私の中の一期一会 №169 [雑木林の四季]
サッカーW杯ロシア大会、西野ジャパンは2大会振りに決勝トーナメントへ
~セネガルと勝ち点、得失点差で並び、フェアプレーポイント2枚の差で2位通過~
~セネガルと勝ち点、得失点差で並び、フェアプレーポイント2枚の差で2位通過~
アナウンサー&キャスター 藤田和弘
サッカーW杯ロシア大会の1次リーグ初戦、日本代表は大方の予想を覆して強豪コロンビアに2-1で勝利する大金星をあげたことから世界の称賛を浴びることになった。
大会2か月前の4月にハリルホッジ監督に代わって急遽就任した西野朗新監督は、親善試合で連敗するなどその“手腕”を疑問視する声さえ聞こえ、W杯での西野ジャパンはあまり期待されていなかった。
FIFAランキング16位のコロンビアを、61位とはるか格下の日本が破った“下剋上”は、次戦のセネガル戦にまでその勢いが続いて1次リーグ突破への期待が一気に膨らんだ。
日本のテレビは、ワイドショウまでが俄か応援団になってギャーギャーと囃し立てる始末だった。
スポーツの世界では、フィジカルの差が勝敗を分ける場合が多いというのはよく聞く話である。
日本人の“大きさ”は欧米やアフリカに比べると明らかに劣る。フィジカルの面では不利だが、敏捷性を含めた持久力などメンタル面では“欧米勢に引けを取らない”のではないか?
「忍耐力」つまり“我慢すること”はむしろ日本の得意芸かも知れない。
コロンビア戦は、前半6分に香川のPKで先制したが、39分に相手のキンテロに同点シュートを決められ前半を1-1で終えた。前半の日本の善戦はコロンビアにとって予想外だったかも知れない。
後半に入って28分、本田圭佑のCKから大迫が頭で合わせて勝ち越し点を奪った。
格上の相手にも動揺することなく、落ち着いてチャンスが来るのを待った。
この落ち着きは、セネガル戦にも引き継がれ、相手に先制を許したが、慌てる様子を見せなかった。
これまでのW杯で先制を許した試合は1分け6敗で1度も勝っていない。今までなら怖がってミスしないプレーを選択していただろうに・・・
今回は勇敢に前へ出て、強豪に勝ちきったことに世界は驚いたようである。
左サイドは長友と乾、右サイドは酒井宏と原口だ。1体1では敵わなくても2人で挟み、互いにカバーし合う“グループ戦術”なら何とかなる。セットプレーからの失点さえ気をつければ・・というところだ。
ディフェンス面でも全員が共通意識を持ち、プレスを掛けたり、ボールを奪ったりした。不安視されたセカンドボールの攻防でも負けていなかった。
日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「こういう戦い方をすれば、日本人の体格でも世界と渡り合うことが出来る」と感慨深げに語ったとメディアが伝えている。
ハリルホッジ監督をコミュニケーション不足を理由に解任した田嶋会長は、西野朗新監督就任の際、「日本らしいサッカーを目指したい」と語っていた。
そして「後半、日本らしいサッカーをセネガル相手にやってくれた。一発、一発の強さはセネガルが上だった。でも日本は全く怯むことなく追いついた。勝利を狙いにいっているのが分かった」と喜んだのだ。
“個々の身体能力の凄さ”は、アフリカ勢特有のものだが、日本はグループで連携する“和の力”で対峙して強豪に勝った。
思い出すのは、ラグビーのW杯で優勝候補の南アフリカを破ったエディ・ジョーンズコーチの「ジャパンウエイ」である。
巨体同士の肉弾戦が常識のラグビーで、体格で劣る日本人でも「世界で成功できる」というジョーンズコーチの一言から「ジャパンウエイ」は始まったと言っていい。意識改革を目指したのである。
世界で成功するというビジョンに向けて組織は団結した。選手に自信を植え付けることは容易ではなかったが、世界一の練習量で目的を達成することが出来た。
パスの回数を増やしてボールをキープし続ける。タックルで潰されても、潰されてもすぐ起き上がって、パスでボールをキープしていけば世界一タフなチームになれると教え込んだのだ。
ラグビーとサッカーの違いは無視できないが、欧米やアフリカにない“ジャパンウエイがあり得ること”をロシア大会は教えてくれたのではないか、私はそんな気がするのである。
「チームはまだ完成していないが、次が楽しみだ。ポーランド戦でも最後の1分まで自分たちはポーランドに勝つという気持ちで臨んだほうがいい」と田嶋会長は期待を語っていた。
