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対話随想余滴 №35 [核無き世界をめざして]

余滴35 関千枝子から中山士朗様

            エッセイスト  関 千枝子

 きょうは三月二八日、私の誕生日なのですが、都知事の「自粛」要請が出ていて、なんだかしんとしています。新型コロナウィルスは日本だけでなく欧米でも急に増えて、大変な騒ぎになっています。コロナを軽く見るつもりはありませんし、まだまだ分からない面も多く、慎重に対処しなければなりませんが、何だか私には腑に落ちないことが多いのです。それに、慌てふためく人々、情けないし、私は日本人に対して少し、「不信感」を抱きました。戦前、国策に沿い、お国のためなら仕方がないと、一丸となり突き進んでいったことを思い出します。もちろん、戦争と、感染症と一緒にしてはいけませんし、少しでも早くコロナを退治したい思いは同じですが。
 今回の都知事の要請は、「不急不要」の外出を取りやめてほしいと言い、都だけでなく都を取り巻く県(神奈川、埼玉、千葉、山梨)も同調したので、多分、都心や盛り場はガラガラになると思います。それはいいとして、要請が出た直ぐ後、買い占めがおこったのには驚きました。食べ物(冷凍食品など)を買い占めるなど、スーパーの前には朝から長蛇の列、大混雑になったそうです。(情報を入れてくれる人がいるので)。こんな混みようでは、一番いけないと言われる人々の密集状態になるのではと思います。ひところトイレットぺーパーがなくなるというデマが飛び、大丈夫といくら言っても駄目で、トイレットペーパーは売り場から消えました。駅のトイレに積んであるトイレットぺ-パーを盗んでくる人もあったそうで驚きましたが、二七日のスーパーでもトイレットぺ-パーを抱えている人を見かけました。いくらあると言っても不安なのですかね、本当に足りないマスクや消毒薬はものすごく高いのが出回っていたり、こんな時に儲けようなんて、あきれ返ってしまいますが。 
 さて、私の「不信感」の内容ですが、とにかくオリンピックの延期が決まったら急に感染者の数が増えてきたことです。安倍さんはとにかく自分の任期中にオリンピックをしたい、だから、感染の数を抑えてきた。というのは、日本の検査体制は非常に遅くて、まだ検査未了がいっぱいある、韓国は非常にチェックが早く、だから韓国の数が多いという話もあります。検査が遅いのは問題だとかねて思っていました。それがイタリアはじめ欧州、そしてアメリカの広がる、その中でオリンピック延期が当然のことのように言われ、一年後に完全な形でやる、と安倍氏の思うような形で収まった。中止にならないで、安倍さんはほっとしたと思います。学校の一斉休暇で日本人の中にも委縮気分が蔓延している。これも想定以上の成功ではないでしょうか。
 私、安倍首相が全国一斉に学校の休校を言いだし、これは専門家にも相談せず、萩生田文科相とも少し意見が違ったのに(萩生田氏は安倍さんに最も信頼受けている人)、要請を出した。学校の休校は、地域の教育委員会で決めることで総理の権限でないのに、結局、九八%の学校が休校になった。新型インフルエンザ対策特別措置法の対象に新型コロナを加える改正法も成立、何時でも「緊急事態宣言」を出せる。 
 その直後、オリンピックを延期せよという声が出始めたのですが、今年の夏は無理として、安倍首相の望む、延期して完全な形でやる、ということになった。その直後から東京の感染者が急に増えだした。どうもこれ、遅れている検査の中で判明した感染者の数を出してきたのではないかと思うのですが、私の考えすぎかな。そして、週末に自粛を呼びかける都知事の要請が出た。感染源が判らない感染者が増えたためと言いますが、その方々のデータが全く出さず、ただ重大な局面を強調するだけなのに私は不信感を持っています。感染源が判らなくてもその方々の行動がもう少し詳しく判ればと思ったのです。東京は広いです。例えば、私の住む南部臨海方面と、都の北西のはずれ、八王子あたりと全くちがいますものね。
