SSブログ

批判的に読み解く歎異抄 №28 [心の小径]

『異議編の批判的読解~歎異抄の著者唯円の立場』を掲載するにあたり、「全体の構成」中の註・資料を省略しましたが、「おわりに」に入る前に改めて註、資料の部分を付記して紹介します。

歎異抄の構成
         立川市光西寺住職  寿台順誠

2、「師訓篇」及び「異義篇」の構成と両者の関係  2

 さてここで、構成の問題についてまとまりを付ける意味で、以上のように十八か条と三つの序から出来ている『欺異抄』の一条一条がどういうふうに並んでいるのかということについて、江戸時代後期の大谷派の学者・妙音院了祥(1788-1842年、岡崎出身)の説を図式化して示しておきたいと思います(巻末の【師訓篇と異義篇の関係図式】及び妙音院了祥『欺異抄聞記』1842年『続真宗大系』21巻、1940年、22頁、101-102頁、134頁-135貢、246頁等参照)。実を言いますと、『歎異抄』は唯円が書いたという説を出したのはこの了祥です。この人の師匠で有名な香月院深励(1749-1817年)は『欺異抄』を書いたのは如信だと言っていましたので (香月院探励「歎異抄辞林記上」 1817年『真宗大系』23巻、1930年、383-384頁)、それまでは如信説が有力だったのではないかと思われます。でも、了祥が初めて著者は唯円だということを証明しようとしたのですね。しかも彼は『歎異抄』十八か条をどういうふうに見たらよいのかってことを非常に分かり易く示しました。そして近現代の多くの学者がこの人の説を下敷きにしていますから、大概の説は基本的にその焼き直しだと言ってもよいですね。ですから、この人の著述を読まないと『歎異抄』の基本的なことは分からないのです。そこで、私はこの了祥説に従って巻末の【師訓黛と異義篇の関係図式】という表を作ったわけです。
 それで「師訓篇」がどう並んでいるかと言うと、了祥はまず一条~三条を「安心訓」と呼んでおります。つまり信心について述べたものだということですね。それから四条~十条を「起行訓」と呼んでおります。言ってみれば信心に対してこれは実践ということでしょう。そしてさらに細分化すれば、四条~六条は「利他」について、七条~九条は「自利」について述べているとし、最後の十条を「自利利他円満」として、これが総括的な文章になっているという見方を了梓は提唱しているわけです。今日は「師訓篇」についてはこの程度にしておきますね。
 それから「異義篇」について了禅は図に示したように「誓名別信計」と「専修賢善計」の二つに大別し、十一条(誓名別信章)・十二条(学解念仏章)・十五条(即身成仏章)・十七条(辺地堕獄章)を前者に、十三条(禁誇本願章)・十四条(一念滅罪章)・十六条(自然回心章)・十八条(旛量分報章)を後者に配当しているわけです。今日はこれからこの「異義篇」について詳しく見て行くことにします(10)。

註(10) なお、「師訓篇」と「異義篇」の関係について金子大栄(1881・1976年)は次のように述べている。巻末の【師洲竹と輿韻語の関係図式】の中の「==線は強い関係を示す」というのは、以下の文で金子が 「その対応のとくに明らかなのは誹録の第一・第二・第三と、欺異の第十一・第十二・第十三である」ということを図に示したものである。講演当日は金子のものは読まなかったが、【師訓篇と異義貨の関係図式】の補足としてここに注記しておきたい。「語録と歎異との間には、おのずからなる対応がある。しかしその対応のとくに明らかなのは語録の第一・第二・第三と、欺異の第十一・第十二・第十三である。その中にも、「念仏より外に往生のみちをも存知し、また法文等をもしりたるらんと、こゝろにく1おぼしめしておはしましてはんべらんは、おはきなるあやまりなり」という第二章と、「他力真実のむねをあかせるもろもろの聖教は、本願を信じ念仏をまうさば仏になる、そのほか、何の学問かは往生の要なるべきや」とある第十二葦との対応は何人も気づかれることであろう。また「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」の第三章と、「この条、本願をうたがふ、善悪の宿業をこゝろえざるなり」とある第十三章との対応も明瞭である。これをもって推せば第四章巳下の語録が第十四章以後の欺異の証文となることも推知されよう。・・・ただその対応は、前三章のように逐条的ではない。・・・最も重要なることは、第一章と第十一章との対応である。その第十一章は、いわば唯円の欺異総論である。これに対して第十二章以後は、欺異各論ともいうべきものであろう。したがって語録における第一章もまた親鸞の行信の全体を述べたものである。それは語られた真宗の要旨である。この点から見れば第二章以下の語録も、第一章に摂まるのである。それだけ第二革の言葉は含蓄が多く、容易に了解しがたいものがあるようである。」(金子大栄校註『歎異抄』岩波書店、1931年、9-10頁)

寿台1-2.jpg
『歎異抄』「異議篇」の一般的な見方
寿台2-2.jpg
師訓篇と異議篇の菅家図式
(上2図は左クリックして拡大してご覧ください)


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。