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詞集たいまつ №85 [雑木林の四季]

かえる章

                                  ジャーナリスト  むのたけじ

(2019)世代間のバトン渡しに二つのルートがある。財産や技術などは、父母から子らへと渡される。世を生き抜く知恵の結晶は、祖父母から孫たちへ語り継がれる。生活の知恵の熟成には時間を要し、五〇年ないし六〇年の間隔での引き継ぎが最適であろう。ともあれ孫たちと祖父母たちとが太いパイプで結ばれている社会には希望がきらめいている。

(2020)よく考えたかったら、体をよく動かして頭の血のめぐりをよくすることだ。ロダン作『考える人』は改称すべきである、『へたな考え休むに似たり』と。あの像は思考なんかしていない。一服しているだけだ。

(2021)床屋へ行くのが面倒くさくてぼくが髪をのびるままにしたのは一九六〇年代なかばでしたが、当時は東京の電車に乗っていても、子どもが「おかあさん、この人おんな?」とたずねたりした。いま男の長髪はどこでも奇異ではない。この変化は知恵を一つ授けている。異端に対する疎外をなくすには、異端をどんどん増やして通常にしてしまえ。

(2022)「世のために尽くす」「社会に貢献する」と言うだけでは、行き先の欠けた鉄道切符だ。「私はこのような社会に生きたい、そのために働く」で一人前だ。靴のサイズに合わせて足にカンナをかける者はおるまい。

(2023)成功者に未来は乏しい。失敗者には未来だらけだ。但し失敗者自身が行く手に未来だらけを感じないなら、未来は現在を飛ばして過去になる。

『詞集たいまつⅣ』評論社


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