ポーランド戦に勝つか引き分けで1次リーグを突破できるが、敗れた場合は少々面倒なことになる。
日本はポーランド戦に勝つか引き分けで2位以内が確定するが、もし敗れるとセネガルの結果次第で敗退の可能性が出てくるのだ。セネガルも負けると勝ち点、得失点差、直接対戦も引き分けで全く同じになる。あとはフェアプレーポイントの差で上回るしかない。
注目のポーランド戦は28日にボルゴグラードで行われたが、別会場のサマラでセネガル・コロンビア戦が同時刻にキックオフしていた。この両会場が同時進行だったことが日本の指揮官西野朗を悩ますことになるのであった。
日本は後半14分に失点して0-1とポーランドを追う展開になった。この時、コロンビアとセネガルはまだ0-0であった。
ポーランド先制の時点で見ると、セネガルが首位、コロンビアが2位、日本は3位転落になっている。
それから約15分後、事態はさらに動く。コロンビアがセネガルから1点を奪ったからである。
今度はコロンビアが首位、日本は僅差の2位に浮上・・セネガルがコロンビアに追いつくかどうかが大きな焦点になった。
この頃、出場に備えてアップしていた長谷部が長友佑都に近づき「コロンビアがセネガルをリードしている。失点するな。イエローカードに気をつけろ!」と耳打ちしたと朝日新聞デジタルが書いている。
指揮官西野は、セネガルが追いつくリスクがある中で“攻撃しない”日本の戦い方を決断したのである。
こうして他力本願の時間稼ぎは始まった。
負けているのに、自陣でボールを回してせめていかない日本・・ポーランドも全敗よりは1勝を望むだろうから、無理にボールを奪いに来ない。
ピッチ上の異変に気付いたスタンドの観衆からは、大ブーイングが沸き起こっていた。海外メディアからは批判の声もたくさんあった。
結局セネガルが追いつくことなく、コロンビアは勝ち勝ち点6をあげグループ首位での通過となった。
日本は2大会ぶり、3度目の決勝トーナメント進出というミッションを成し遂げることが出来たのである。
試合後西野監督は「非常に難しい選択だった。他会場に「万が一」がある中で“そのままの状態”をキープすることを選択した。負けている状況をキープするチームに納得がいかない選手たちが大ブーイングにも負けずに私のメッセージを忠実に実行してくれた。あの状況を作ったのは選手たちではない。ベンチワークです」と語った。
取材記者たちの目には、“笑顔はなく憔悴したように見える西野監督”が映っていたという。
最も重要なことは決勝トーナメントに進む確率を上げることだったのだ。
MFの柴崎選手は「何が大切かを考え割り切ってやった。そのために必要なプレーだった」と言っている。
ピッチ上で選手が恐れたのは1点を返そうと躍起になってポーランドの逆襲を浴びることだったという。
日本が2失点したら、セネガルが0-1で敗れても、得失点差で日本を上回ってしまう。
ボールのキープ、意図的なプレー遅延行為,時間稼ぎなどはルールで禁じられていない。
世界の舞台で勝っていくためには、いい意味での“ずる賢さ”も時には必要なのである(朝日新聞デジタル)。
西野監督は「チームとすれば本位ではないが、勝ち上がる中での策だ。こういう形も成長していく中での一つの戦略だと思う」とも口にした。
日本は悪質な反則をしたわけではない。相手への敬意を欠いたわけでもない。冷静に着実に目的を達成しただけである。
決勝トーナメントで日本は、7月2日G組1位のベルギーと対戦する。ベルギーはランク3位の強敵だが、臆することはない。勝ちにいって欲しい。
大会2か月前の4月にハリルホッジ監督に代わって急遽就任した西野朗新監督は、親善試合で連敗するなどその“手腕”を疑問視する声さえ聞こえ、W杯での西野ジャパンはあまり期待されていなかった。
FIFAランキング16位のコロンビアを、61位とはるか格下の日本が破った“下剋上”は、次戦のセネガル戦にまでその勢いが続いて1次リーグ突破への期待が一気に膨らんだ。
日本のテレビは、ワイドショウまでが俄か応援団になってギャーギャーと囃し立てる始末だった。
スポーツの世界では、フィジカルの差が勝敗を分ける場合が多いというのはよく聞く話である。
日本人の“大きさ”は欧米やアフリカに比べると明らかに劣る。フィジカルの面では不利だが、敏捷性を含めた持久力などメンタル面では“欧米勢に引けを取らない”のではないか?