 それで、自粛の週末が終わり、新たな感染者の数が発表され、それが今までの最大の数だったのですが、その中に感染経路がよくわからない人が多くいることが発表されました、また、驚いたことに台東区の大きな病院で、感染が出ていることが分かりました。小池都知事は不要不急とは何だと問われ、生活物資を買うため(スーパーなど)や、医療のためなら仕方がないといったのですが、病院の大量発生とはね。また、感染経路のわからぬ人の中に、バーやキャバレー、若い人ならカラオケなど具体的な名前を出し、特に夜間の自粛を要請したのです。夜のテレビは、飲み屋街などがガラガラになっているさまを見せ、これらを経営している人々の困っているさまを映し出していました。コロナ騒動が起こってから消費がぐんと落ちているのに、これで、小さな飲み屋などつぶれてしまうのではないかしら。
 自粛がうまくいかなかったら、総理の「緊急事態宣言」しかない。都知事も大阪府知事もそれを待つようなことを言っていました。緊急事態になって、それこそ集会は三人でも行けない、二人で歩く時も一メートル八十センチは開けろ(ニューヨーク市はそんなことになっているみたい)なんてことになったら大変だと思います。しかし、いわゆる「進歩派」でもコロナは別だ、自粛しようという人が多いのですが。
 私たち、女性「九条の会」(私も世話人の一人です)では、学習会に内海愛子さんを招き日本とアジアの問題を勉強する計画を立て、三月七日に学習会を開きました。「嫌韓」などという言葉ができるくらい、韓国に対して風当たりが強く、テレビのお昼のニュースショーなどを見ていると本当に戦争が始まるのではないかと思うくらいでしたので、時宜にあった企画と思ったのですが、コロナの騒ぎで、安倍首相の大きな集まりは持つな、密集はいけない、不急不要の催しは持つな、などの話があり、空気が一変しました。公共の会場は閉じてしまったところもありました。私たちの会にも予約の取り消しをいってくるひともありました。
 コロナという得体のしれない相手ですから、皆が恐れるのはわかりますが、これは過剰だと思うこともありました。私の街の図書館に私は本を予約していたのですが、取りに行くと、カウンターは開けていて予約した本を受け取ることはできるのですが、席も書架もロープを張りめぐらし、人が入れないようになっているのです。町の図書館で席と言ってもせいぜい一〇人くらいで一杯、書架に人があふれるようなこともありません。考えすぎではないかと思ったのですが、カウンターにいる係の人に言っても、区内の図書館は全部こうしています、というだけラチが開きません。私はこれはおかしいと思って朝日新聞の声欄に投書して採用されたのですが、反響多く、うちの街の図書館は締めてしまったという人もありました。
 それから、三月八日、私は大阪に芝居を見に行くつもりでした。大阪の人びとと私はかねて仲が良く、シニア劇団が私の『広島第二県女二年西組』の朗読劇をしていることなど前に書いたこともあると思いますが、大阪のいくつかの劇団が連携して、国防婦人会のことをドラマ化するというのです。私は国防婦人会が生まれた大阪築港の街で国防婦人会設立の十日後に生まれており、興味を持っていたので、大阪に見に行くことにしていたのですが、それも中止になってしまいました。大阪ではライブハウスで集団感染がおこり、それ以来空気が変わってしまったそうです。
 内海さんの学習会にもいろいろあり、本当にやるのですか、と、聞いてくる方も多かったです。でも、私は絶対にやろうと言い、内海さんも大変喜んでくださいました。私は開会のあいさつ、司会をやりました。こんな自粛ムードの時に来てくださった方に感謝し、この会は「不急」かもしれませんが「不要」とは思いませんので、と言いました、予約が減ったため会場も机なしで七十人くらい入る部屋で、机を入れて三十数人、広々と、密集ではありません、何お問題もない!
 学習会の内容は素晴らしく本当によかったです。こんな時集会など開いてもしもの事が会ったら、と皆、不安になるのではないかしら。でも私たちの会、開いてから二十日経ちましたが感染者も出ていませんし、何の問題もありません。
 しかし、コロナはますます感染を広げそうですし、いつおさまるか見当もつきません。
いろいろな会、中止、延期が続きます。困ったことです。
私がかねて心配していた被爆後七五年。オリンピックと重なることはなくなりましたが、コロナが収まらない、被爆の式典も自粛し時間も少なく簡素に、世界からの客もいらない、なんてことになったらどうしよう、など、今から心配しています。

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