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バルタンの呟き №100 [雑木林の四季]

「Boys be ambitious !」

           映画監督  飯島敏宏

「少年よ、大志を抱け!」この言葉は、明治9年(1876)アメリカ合衆国マサチューセッツ州から来日して札幌農学校(北海道大学)の教頭としてキリスト教布教と農業指導に務めたWilliam Smith Clark博士が、後年アメリカに帰国するに当たって、生徒たちに遺した言葉だと言われています。
大正、昭和にわたって、永い間、教会、学校などの講演の際に頻繁に引用されたフレーズですが、昭和7年生まれの僕は、戦時中の集団疎開学園時代の農耕指導の先生の口から初めて聞かされ、戦後間もない飢えと窮乏の最中にも、良く聞かされた言葉です。
 身分的経済的な成功の夢を象徴する「アメリカンドリーム」とは違って、「大きな志を持ちなさい、志とは、自らの成功を願うのではなく、人々の幸福の為に尽くすものである」というキリスト教的な教訓で、明治維新から間もない頃の、飢饉や貧困に喘ぐ農村の若者たちばかりでなく、太平洋戦争敗戦後の、飢えと貧困に苦しんで、将来に希望を失いかけていた若者世代を鼓舞する言葉として、広く人口に膾炙した言葉です。
 しかし、わが国では、76年前、占領軍であったアメリカから棚ぼた的に与えられた民主主義と、朝鮮戦争特需で恵まれた契機からの産業経済的高度成長を遂げるうちに、真の意味で大志を抱いた政治家、官僚、教育者、経、財界人の後継者が育たずに、今日の人材的危機を迎えてしまったのが実情ではないでしょうか。
 確かに、昨今の国会中継で国民の前に晒される様態は、到底、憲法に謳われた三権の分立が重んじられているとは思えない、惨憺たるものです。僕、バルタンの眼には、まるで、未熟な議会制民主主義が機能を失って、軍国主義政権の思うままに国政が暴走した太平洋戦争直前と同様にしか見えないのです。いや、一般の方々、若い人たちの眼にも、同じ光景に映っているのではないでしょうか。
 ところが、報じられるところによると、直近の傾向として、本来は、優れた学者、教育者、官僚、政治家などを生み出すために、国費で賄われている東大など国立大学で学びながら、それらへの登竜門である国家試験(国家公務員総合職試験)を受験することなく、外資系の人気企業などに進もうとする学生諸君が多いといいます。官僚だけでなく、特に教職希望者の減少も甚だしいと報じられています。有力政治家の膝下に敷かれているかに見える官僚、過酷な労働を強いられている教職員の現状に、学生諸君の進むべき道としての魅力が感じられないのかもしれません。
 さて、本題は、なぜ、僕、バルタンが、わざわざクラーク博士の古い言葉を持ち出して「少年よ!大志を抱け!」と呼びかけたいのか、です。
 クラーク博士の唱えた大志とは、五輪に象徴される平和と協調の下で行われる近代オリンピックの始祖Baron Pierre de Coubertinの言葉「人生で最も重要なことは、勝利(triumph)する事ではなく、十分な準備を整えて奮闘する(struggle)ことである、その結果として、慎重で寛容な人間性 (generous humanity)が得られるのだ」とも共通する言葉です。
本来、近代オリンピック競技大会に望まれるものの第一は、世界各国、人類全体の善隣と平和であって、決して、現在、IOCと共に日本政府が求めている政治的経済的利益が主体であってはならないのです。
この項を書き込んでいる現在、まさに新型コロナウイルス変異株の蔓延という喫緊の課題を抱えながら、優に過半数を超える国民の意向さえも無視して、専門家、医師団の見解を尊重しつつと言いながら、ほとんど強権発動の形で開催されようとしている東京オリンピック・パラリンピックが、間近に迫っているのですが、ネットの世界はともかく、テレビ、ラジオ、新聞の世界では、若い人たちの声が、規制されてカットされたのかとさえ疑いたくなるほど、ほとんど見聞きされないのです。
 特に、学生諸君は、すでに社会にあってそれぞれの身分や地位に身を置いている大人たちと違って、世間や会社のしがらみに関わらない、いわば忖度の必要がない若者たちであるのに、という思いもあります。
 現実に目を向けて見ましょう。すでに開会式まで旬日あまりに迫りつつある現在、「新型コロナウイルスを克服した証として、安全安心の東京オリンピック・パラリンピックを」の決まり文句で、全てを強引なワクチン接種に賭けた、いわば、国民の命をオリンピックと天秤にかけて強行しようとする政権が、その代償として背負う莫大な費用は、僕たち高齢者は勿論、現役世代でも償還出来ないほどの文字通り天文学的な負債として、子供たち、孫たち世代、つまりあなた達に継承を強いるわけです。
 しかも、僕、バルタンの眼には、仮に「人類のコロナ制圧の証として東京オリンピック・パラリンピックを終えた」としても、その向こうに、殆ど確実に、全地球的に、壊滅的な戦争の炎が窺い見られて仕方がありません。世界中に広まりつつある経済的民族的抗争は、第三次というよりも、終局的世界戦争への危険をはらんで、急速に危険水域に達しているのです。中露vs欧米の対立の狭間にあって、中立の位置に身を置くことが不可能に見えるわが国の実情、これこそが、現在、皆さんたち若い世代が見つめなければならない現実ではないでしょうか。今、なのです。今こそ、もはや人間性など微塵も差し挟むことのない惨憺たる戦火が、地球はおろか宇宙にまで燃え広がろうとしている現実に目を向けなければならい時なのです。もはや、宇宙戦争は、SFや幻想の世界ではなくリアルなのです。未だに未開発で、数年先の完成時には確実に無用の兵器となる超高価な戦闘機に、一体誰が搭乗して何を相手に闘うのでしょうか?希望者が無ければ、男女ともに兵役を敷くしかないかもしれません。即ち、あなた達なのです。これが、直近のリーダーたちが「この道しかありません!」と、旗を振って進んできてしまった道なのです。現在の環境がそうだからと言って、国の基幹分野に人材が失われれば、この国は、強大国への従属か滅亡につながるこの道を辿るほかはないのです。
 「Boys be ambitious !」
 だからこそ、大志を抱いて、挑戦しては如何でしょう。諸君の手で、改革するのです。若いあなたたちがトップに立って、進んで行く道を拓くのです。
 「Boys be ambitious !」
 これは決して、暴発の勧めでは決してありません。でも「ボーっとして暮らして」いては、この国の将来に希望は持てません。
 「少年よ! 大志を抱け!」
 政界、官界、教育界のトップを目指して、この国を、世界を、諸君の手で、改めてしっかりと築きなおすのです。残された時間は、もう僅かなのです・・・
 


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