「忍耐力」つまり“我慢すること”はむしろ日本の得意芸かも知れない。
コロンビア戦は、前半6分に香川のPKで先制したが、39分に相手のキンテロに同点シュートを決められ前半を1-1で終えた。前半の日本の善戦はコロンビアにとって予想外だったかも知れない。
後半に入って28分、本田圭佑のCKから大迫が頭で合わせて勝ち越し点を奪った。
格上の相手にも動揺することなく、落ち着いてチャンスが来るのを待った。
この落ち着きは、セネガル戦にも引き継がれ、相手に先制を許したが、慌てる様子を見せなかった。
これまでのW杯で先制を許した試合は1分け6敗で1度も勝っていない。今までなら怖がってミスしないプレーを選択していただろうに・・・
今回は勇敢に前へ出て、強豪に勝ちきったことに世界は驚いたようである。
左サイドは長友と乾、右サイドは酒井宏と原口だ。1体1では敵わなくても2人で挟み、互いにカバーし合う“グループ戦術”なら何とかなる。セットプレーからの失点さえ気をつければ・・というところだ。
ディフェンス面でも全員が共通意識を持ち、プレスを掛けたり、ボールを奪ったりした。不安視されたセカンドボールの攻防でも負けていなかった。
日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「こういう戦い方をすれば、日本人の体格でも世界と渡り合うことが出来る」と感慨深げに語ったとメディアが伝えている。
ハリルホッジ監督をコミュニケーション不足を理由に解任した田嶋会長は、西野朗新監督就任の際、「日本らしいサッカーを目指したい」と語っていた。
そして「後半、日本らしいサッカーをセネガル相手にやってくれた。一発、一発の強さはセネガルが上だった。でも日本は全く怯むことなく追いついた。勝利を狙いにいっているのが分かった」と喜んだのだ。
“個々の身体能力の凄さ”は、アフリカ勢特有のものだが、日本はグループで連携する“和の力”で対峙して強豪に勝った。
思い出すのは、ラグビーのW杯で優勝候補の南アフリカを破ったエディ・ジョーンズコーチの「ジャパンウエイ」である。
巨体同士の肉弾戦が常識のラグビーで、体格で劣る日本人でも「世界で成功できる」というジョーンズコーチの一言から「ジャパンウエイ」は始まったと言っていい。意識改革を目指したのである。
世界で成功するというビジョンに向けて組織は団結した。選手に自信を植え付けることは容易ではなかったが、世界一の練習量で目的を達成することが出来た。
パスの回数を増やしてボールをキープし続ける。タックルで潰されても、潰されてもすぐ起き上がって、パスでボールをキープしていけば世界一タフなチームになれると教え込んだのだ。
ラグビーとサッカーの違いは無視できないが、欧米やアフリカにない“ジャパンウエイがあり得ること”をロシア大会は教えてくれたのではないか、私はそんな気がするのである。
「チームはまだ完成していないが、次が楽しみだ。ポーランド戦でも最後の1分まで自分たちはポーランドに勝つという気持ちで臨んだほうがいい」と田嶋会長は期待を語っていた。
ポーランド戦に勝つか引き分けで1次リーグを突破できるが、敗れた場合は少々面倒なことになる。
日本はポーランド戦に勝つか引き分けで2位以内が確定するが、もし敗れるとセネガルの結果次第で敗退の可能性が出てくるのだ。セネガルも負けると勝ち点、得失点差、直接対戦も引き分けで全く同じになる。あとはフェアプレーポイントの差で上回るしかない。
