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徒然なるままに №41 [雑木林の四季]

わたしにとって“戦後”とは何か

                       エッセイスト  横山貞利

       秋の日の
       ヴァイオリンの
        ながいすすり泣きに
       心傷み
       単調な
        もの悲しさを誘われる
          ポール・ヴェルレーヌ「秋の歌」より

 わたしが、この詩を知ったのは多分高校1年の時だと想う。当時、上田 敏の「海潮音」で、このヴェルレーヌの詩を読んで感銘を受けたのである。そして後年になってから知ったのだが、1944年アイゼンハワーか率いる連合国軍がノルマンディー上陸作戦を敢行した際、英国ラジオがフランス国内のレジスタンスに対して送った暗号がこの詩だったのである。もの悲しく哀愁を帯びたこの詩が第2次世界大戦終結への転機に用いられたのである。  
 わたしは、ヴェルレーヌのこの詩が好きなので、つい前節が長くなってしまったが、本題であるわたしの“戦後”について考えていきたい。
 1945年(昭和25)8月15日、太平洋戦争(当時日本では大東亞戦争と言われていた)が終わった。わたしは、小学校(当時は国民学校)の2年生で夏休み中のことであった。この日のことはこのエッセイでも何度か言及したと思うが、終戦(敗戦)から73年経った今でもありありと覚えている。
 昭和の歴史をみれば解るように、1931年(昭和6)に満州事変が勃発した。これ以降日本は満州(現在の中国東北部)支配から中国本土支配へと軍事力で進出しようと図った。即ち、1937年(昭和12)7月7日の盧溝橋事件をきっかけにして中国を軍事支配しようと試みた。所謂、支那事変である。それ以降日本は東南アジアへの進出を図り当時の仏印(フランス領インドシナ=現在のベトナム)へと積極的な軍事作戦を展開した。そうした情況の中で日米関係は決定的な悪化をたどった。その情況を打開するため、1941年(昭和16)4月から日米交渉が開始されたが交渉は進まず11月26日あの有名なハル・ノートを突き付けられた。ハル・ノートは「最後通牒」と言うべき内容で日本政府は追い込まれてしまった。そして、あの運命の日=1941年12月8日に突入したのである。
 (ハル・ノート=日米交渉のアメリカ側首席代表を務めたコーデル・ハル国務長官が提示した4条件の要求。日本にとって全く受け入れことができない条件であった)。
 日米交渉決裂を受けて、12月8日日本海軍は真珠湾攻撃を実施。同時に陸軍はマレー半島などで戦闘行動に入った。こうして日本は英米を中心に本格的な戦争に突入したのである。
 
 この戦争で、日本は310万人の犠牲者を出して1945年8月15日に終結した。
 そして、焦土の中で、「日本国憲法」と「教育基本法」が生まれたのである。
 だから、わたしの戦後は「日本国憲法」と「教育基本法」なのである。ただ、「教育基本法」は第1次安倍内閣によって改悪されたことを恥ずかしく思う。
 わたしが「日本国憲法」に接するきっかけになったのは、小学校5、6年ころで、偶々文部省発行「あたらしい憲法のはなし」を家で読んだことである。多分、この小冊子は当時中学生だった姉が授業で使用したものであろう。だから、全く偶然のことであって、それまで「憲法」というものがあることさえ知らなかった。高校時代、社会科では日本史、世界史、人文地理、時事問題があり、その中から1,2年で3科目選択することになっていた。そこで1年の時に日本史と時事問題を選択した。「時事問題」の授業で「日本国憲法」、「教育基本法」をさわりだけ学んだが、ほとんどは自習であった。「憲法の前文」と「教育基本法の前文」は共に「人間の生」の基本的理念が提示されている。それ故、わたしの「生の原則」は「日本国憲法」及び「教育基本法」の前文に全てが凝縮されているのである。
日本国憲法―1946年(昭和21)11月3日公布 1947(昭和23)5月3日施行
教育基本法―1947(昭和22)3月31日法25 1947年(昭和22)3月31施行
 このように「日本国憲法」、「教育基本法」ともに終戦後早々に公布され施行されたのであるが、その頃わたしは9歳から10歳であったから、まさにわたしは「日本国憲法」、「教育基本法」によって育てられたと言ってもいいだろう。
 わたしにとっての“戦後”とは、将に「日本国憲法」、「教育基本法」である。

   三夕の和歌
      新古今和歌集から

 寂蓮
   さびしさは その色としも なかりけり 槇立つ山の 秋の夕暮

 西行
   心なき 身にもあわれは 知られけり しぎ立つ沢の 秋の夕暮

 定家
   見渡せば 花も紅葉も なかりけり 浦の苫屋の 秋の夕暮    


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