五輪書 №41 [心の小径]
場の次第ということ
元武蔵野女子大学学長 大河内昭爾
戦いの優位な場所の占め方が肝心である。まず、位置を占るのに太陽を背にするという原則がある。太陽をうしろにして構えるのである。もし、場所によって太陽を背にすることができないときには、右脇に太陽がくるようにすべきである。
座敷のなかでも、あかりをうしろに、または右脇にすることは、これと同様である。したがって、自分のうしろがつかえないように、左側を広くゆとりのあるようにし、右脇の場所をつめて構えたいものである。夜も敵が見えるところでは、火をうしろに背負い、あかりを右脇にすることは、前と同様に心得て構えるべきである。
「敵を見下す」といって、少しでも高いところに構えるように心得なければならない。座敷では上座を高いところと思えばよい。
さて、戦いとなり、敵を追いまわす場合は、自分の左のほうへ追いまわすつもりで、難所を敵のうしろにさせ、なんとしてでも、難所の方へと追いつめることが肝要である。難所では、「敵に場を見せず」といって、敵が周囲を見まわせないように油断なく迫っていくことである。座敷でも、敷居、鴨居、戸障子、縁など、また柱などの方へ追いつめるのに、敵に場の位置を見る余裕を与えないという点では同様である。
どのようなときでも、敵を追いかけるのに、足場の悪いところ、または、かたわらに障害物のあるところなど、いずれも、その場の有利さを生かして、優位に立つことが大切である。よくよく検討し鍛練すべきである。
『五輪書』教育社
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