SSブログ

2017オスロ訪問記 №3 [核無き世界をめざして]

オスロで感じた核なき世界への熱い思い
    2017・12・5~15 オスロ訪問記 3

          丸木美術館理事長  小寺隆幸・美和

12月11日夜 Nobel Peace Prize Concert  核廃絶のメッセージが若者達に
           
オスロ2-1.jpg 翌日、オスロ郊外のテレノアアリーナで恒例の平和賞コンサートが開催されました。私達は若いSさん夫婦と一緒に参加しました。彼女が中学生の時に隆幸が東京で教えたのですが、その後オスロ大学大学院で学び、ノルウェーの方と結婚し、オスロの博物館で働いています。
 このコンサートはノーベル平和賞委員会主催。平和のメッセージを広める目的で1994年から毎年行われています。2年前から会場をこのノルウェー最大の屋内アリーナに移し、若者たちに平和賞のメッセージを伝えるため若いタレントを毎年招いています。今年は6歳から15歳の子どもたちのサーカスLe Petit Cirqueをカリフォルニアから招きました。またノルウェーやスウェーデンの若い人気歌手も出演していました。
 司会はナイジェリア出身のイギリス人俳優Oyelowoさん。彼はマーチン・ルーサー・キング牧師を演じてゴールデン・グローブ賞にノミネートされた俳優です。またナイジェリアでテロリズムの影響下にあった少女たちの教育とリハビリのために基金を創設して活動する人権運動家でもあります。だからこそ司会として彼が語った言葉の端はしに、核のない平和を希求する思いが込められていました。
 開幕前にスクリーンに映し出されたのはサーローさんの国連でのスピーチをアニメーションで表現した映像でした。これはキャサリンやロバートらが製作した“If You Love This Planet”で、サーローさんのメッセージを世界中の人々に届ける素晴らしい映像です。下記でご覧いただけます。 
オスロ2-2.jpg 熱気あふれるステージが始まりました。それと共に、核の問題を考える様々なメッセージが何度も挿入され、また司会者や歌手たちも自分の言葉で平和への願いを語っていました。歌の合間に前日の授賞式やトーチパレードの映像、核に言及した過去の平和賞受賞者、ノエルベーカー、キング牧師、エルバラダィ、佐藤栄作、IPPNW、バグオッシュ会議、ダライラマ、オハマ大統領などのスピーチの抜粋が挿入されました。また世界各地の市民や子どもたちの呼びかけが映し出されました。その中に知人でメキシコ在住の被爆者山下さんもいました。その映像が歌と調和し参加者の思いが高まる中でLe Petit Cirqueの子ども達が人と人とが支えあう平和な世界を表現したのです。
オスロ2-3.jpg 続いてサーローさんの国連演説の映像が映され、世界各国駆け付けたICANのメンバーがステージに上がりました。中央に被団協の田中さんや藤森さん、横オスロ2-4.jpgに川崎さんやキヤサリンもいました。
 さらに核実験のフイルムを逆回しにした映像も流れました。きのこ雲が収束し消えていく様子は核のなくなる世界を暗示しています。そしてメインの被爆ピアノの演奏です。レジェンさんが弾き、スウェーデンの19歳のザラ・ラルソンさんと共に“God Only Knows ”を歌いました。「きみがいない、そんな世界は意味がない」と歌い終わると大きなLOVEが浮き上がりました。
オスロ2-5.jpg オスロ2-6.jpg再び平和賞受賞者のマララ、マンデラ、ゴア、マータイさんのメッセージ。最後はレジェンドさんの熱唱。歌い総立ちの拍手がなりやみませんでした。会場を埋め尽くした1万の若者たちや市民が芸術を通して核のない世界への思いを共有した瞬間でした。

