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続・対話随想 №33 [核無き世界をめざして]

 関千枝子から中山士朗さま

              エッセイスト  関 千枝子

 昨日(二〇一八年一月二二日) 国会が開かれ、総理の施政方針演説が行われました。トランプのアメリカについてゆく、憲法は大いに論議してほしいと、年頭の記者会見より“控えめ”ですが、改憲への熱意ありありです。心配一杯の年明け。憲法改悪も、今年が山でないかと思っております。
 安倍総理の施政方針で“もちろんのこと“でしょうが、核兵器禁止条約のこと一言も触れていません。先日、ICANのフィン事務局長が来られた時も、忙しいとか日程が合わないとかで会いもせず、フィンさんと国会議員の対話の会でも、外相に代わって(外国訪問中)の外務副大臣は、フィンさんと目を合わそうともせず、ひたすらペーパーを読み上げるだけ。結局核の傘に守られている日本は立場が違うと言うのですが、誠にみっともない、「唯一の被爆国」と言っているにに、何をしているとわめきたい気分でした。
 フィンさんは、NHKテレビの九時のニュースでインタビューに答え、「いろいろの考えがあるのは、十分承知している。問題は。それで終わらせないで、議論してほしい、本当に核の壁が役に立つものか、議論を盛り上げてほしい」と言っておられました。その通りだと思うのですが、政府に合わせて、というわけではないでしょうが、核兵器禁止条約のことは、これで終わり、現実は難しいよ、と言った考えが世間に横行していて、条約のことはこれで終わり、被爆者の証言だけは好きなだけやりなさい、と言った空気になっているのではないかと、心配です。
 安倍首相の施政方針について各党の質問が行われていますが、日本共産党の志位さんの質問にも核兵器禁止条約とそれに署名もしない(もちろん批准しない)政府の態度についての質問はありませんでした。もちろんほかの党も。条約のことはもう“すんだこと”みたいです。志位さんの質問で、沖縄の米軍機の事故が相次いでいることを言ったのですが、それについて内閣府の松本文明副大臣が、「それで何人死んだんだ」とヤジを飛ばし、問題になり、結局辞任しました。国会が始まって早々の暴言とお決まりの辞任騒ぎですが、あまりの発言にあきれ果てます。これで安倍人気は相変わらず高いというのですが、本当に、この国どうなっているんだ、と言いたい。
 とにかく、核兵器禁止条約の問題このままうやむやになっては困ると私イライラしています。先日、「なぜ、ヒバクシャを語り継ぐのか」という集会があり、国連軍縮コーディネーターであり平和活動家であるキャサリン・サリバンさん、川崎哲さん(ピースボート共同代表、ICAN国際運営委委員)、山田玲子さん(東京都の被爆者組織・東友会の副会長)が語るというので行ってきました。皆さんとてもいいことを言われ、共感できるのですが、どうして日本政府を動かせるかというと、川崎さんにしても、私たちの意見を広げていく(この会での話を一人でも多くの人に伝える)、地方議会にはたらきかける(議会の意見を国にあげる)日本の自治体の9割は平和市長会議に入っているのでこれはかなり力になる、そして自分の選挙区の国会議員に働きかけるという風なことでしたが、何だか私、むしゃくしゃ腹が立ってきました。私たちも、今までいろいろの集会で、今日話したことを一人が一人に伝え、広げていこうと何度も話し合いました。でも…。本当に広がっていったのか、そんなことでは権力側の圧倒的な宣伝にかなわないのではないか。地方議会の決議にしても、「慰安婦問題」などでずいぶん努力しました。いい決議を出した議会もあります。だけど、それで問題が広まったか。地方議会のことはあまりメディアも書きませんし、一般の人には.広がらない。国会議員など今の国会のあり様を考えると、絶望的です。もっと国民の議論を盛り上げる効果的な方法はないのだろうか。考えてしまいます。この日の集会の主催団体は「被爆者証言の世界ネットワーク」という団体でこの証言集会に続けて、大学などでワークショップを開くらしいのですが、そんな試みもメディアは無視のようです。
 とにかく、かなり多くの人が「核抑止論」を信じていることは確かです。北朝鮮の脅威が言い立てられるとさらに不安は高まります。しかし核抑止論=核を持つ国を増やさないというやり方では結局核を持つ国を増やしてしまい、北朝鮮のような国が出てしまった。しかし、北朝鮮の核に大騒ぎをしている、そ.れなのに、七〇〇〇発以上も核兵器を持っているアメリカに何の恐れを持たないおかしさ。この間、なにかのミスで、ハワイで、ミサイル攻撃があると大騒ぎになったようですが。私はあの「間違い」を笑えません。核兵器の発射ボタンを間違って押す危険性だってあるわけです。私は、トランプさんが核ボタンを押してしまうのではないかと、その方が怖いです。
画期的な「核兵器禁止条約」、なんとか日本政府の考えを変えさせる方法はないものか、せめて世論を盛り上げることはできないものか、私は今かっかとしています。
 一月一九日には女性「9条の会」の学習会で山内敏弘先生(元一ツ橋大学教授)のお話を聞きました。はじめ希望者は二十数名で心配しましたが、最終的に四十人以上集まってホッとしたのですが、もしかしたら先生はもっと大きな集会を期待されていたのではないか、と思いました。昔、山内先生に来ていただいた時(一〇年くらい前かな)百人近い人が来たと思うので。でも、私たちの会も高齢化し、今、四十人参加者を集めるのはしんどいです。山内先生のお名前を知る人も減ってきた感じです。結局若い方で憲法に興味を持つ方が増えていないということでしょうか。でも、私は最終的に四十人集まったことに少し力が出、元気を出そうと思いました。山内先生の話もとても分かりやすくよかったです。
 安倍首相は、憲法9条はそのままにして3項を付け、自衛隊の存在を憲法に明記すると言っています。これだと「自衛隊の存在は国民のほとんどが認め、愛されているのだから…・ということで、そのくらいいいのではない?」と思う人もいそうですが、この3項追加は、とても恐ろしいことになる、と話されました。日本の社会全体が「軍事優先主義」に転換し、徴兵制や軍事的徴兵制が合憲化する、現在の自衛隊法では防衛出動時に土木建築や輸送を業とする者に業務従事命令を出すことができるが、罰則はないが。これらについて罰則が制定される恐れがある、自衛隊の基地建設のための強制的な土地収用も合憲となる、軍事機密が横行する、防衛費はますます増え、社会保障費が削減されるだろう。軍学共同で学問の自治、大学の自治も制限される、自衛官に対する軍事規律は強化され、敵前逃亡や抗命在が死刑になる可能性が高い、など、驚くような変化が起きることが話されました。怖い怖い。私は一九四六年、はじめて新しい憲法の案が示された時、「戦争放棄」の言葉に、原爆で全滅した友のことを思い、彼女らが生きていたら、と思いました。そして戦争なんかいらない、軍隊なんていらない、と思いました。
「戦争をする国」にどんどん近づいていきそうな今の様子ですが、とにかく戦前には戻らせないと、心から思います。
 この次の日、一月二〇日、例の竹内先生の会の主催で元京大の小出裕章先生のお話を聞く会がありました。この日は173人の会場が満員で参加を断わるありさまでした。しかし聞けば聞くほど放射能の怖さを思いました。人間は、地球上に普通では存在しないプルトニウムという恐ろしきものを作ってしまった。プルトニウムは核兵器を作るよりほかにどうしようもない代物。そのプルトニウムを作り出す原発をまだまだ使い続け、輸出までしたいこの国、本当に恐ろしいです。


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