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検証 公団居住60年 №36 [雑木林の四季]

Ⅶ 公団家賃裁判 ― 提訴から和解解決まで

     国立市富士見台団地自治解消  多和田栄治

8 証人尋問 2

 鐘ヶ江証言は、清瀬旭ヶ丘団地の現場にみずから通い、詳細に課税台帳を調べるなどして信用度の高い鑑定書を作成し、有馬鑑定書と対比しての緻密な立論であった。証人は家賃構成費目の講学的な分析をしたうえで、公団家賃と民間家賃との違い、変更家賃算定の手法、被告公団の鑑定評価について意見を述べた。民間では原価計算はするが家賃は市場相場で決まり、したがって借家法7条の事情変更による増減が可能であるが、公団家賃は市場家賃とは関係なく取得原価をもとに算定しているから、賃貸借契約書も明記するように、その増減は維持管理費と公租公課の変更の場合に限られる。諸経費が変動すれば家賃がそれにつれて変動することには議論の余地はないが、土地建物を再評価して元本を変動させて家賃を増額すべきでない、と強調した。本来は、地価が高いから家賃が高くなるのではなく、家賃が高いから地価が高くなる。家賃のなかの超過利潤が地代になり、それを資本還元すると土地の価格になる。繁華街では超過利潤が多くなるから、地価が高くなる、といった論究にも及んだ。反対尋問で公団の代理人が鐘ケ江証人を特殊な見解の持ち主と印象づけようとしたが、鋭い切りかえしにあって失敗した。
 公団は「証拠は不動産鑑定書だけ」を主張してきたが、公団職員の証人を出さざるをえなくなった。本社管理部次長の柴山怜が反対尋問をうけたのは、84年5月の第25回法廷半ばからだった。この日も傍聴人席は立席も満杯で、裁判長が「東京地裁では立見は認められない」と注意したが、原告弁護士が「原告本人も入いりきれない狭い法廷に問題がある」と激しいやりとりの末、「次回はだめ」で落着した。また第28回法廷で、前回交代した新裁判長が突然「傍聴人はメモをとってはいけない」と怒鳴り、根拠をたずねると「私はずっとこうしている」の一幕もあった。
 85年2月の第30回法廷までの反対尋問をつうじて、とくに明らかになった点はないが、証人の、あいまいで、のらりくらり、自信なげな答え方が、原告の主張を裏づける形となった。

[原告代理人]家賃変更の仕方を定めた法律なり内部規定はあるのか。
[被告証人柴山]ない。
[代理人]土地建物の再評価について公団の諸法令には何の規定もないのか。
[柴山]ない。
[代理人]家賃値上げの理由は不均衡是正で、維持管理費の不足ではないというが、修繕費等の不足はなかったのか。
[柴山]そうです。
[代理人]収支の計算をせず値上げをしたのか。
[柴山]増額改定に結びつけた形での計算はやっていない。
[代理人]何を根拠に家賃が不相当に低廉になっていると言えたのか。
[柴山]大数観察から全体的な判断をした。個別に計算しなくても、常識的に著しい不均衡が生じたことがわかる。
[代理人]大数観察のさいの基準は何か。
[柴山]一般的な常識というか、社会通念で判断した。
[代理人]長期の未利用地や空き家の発生にかんして検査院とか総務庁からずさん経営と指摘されたことはないか。
[柴山]「ずさん」という言葉で指摘されたことはない。
[代理人]これらの支払い金利、管理経費はだれが負担するのか。公団経営への影響はどうか。
[柴山]全体のなかでやりくりしている。影響がないとはいえない。
[代理人]家賃にはね返ることはないのか。
[柴山]原価の構成要素になっている。家賃を決定する場合、いろいろの事情を考慮するから、(答えるのは)なかなか難しい。
[代理人]古い住宅は管理経費がまかないきれなくなるというが、だから値上げをいいだしたのか。
[柴山]いや、値上げ理由は不均衡是正である。


『検証 公団居住60年』 東信堂

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