わせをすることもでき、お声が聴けて嬉しかったです。ありがとうございました。(小文)
●今回の天句、地句、人句、客句はすべて「蕎麦の花」の季題となりました。季題によって、難しいものとそうでもないものがあるのかな、と思っていたところでこの結果。俳句を考えるよい機会となりました。会に加えていただいてはや2年。みなさん上手いなあと、感心しているばかりなのですが、各人のスタイルも見え、また評価軸が見えてくるのは幹事の醍醐味とわかりました。俳句の方の腕も精進して上げていきたいと思います。(下戸)

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≪孝多からのご報告≫です。このブログのタイトル(題名)を変えました。どう変えたか。
『行くも良い良い、行かぬも良い良い……物語』です。それに続く『こふみ会通信№△△(コロナによる在宅句会 その△△)』は変わりません。
足を運び、皆さんが一堂に会して楽しむ従来通りのカタチもよろしいし、出掛けること無しで皆、それぞれの場にて喜びを満喫し合うという進め方もまた、悪いものではないとう考えです。
私たちは、これを、コロナ禍から学びました。
先回幹事の茘子さんも、このブログのコラム≪幹事よりひと言≫に書いて居られました。『文字の上だけのお付き合いも、なかなかと感じました。』と。
そうです、コロナの「禍」を転じて「福」と為しましょう!! 

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●〆切り日を延長しま~.す。
先般ご案内のアンケート。こふみ会メンバー限定です。
その回答の〆切り日を10月20日までと、延長します。
『オレはこう思うけれど、ほかの人たちは、どう思っているのだろうか?』それを知りたい人のために、きっと役立つアンケート。
相互理解が一層深まるチャンスです。どうぞ、とらわれること無く、こぞってご参加ください。下記のとおりです。規定して、会としての統一見解を打ち出そうということでは決してありません。

◆アンケート・その1は……
俳句はタテ書きであるべきだという声を、あなたはどう受け取りますか?
賛成である。反対である。どちらとも言えない。その理由は……(回答の文字数は自由)

◆アンケート・その2は……
俳句は旧仮名づかいで表記すべきだ。賛成である。反対である。どちらとも言えない。
その理由は…‥(回答の文字数は自由)

◆アンケート・その3は……
俳句は5・7・5と字間をアケて書くべきだ。賛成である。反対である。どちらとも言えない。その理由は……(回答の文字数は自由)

◆アンケート・その4は……
無季の句は「無季」と、添え書きをして投句すべきだ。賛成である。反対である。どちらとも言えない。その理由は……(回答の文字数は自由)

◆◆参加は匿名でもOK!です。
◆◆アンケートは①~④まで、同じ、一人の人が書いてください。
◆◆返信はコメント欄か、またはchinokigi@kg7.so-net.ne.jp にお願いします。
    不明な点は私、多比羅孝多まで。(048-882-7577) またはFAX 048-887-0049。
◆◆回答が出そろいましたら、まとめたものをメンバー各位へお届けします。

今後、折にふれて、今回のアンケートで頂いたご意見に触れながら、皆さんの理解を深めて参ろうと、孝多は考えております。

では皆さん、天候不順、コロナワクチンへの疑問などと、あれこれ不穏なことの多い昨今ですが、どうぞ、御身を大事になさってくださいますよう。また次回。在宅句会はまだまだ続くでしょうけれど。草々

              令和3年10月1日  多比羅 孝多

 

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