森の妖精 №21 [文芸美術の森]
「角笛を吹く森の妖精」 2009年 檜
造形作家 吉川 潔
角笛の音色は森の木漏れ日を縫って優しく流れていきます。
やがて森の妖精たちは自分の楽器を持って集まってきます。
もうすぐ秋のコンサートの始まりです。
プラハ雑記 18 1974年
国境
日本人にとって実感しにくいものの一つが国境であろう。
四方を海という自然に囲まれた我々はヨーロッパのように地上に引かれた国境をなかなか想像出来ない。 今でこそ1989年のビロード革命以降チェコ以外の旧東欧諸国もEUに加盟し、ほとんど国境のコントロールはなく自由に各国と行き来ができるようになった。しかし私が留学していた当時(1970年代)の国境はじつに重々しく高い壁であった。
当時のチェコスロバキアは東西冷戦の真っただ中、東ドイツ、ポーランド、ソ連、ハンガリーの東側4か国とオーストリー、西ドイツの西側2か国の計6か国と国境を接していた。西ドイツおよびオーストリーとの国境のコントロールは厳重を極めた。1968年のワルシャワ条約機構軍のプラハ制圧以降亡命者は後を絶たず国境の警備はその度に厳しさを深めていった。チェコの庶民にとって西側への旅行や国境越えは至難の技であったようだ。私は日本のパスポートを持っているので短期の出入国の許可は比較的容易に出してもらえた。大学に何処どこの人形劇フェスティバルに参加するので・・などの書類を提出し正式な許可をもらった。一日をつぶす覚悟で警察に出向き申請をした。一番多く通過した国境はプラハから国道50号線(現在は高速道路5号線)で南南西方向に160kmほど走った処の小さな村ROZVADOVの先にあった。プラハから車で1時間半ほど行くとビールの町PLZEN(英語読みでピルゼン)がある。ビールの消費量世界一を誇るチェコの中でもその名を世界に轟かせるバドワイザー発祥の地である。そこから1時間ほど走ると国境は現れる。道路に国境まで何キロの看板が出てくると何も落ち度がなくてもやはり緊張感
が走る。やがて大きなゲート、遮断機が現れカービン銃を肩に掛けた無表情な国境警備兵が並んでいる。大型犬もにらんでいる。車から降ろされ出国審査の部屋へ向かう。税関検査、パスポートやビザなどの書類審査。所持金の申告、手荷物検査。どの係官も笑顔は全くない。胃が痛くなりそうな時間が経過する。その間数人の兵士によって車の中も外も徹底的に調べられる。乗用車ではありえないが大きな車だと車体の下に隠れて出国を試みる場合もあったとか。車体の下に差し入れて調べる鏡も並んでいた。たっぷり1時間ほどは覚悟しなければならなかった。解放されて西ドイツに入るとすぐにイミグレーション。こちらは「ようこそドイツへ」と笑顔で迎えてくれる。手続きは手際よく進み車は絶対的にチェコとは違う滑らかな舗装道路を一気に西側最初の大きな町WEIDENへと走らせた。
国境では色々なドラマや思い出がある。当時チェコではなかなかお目にかかれない派手な黄色とオレンジ色2台のBMWを連ね日本人留学生の若僧二人が西ドイツからチェコへと入国した時の話や、ある人形劇団のバスでポーランドから帰国する時私の所持金のドルのことで深夜2時間以上足止めを食わされたことなど今となっては懐かしく思い出される。
このことはまた続編を書こうと思う。 国境は撮影禁止が厳しく写真は残っていない。
アトリエ・パネンカ
カフェギャラリー「アトリエ・パネンカ」
8月は休館です。9月からは通常営業します。(基本的には毎週 水・木・金の営業です。)
ただし来館ご希望の方は連絡をください。日時が合えばお迎えします。
ギャラリーへの入場は無料です。
飲み物 コーヒ― ¥500 他
木彫教室9月15日(木)&29日(木)am10:00~12:30・
木彫マリオネット教室9月15日&29日(木)2:00~4:30
*見学は自由です。
ワークショップ等随時開催中。 お立ち寄りください。
問い合わせ、 TEL 042-580-2678
携帯 090-3500-8325
吉川 潔人形の世界 http://www.kiyoshi.sakura.ne.jp/
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