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検証 公団居住60年 №91 [雑木林の四季]

 ⅩⅣ 住生活基本法は小泉構造改革の総仕上げ

   国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

1.住宅政策の大転換をめざす道筋づくり

 2003年6月13日に都市再生機構法が成立すると、これを皮切りにわが国の公共住宅制度は「構造改革」の名のもとに、いっきに解消にむかい、住宅政策体系の大転換へとすすんだ。
 口火を切ったのは日本経団連、4日後の6月17日に「〈住みやすさ〉で世界に誇れる国づくり-住宅政策の提言」を発表、24日には国土交通省の社会資本整備審議会住宅宅地分科会が「新たな住宅政策のあり方について」の建議案をまとめた。
 経団連提言は、「住宅投資は経済波及効果が大きい。内需拡大や資産デフレ克服の観点から、経済活性化対策としての住宅政策を絶え間なく推進することが必要」として、住宅政策を「国家戦略」と位置づけ、住宅建設計画法の改廃と「住宅・街づくり基本法」の制定をとなえた0具体的な政策には、住宅取得支援税制の導入、証券化型住宅ローンの普及、新耐震基準以前に建てられた住宅の建て替え・リフォームの促進、中古住宅市場の活性化、老朽化マンション建て替え促進等をあげる0財界団体らしい儲け口拡大の方策にぁゎせ、定期借家契約への切り替え規制の解除や公営住宅の期限付き入居制等をもとめた。
 大学教授らが名をつらねる国交省審議会の建議案は、経団連提言の主旨をなぞって住宅政策「理念」の転換をとなえ、具体的な指針をならべた。公的住宅の直接供給から市場政策にきりかえ、市場落伍者は「住宅セーフティネット」で救済するとの建て前である。公団・公庫を廃止して、次なるねらいは住宅建設計画法の廃止である.住宅建設計画法は住宅確保を「国民の生活権と行政の責任」という枠組みでとらえていた。この枠組みをこわし「企業と消費」「契約自由」の関係におきかえる。基本を市場原理にすれば「居住権」の根拠はなくなる。
 建議案にたいし全国自治協は代表幹事多和田栄治の名で03年7月31日に意見書を提出した。「住宅不足は解消した」をはじめとする建議案の前提を批判し、国民の居住実態についての正確な認識をもとめて反対意見をのべた。審議会は国民からよせられた意見を反映させることなく、語句を一部訂正しただけで「建議」として9月11日に発表した。
 この時期、住宅政策の転換、市場化をさけび、財界・政府あげての大合唱がはじまっていた。審議会「建議」のほかに、定期借家契約の普及、正当事由制度の見直しをもとめる政府の総合規制改革会議の03年12月22日付「規制改革の推進に関する第3次答申」、経済同友会の04年6月23日付提言「〈住宅価値〉最大化による内需拡大の実現を」等が出ていた。
 2004年9月29日に国土交通大臣は社会資本整備審議会に「新たな住宅政策に対応した制度的枠組みはいかにあるべきか」を諮問する。10月14日に小泉首相が衆院本会議で公明党太田昭宏議員に答弁するかたちで「住宅基本法の制定については、住宅政策全般の見直しのなかで幅広く検討していく」と表明する。そして翌15日には国交省住宅局が「06年度にむけて住宅建設計画法のあり方を議論したい」とのべる。
 こうした経緯をへて同審議会住宅宅地分科会は12月6日、「制度的枠組みのあり方に関する中間とりまとめ」を発表した。その直前の11月19日には自由民主党の住宅土地調査会が、「住宅政策の抜本改革に向けた緊急提言」をおこない、そのなかで06年通常国会で「住宅基本法」(仮称)の制定をめざすと言明した。するとただちに国交省住宅局は「これらのとりまとめ等を踏まえ、住宅政策全般にわたる主要課題と改革の道筋を明らかにするため」と称し、「中間とりまとめ」と同じ12月6日に「住宅政策改革要綱~住宅政策の集中改革の道筋」を発表した。
 政府がめざす住宅政策の「構造改革」の眼目は、公共住宅制度3本柱の廃止であり、住宅建設計画法は住宅政策の転換に障害となった。国交省の「住宅政策改革要綱」は、「公共住宅3本柱の改革」を2005年度にはたすべき急務とした。住宅関連3法案はその露払いであり、住生活基本法の制定へとつづく。

『検証 公団居住60年』 東信堂


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