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検証 公団居住60年 №16 [雑木林の四季]

4.家賃現行支払いから裁判提訴まで

           国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

 建設大臣が1978年2月27日に家賃値上げを承認すると、公団は3月に各戸に配達証明つきで値上げを通告してきた。9月からほとんどが上限7,000円の値上げだった。これには全国20万世帯が「不同意署名」でこたえた。公団は、値上げ幅の縮減、実施時期の延期などには応じたが、自治会・自治協との協議・話し合いは拒みつづけた。これを実現するために、自治協は「家賃の現行支払い」を居住者によびかけた。借家法は、賃料の増額について当事者間の協議が整わない場合は裁判が確定するまでは断額を支払えば足りると定めている。しかし家賃の現行支払いをするには、改定額が銀行口座から引き落とされないよう自動振り込みを事前に解約して持参払いに切り換えておく必要があった。8月末までに値上げ対象の60%の約21万世帯、多摩地区では85%におよぶ33団地、27,536世帯が公団に「現行家賃支払い通告署名」を提出した。公団からは記入欄が2つある家賃通帳がとどき、改定額を消し従前家賃額を記入して持参払いをした。
 公団は77年12月から支社長名で家賃値上げ実施の78年9月にかけ、値上げの理由や内容、措置等についてのビラを10回近く全戸配布し、79年1月になると「万一お支払いいただけない方には、訴訟でもって解決することになります」、2月には「家賃改定には、借主の同意とか協議は必要ありません」「周囲の運動に惑わされず、ご自身の責任と判断でお支払いを」「改定家賃を支払った団地から住宅修繕、特別団地環境整備をおこないます」といった懐柔、脅迫めいたビラも十数回にわたって全戸にまきつづけた。
 79年2月にはいって公団は、現行支払い世帯にハガキで「裁判にかける」と通告し、沢田悌公団総裁は国会で「裁判で決着」を表明した。これにたいし全国自治協は、公団からの提訴を待つより、居住者が原告となって公団家賃の値上げの不当性を追及する裁判の提訴を新たによびかけた。各団地自治会、地方自治協は精力的に検討し新提案を確認、原告を選出し、原告以外の居住者は「改定家賃の暫定支払い通告」を公団におこなった。
 1979年5月18日、全国124団地から259人の原告団が編成され、安達十郎弁護士を団長に60人の弁護団を擁して、東京、千葉、浦和、横浜、名古屋、大阪、奈良神戸の8地方裁判所に「家賃債務不存在確認請求」の訴えを起こし、家賃裁判運動がスタートした。東京地裁では、東京23区、多摩を中心に北海道、宮城、北九州等の各自治協、42団地自治会から86人(最終的に90人)の原告団が結成された。

『検証 公団居住60年』 東信堂

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