注目のポーランド戦は28日にボルゴグラードで行われたが、別会場のサマラでセネガル・コロンビア戦が同時刻にキックオフしていた。この両会場が同時進行だったことが日本の指揮官西野朗を悩ますことになるのであった。
日本は後半14分に失点して0-1とポーランドを追う展開になった。この時、コロンビアとセネガルはまだ0-0であった。
ポーランド先制の時点で見ると、セネガルが首位、コロンビアが2位、日本は3位転落になっている。
それから約15分後、事態はさらに動く。コロンビアがセネガルから1点を奪ったからである。
今度はコロンビアが首位、日本は僅差の2位に浮上・・セネガルがコロンビアに追いつくかどうかが大きな焦点になった。
この頃、出場に備えてアップしていた長谷部が長友佑都に近づき「コロンビアがセネガルをリードしている。失点するな。イエローカードに気をつけろ!」と耳打ちしたと朝日新聞デジタルが書いている。
指揮官西野は、セネガルが追いつくリスクがある中で“攻撃しない”日本の戦い方を決断したのである。
こうして他力本願の時間稼ぎは始まった。
負けているのに、自陣でボールを回してせめていかない日本・・ポーランドも全敗よりは1勝を望むだろうから、無理にボールを奪いに来ない。
ピッチ上の異変に気付いたスタンドの観衆からは、大ブーイングが沸き起こっていた。海外メディアからは批判の声もたくさんあった。
結局セネガルが追いつくことなく、コロンビアは勝ち勝ち点6をあげグループ首位での通過となった。
日本は2大会ぶり、3度目の決勝トーナメント進出というミッションを成し遂げることが出来たのである。
試合後西野監督は「非常に難しい選択だった。他会場に「万が一」がある中で“そのままの状態”をキープすることを選択した。負けている状況をキープするチームに納得がいかない選手たちが大ブーイングにも負けずに私のメッセージを忠実に実行してくれた。あの状況を作ったのは選手たちではない。ベンチワークです」と語った。
取材記者たちの目には、“笑顔はなく憔悴したように見える西野監督”が映っていたという。
最も重要なことは決勝トーナメントに進む確率を上げることだったのだ。
MFの柴崎選手は「何が大切かを考え割り切ってやった。そのために必要なプレーだった」と言っている。
ピッチ上で選手が恐れたのは1点を返そうと躍起になってポーランドの逆襲を浴びることだったという。
日本が2失点したら、セネガルが0-1で敗れても、得失点差で日本を上回ってしまう。
ボールのキープ、意図的なプレー遅延行為,時間稼ぎなどはルールで禁じられていない。
世界の舞台で勝っていくためには、いい意味での“ずる賢さ”も時には必要なのである(朝日新聞デジタル)。
西野監督は「チームとすれば本位ではないが、勝ち上がる中での策だ。こういう形も成長していく中での一つの戦略だと思う」とも口にした。
日本は悪質な反則をしたわけではない。相手への敬意を欠いたわけでもない。冷静に着実に目的を達成しただけである。
決勝トーナメントで日本は、7月2日G組1位のベルギーと対戦する。ベルギーはランク3位の強敵だが、臆することはない。勝ちにいって欲しい。
2018-06-26 21:29
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コメント(1)
藤田さん、おはようございます。暑中お見舞い申し上げます。番狂わせが続きますが、日本のレベルは確実に上がっています。このまま勝ち続けて欲しいと思います。西野監督はベストな決断をしたと思います。暑いのでお身体に気を付けてください。
by 笠井康宏 (2018-07-02 08:08)