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検証 公団居住60年 №22 [雑木林の四季]

大資本奉仕の実態と用地買収の黒い霧 2

          国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

2.大企業奉仕の特定分譲住宅

 特定分譲とは、あらかじめ企業等から譲受申込みをうけ、企業の所有地(あるいは公団からの購入用地)、または借地に、融資はもとより設計から工事まで一貫して公団が請け負い、社宅を建設する制度である。分譲住宅そのものが、当初から社宅建設を主に持ち家推進を図るものであったが、特定分譲はもっぱら、まさに特定企業の社宅建設を援助する、あからさまな企業援助策であった。大企業の投資の「合理化」、資本の節約、労働力の確保に公団は多大の資力を投じていた。
 公団は「中小企業の優先」を建て前にしていたが、申込み状況でみるかぎりでは大企業に偏っていた。1955~64年度建設の全分譲戸数11.2万戸のうち特定分譲は91.5%を占め、企業の申込み戸数では大企業の比率が、最低でも67%、70%台が多く、60年には87%を占めた。申込み件数でみると、59年度までは中小企業も40%近くあったが、60年代にはいると20%を切ることもあった。
 新日鉄の君津製鉄所が操業したのは1965年である。前出の南部は特定分譲にかんしてつぎのような回想を残している(『証言・日本の住宅政策』)。

 各企業とも社宅の需要がひじょうに多かった。高度成長で新しい工場をたくさんつくらなければいけなかった。新設の工場ができれば、必ずそこに200戸、300戸の社宅がいる。公庫の融資にも限度があるから、あとは公団に頼んで特定分譲でやることになった。そのいちばん代表的なのが新日鉄、当時の八幡製鉄の君津工場です。あそこには何千戸という社宅がいる。本来ならば企業が全部やるべきだろうが、「持分」という制度があって、社宅を建設したいという希望と合った。公団のほうは、耐火構造の住宅ができればそれだけ日本の住宅資産が増えるんだというふうに割り切っている。
 1973年度現在での特定分譲戸数が分譲住宅に占める比率を支社別にみると、東京53%、関東59%、関西75%、中部89%、九州90%を示している。この比率の大きさと住宅の所在からも中部の自動車、北九州の鉄鋼産業への偏りが察せられ、特定分譲の役割は明白である。

『検証 公団居住60年』 東信堂

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