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対話随想余滴 №17 [核無き世界をめざして]

対話余滴 17 中山士朗から関千枝子様

               作家  中山士朗

 お手紙拝見しながら、退院後の生活のご苦労が伝わってきます。
 入浴時には、ヘルパーさんに頼んで入浴介護を受けられてはいかがでしょうか。私は要支援1の資格認定なので、そうした介護は受けられませんが、私的に週一度程度掃除、買い物を手伝ってもらっています。
 以前は、独居老人の浴室での溺死、転倒死が新聞などで報じられても、他人事のように思っていましたが、足、腰の衰えを感ずるようになった現在では、一人で入浴するのが何となく不安に思われるようになりました。
 そのために入浴介護をお願いしたのですが、最初はやせさらばえた老体、被爆してケロイドを残した肌を異性の人の目に晒すことの気恥ずかしさを覚えましたが、今では、安心して入浴しております。
 関さんもぜひ入浴介護を依頼されて、安全、快適な入浴時間を持たれるよう、余計な事のようですが、提案いたします。
 トマトの話、被爆後にしきりに欲しがったことを思い出しました。その記憶のせいか、今でもトマトは欠かさず食べています。特に野菜中心の食事に切り替えてからは、スープ、マリネ、サラダは欠かさず食べています、サラダにはトマトが中心になった調理になっています。そのせいか、体調はいいようです。
 私のつまらぬ話ばかりしてしまいましたが、健康の秘訣は、目的のある仕事を持ち、楽しいことを想像しながら、美味しい食事を摂ることだと言われていますから、関さんもぜひそうしてください。
 とは言え、関さんの何時に変らぬ、しっかりした文体のお手紙を読ませて頂き、安心しております。特に早川与志子さんの思いを引き継いだ北杜市のコンサート再演の話、二〇二〇年の東京オリンピックの最中にシニア劇団の全国大会が開かれ、それに大阪のシニア劇団が関さんの『広島第二県女二年西組』で参加する話は、お聞きしているだけでもうれしくなってきます。
 お手紙の冒頭に書いておられました「令和ブーム」の現象、それに比し「海ゆかば」が人々の記憶から消え失せていることへの思いが綴られていましたが、私も同様な思いです。
 いつかも「令」について「命令」のイメージにとらわれると書いたことがありましたが、六月二日の朝日歌壇に高野公彦、永田和宏両氏の選の中に、
 令の字につきまとわれし兵の日日知る人ぞ知る今も夢路に
                (枚方市)鈴木七郎
の和歌が選ばれているのが目にとまりました。
 安倍首相は、しばしば「民意」という言葉を用いますが、この和歌に込められたものこそ民意であろうと私は思いながら読んだことでした。「海ゆかば」についても同じことが言えると思います。
 こうした民意をないがしろにした日本の政治は、どこに向かって行くかと想像すると、昔歩んできた道を行くようなきがしてなりません。
 お手紙の終わりに、ヒバクシャ問題に関心のある二人の大学生にお会いになられることが書かれていましたが、こうした若い人たちがヒバクシャから話を聞き、自分たちの言葉で、語り継ごうとする動きがあることに、私は期待しております。
 と言うのは、六月十三日の大分合同新聞の夕刊「旬の人」というコラムに、核廃絶への国会議員の姿勢を問うサイト開設に携わった安藤真子さん(24歳)の話が載っていたからです。彼女は広島市出身で、現在は神戸大大学院で被爆体験の継承方法を研究していて、「自分の言葉で広島。長崎を語り継いでいきたい」と決意を述べていました。
 彼女は身内に被爆者はいませんでしたが、周囲から「体験者の生の声を聴くことのできる最後の世代」と言われて育ったと言います。非核を訴える署名運動やヒバクシャへの聞き取りに関わりはじけたのは、高校一年生の時。原爆の記憶を家族にも話せなかった人が「あなたになら」と口を開いてくれたそうです。「思いに触れても、完全に理解することはできない」と悩んだこともあります。けれども。高齢化する被爆者から、「二度と同じ体験をさせたくない」との願いを託された気がして、「駆り立てられるようにして」話を聞いたと言います。
 ICANのノーベル賞受賞を祝う会で川崎哲氏と知り合い、被爆者と船で、世界各地を巡り、記憶を伝える活動に共に参加しました。航海を終えて、帰国した昨年末、前期サイトの解説への協力を依頼され、議員調査を担当し、事務所に約五百通のメールを送ったが、返事はほとんどなかったそうです。「核廃絶の立場が選挙で問われたことはない。各議員の姿勢を明らかにすることで、現状を変え、政府を動かしたい」との抱負を述べています。
 関さんがお会いになられる二人の大学生、そして安藤真子さんのような若い人たちが次次々に現れて欲しいと思います。そのためには、体験を語ることのできる最後の世代の私たちが、正確な記憶、記憶を継承しておかなければならないと思っております。

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