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浦安の風 №61 [雑木林の四季]

「主権回復の日」って何だ

                          ソーシャル・オブザーヴァー  横山貞利

 去る3月21日、政府は閣議で4月28日を「主権回復の日」として、政府主催の式典を開催することを決定した。4月28日は、1952年(昭和27)対日平和条約(所謂サンフランシスコ講和条約)が発効し、1945年(昭和20)8月15日にポツダム宣言を受諾して降伏して以来つづいていた米国など連合国による占領支配が終焉した日である。
 その4月28日を「主権回復の日」とするのは、やや牽強付会なのではないか。大多数の日本人にとっては、「主権」という言葉を見聞きしたのは、1946年(昭和21)11月3日に公布された「日本国憲法」の前文で「主権が国民に存する・・・“主権在民”」と明記されているのを読んで「主権」という言葉を知った筈である。
 しかし、「主権」という概念は難しい。高校時代に「主権」という本(多分、憲法学者・東大教授だった宮沢俊義の著作だったと思う)を読んでみたが、「主権」の概念を殆ど理解できなかったように記憶している。今でも充分に理解できていないだろ。
 ところで、「主権在民」というけれども、わたしたちが「主権」を行使するのは「選挙」だけと言ってもいいくらいである。1952年(昭和27)にGHQ(連合国最高司令部)による占領支配から解放される以前の1946年(昭和21)4月10日に実施された第22回衆議院議員選挙で、初めて女性の参政権が認められて女性議員が39人当選した(通常“婦人参政権”と言われている)。
その翌年の1947年(昭和22)4月には各種の選挙が目白押しだった。
 4月 5日 都道府県知事選挙・市町村長選挙
 4月10日 第1回参議院議員選挙
 4月25日 第23回衆議院議員選挙
 4月30日 都道府県議会議員選挙・市町村議会議員選挙
が実施され、主権者である国民(有権者)がこれらの選挙で「主権=選挙権」を行使した。
そして、5月3日「日本国憲法」が施行されたのである(前年11月3日公布)。

 このように、1952年(昭和27)4月28日の対日平和条約発効以前に、国民が「選挙」という形で「主権」を行使した実績があり、60年以上経って今更改めて「主権回復の日」として式典を催すというのは胡散臭さを覚える。現に「主権回復の日」を目指す人たちは、“憲法改正”を推進しようとする動きと連動しているようだ。
 安倍首相や石破幹事長らは、はっきりと“改憲”を口にしていることはご存じであろう。しかし、内閣総理大臣をはじめ閣僚は憲法を遵守しなければならない立場にあるのだから、「主権回復の日」を閣議決定した根底には隠された意図があるように思う。

 この国の政治体制は「代議制」であるから、国民が唯一「主権」を行使できるのは「選挙」である。ところが、現在の選挙制度では選挙区によって一票に格差があり、最高裁判所は、2009年の衆院選を「違憲状態」と判決した。それにも拘わらず、昨年12月16日の衆院選を実施した結果、3月6日の東京高裁を始めとして3月27日までに、全国各地16の高裁判決があり、14の高裁(高裁支部を含む)で「違憲」ど判断され、そのうち2つの高裁では「違憲・無効」の判決がなされた。「違憲状態」の判決は2高裁に過ぎない。

 主権者である有権者は、すべて一律に「一票は一票」でなければならないが、選挙区によって、最大2.43倍もの格差があるのだから「ある人は1票なのに別の人は0.41票の価値しかない」という不平等が許される筈がない。これは「一人別枠方式」という「小選挙区・比例代表制選挙法」にあっては格差を是正できないのではないか。

 3月28日「0増5減」による区割り改定案が首相に提出されたけれども、この案では42選挙区を見直し同一区市でありながら選挙区が異なるという無理な選挙区にしても、依然1.998倍の格差が残るということで、最大格差を何とか2倍未満にしたというだけに過ぎない。こうした弥縫策しかできないのでは「主権在民」の基本理念が生かされていない証である。
 私たちが国政を託している立法府の議員たちの怠慢、身勝手な保身のなせる業だ。

 現代社会は、多様な考え方・価値観をもつ人々によって成立しているのだから、いっそうのこと「中選挙区」に戻したらどうか。そして、政党交付金(所謂政党助成金)も止めることだ。

 「主権」ということについて考えてきたが、現在米軍基地の74%を依存している沖縄は、1972年まで米軍支配下にあった。未だに「沖縄処分」がつづいていることを忘れてはならない。

何が「主権回復の日」だ、と思う。


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