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浦安の風 №60 [雑木林の四季]

悔恨の日々を過ごしながら

                          ソーシャル・オブザーヴァー  横山貞利

 3月11日(月) 14時46分 、黙祷。

あの日から2年が経った。11日当日は、テレビ・新聞などマスメディアは大々的に特集を組んで、大震災・原発大事故がもたらした大被害の現状を取り上げていた。しかし、被害地の復興は遅々として進んでいない。

 死者    15,882人
 行方不明者  2,668人
   (11日現在  警察庁まとめ)
 避難者  315、196人
  ( 7日現在  復興庁まとめ)
 震災関連死  2、554人
   うち原発関連死 789人
     (東京新聞の推計)

これ程多くの人々が亡くなり、未だに父祖の地を離れて他郷にあって不自由な避難生活を強いられている。
わたしは、無力な自分に苛立ちながら“悔恨”の日々を過ごしている。

 1769年、ジェームズ・ワットが新方式の蒸気機関を開発し、産業革命をもたらした。以来、科学技術はあらゆる物質文明をもたらし、わたしたちは、その恩恵を享受してきた。そして、科学技術は20世紀に「核利用」という究極の兵器を造り出し、広島・長崎で人体実験を行った。更にビキニ環礁で「核融合化」実験に成功したというものの、ビキニの人々や第五福竜丸に乗り込んでいた人たちに“死の灰”の脅威と犠牲をもたらした。

 原子力資料情報室の故高木仁三郎(1938~2000)が「脱原発法」制定運動を呼びかけ続けた時、わたしはもっと真剣に耳を傾けるべきだった。チェリノブイリ原発大事故を知った時、「チェリノブイリ原発は、核技術が低いレベルでも稼働できる“黒鉛炉原発”だが、この国の原発は、核技術が遥かに高い“軽水炉原発”だから安全だ」という論調に疑問をもたずに何となく納得してしまっていた。
 作家の石牟礼道子さん(1927~)が「苦海浄土ーわが水俣病」を書いて、水俣病を告発しつづけているし、水俣病が「有機(メチル)水銀汚染」によって発病することを突き詰めた故原田正純(熊本大学医学部教授1934~2012)は、「研究者たちはわたしたちを乗り越えて新しい研究成果を出していくだろう」という意味のことを述べた時、その言葉の本当の意味を理解する能力・想像力を持ち合わせていなかった。「水俣病の原因は有機水銀である」と原田教授のグループが発表した時、中央の研究者たちが「地方大学の説など当てにならない」と御託を述べていたことを記憶している。
 また、技術評論家の故星野芳郎(1922~2007)は「東京湾の周辺にはいくつもの石油タンクがあるが、冬の北風の強い日に石油が漏れ出して火がついたら、東京湾は火の海になってしまう」と話したのを聞いたとき「そんなことがありうるのかしら・・」と半信半疑に思っていた。この話を聞いてから40年ほど経ったいま、首都直下型地震の可能性が高いと知らされて、星野先生の言葉が俄然真実味をおびてきた気がする。

 わたしたちは、科学技術の進歩によってもたらされた利便さを「当然のこと、当たり前のこと」として受け入れているけれども、福島第1原発の大事故を目の当たりにして、多くの研究者、科学者の示唆に富む言葉をもっと謙虚に受け入れ危機意識を共有しなければ、同じ轍を踏むことになるだろう。
 何故なら、在野にあって緻密なフィールド・ワークを行なって自らの責任において語りかけてくれているのであるから、その言葉をもっと真摯に受け止めて、“安全神話”を考え直して懐疑的に対応しなければならない。さもなくても政府は原発再稼働を画しているのだから。

 人間主義=ヒューマニズムに基づかない科学技術文明を本当に「進歩」と言えるのかどうかよく解らないけれど、少なくも「核技術」は、人間主義=ヒューマニズムの対極にある反人間主義=アンチ・ヒューマ二ズムではないだろか。


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