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草木塔~種田山頭火 №23 [ことだま五七五]

帰庵

                           俳人  種田山頭火

ひさびさもどれば筍によきによき

 びつしより濡れて代掻く馬は叱られてばかり

 はれたりふつたり青田になつた

草しげるそこは死人を焼くところ

朝露しつとり行きたい方へ行く

 ほととぎすあすはあの山こえて行かう

笠をぬぎしみじみとぬれ


家を持たない秋がふかうなるばかり
 行乞流転のはかなさであり独善孤調のわびしさである。私はあてもなく果もなくさまよひあるいてゐたが、人つひに孤ならず、欲しがつてゐた寝床はめぐまれた。
  昭和七年九月二十日、私は故郷のほとりに私の其中庵を見つけて、そこに移り住むことが出来たのである。


曼珠沙華咲いてここがわたしの寝るところ

 私は酒が好きであり水もまた好きである。昨日までは酒が水よりも好きであつた。今日は酒が好きな程度に於て水も好きである。明日は水が酒よりも好きになるかも知れない。
 「鉢の子」には酒のやうな句(その醇不醇は別として)が多かつた。「其中一人」と「行乞途上」には酒のやうな句、水のやうな句がチヤンポンになつてゐる。これからは水のやうな句が多いやうにと念じてゐる。淡如水――それが私の境涯でなければならないから。

『草木塔』 青空文庫

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