12月12日 Ban the Bomb 展開幕
オスロ2-7.jpg
 翌日正午からノーベル平和センターで「核兵器を禁止せよ」と題する展覧会が開幕。来年11月まで1年間展示されます。そこで私達は副館長のLiv Astrid Sverdrupにお会いす
ることができました。実は10月6日にノーベル平和賞がICANに決まった翌日、Livさんから旧知の山根さん(立命館大学国際平和ミュージアム・前副館長)にICAN受賞に関連した1年間の長期展示への協力要請があり、山根さんは「原爆の図」の展示もLivさんに薦めてくださったのです。そのことをお聞きし、来日するLivさんを成田でお迎えする予定でしたが、関空着に変更となり、広島・京都のみを訪問し帰国するというタイトな日程ですので結局お会いできませんでした。そこでオスロでオスロ2-8.jpgお会いし「原爆の図」について知っていただくことも今回の訪問の目的でした。Livさんはスペースの関係で「原爆の図」が展示できないことを残念に思うとおっしゃり、わざわざ私達を案内し説明して下さいました。
 この展示の中心は写真家SimChiYinが撮った“Fallout”と題された5セットの2枚組写真です。すべて米国と北朝鮮の核施設の写真をセットにしたものです。写真左はアリゾナの大陸間弾道ミサイル基地のタイタンⅡミサイル、右は北朝鮮のミサイル基地がある地域の写真で、中国国境から撮ったものです。ほかにも北朝鮮の核施設の煙突とアメリカバンフォードに1944年に作られたプルトニウム炉の煙突の対比など考えさせられるものばかりでした。Simさんは、「21世紀に核実験を行っている唯一の国と、最初に核実験をして使った国。両国は核の方程式の両端にあるが、脅威とそれに対抗する脅威の危険なサイクルの中に“今日”は閉じ込められている」と書いています。日本では北朝鮮の悪だけが語られますが、今も世界を何回も破滅させる核兵器を実戦配備している巨悪は語られません。この展示は現実を冷静に本質的に見る重要性を提起しています。
 ここでは平和賞にちなむ展示を毎年行っていますが、誰が受賞するかわからない8月時点で優れた写真家を選び、受賞が決まり次第2か月で関連展示を創るという契約をするそうです。Simさんも10月6日に初めて核兵器禁止をテーマとすることを知ったのです。それから短期間で構想を決め、北朝鮮の国境に近い中国の村やアメリカの6つの州を駆け回ってこれらの写真を撮ったそうです。
オスロ2-9.jpg 別の部屋にLivさんが日本から運んだ遺品5点が展示されていました。広島平和資料館の防空頭巾とかばん、長崎原爆資料館のロザリオと腕時計、立命館国際平和ミュージアム所蔵の弁当箱です。広島・長崎の写真の前でスタッフの方が参観者や授業として来た高校生に説明していました。オダネルが撮った「焼き場の少年」は何を物語っているかと問いかけていることに共感しました。
 オスロ2-10.jpgほかにも原爆ドームの中をヴァーチャルリアリティで体験するコーナーなどもありました。これから1年、オスロを訪ねる世界の多くの人々がこの展示から核を考え始めることでしょう。
 核問題ではありませんが、1階の〝Shifting Boundaries”、屋外の“Wall on Wall”という写真展も印象深いものでした。また午前中に訪ねたオスロのホロコースト博物館でもいろいろ考えさせられたのですが割愛します。
 国内世論調査では核禁止条約に日本も加わることに賛成が57%。秋田や岩手などでは7割の自治体で条約参加決議が挙がっています。被爆者国際署名も広がっています。来年はその声をさらに広げ、日本政府に翻意を迫るよう取り組むことが国際社会に対する被爆国の市民としての責務だと思いました。米国がいっ北への軍事行動に踏み切るかもしれない今日、戦争になれば真っ先に犠牲になるのは何十万もの北朝鮮、韓国、そして沖縄の民衆です。だからこそ核禁止は私達の切迫した課題です。Livさんは「廃絶は可能である。夢を現実にすることができる」と書いています。あきらめず光を目指して這ってでも行く、その思いを持ち続けようと思います。


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。