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浦安の風 №59 [雑木林の四季]

本当にデフレ脱却はできるのか
 

                                        ソーシャル・オブザーヴァー  横山貞利

 去る1月21日、オバマ大統領の二期目就任演説で最も注目される発言は「米国の成功は復興しつつある中間層によって支えられるべきだ」と訴えた点にあるように思う。確かに、中間層の育成は大統領二期目の現在も基本政策の根幹をなしている。こした国民の大多数を占める中間層の安定は単に米国だけではなくどこの国にとっても必須の条件である。

 さて、この国ではどうだろうか。安倍政権は、大胆な金融緩和とインフレ目標2%を掲げて、デフレ脱却を図ろうとしている。そのために企業の税負担を緩和して、その分を勤労者の賃金に反映させて内需を拡大させ、同時に大規模な金融緩和で潤沢な資金を市場に供給することで経済の活性化を期する政策を押し進めようとしているが、問題は資金が順調に回転して勤労者の賃金が上昇し購買意欲に結びついていくかどうか、その動向を注意深く見ていく必要がある。

 ところで、勤労者世帯の実収、可処分所得、非消費支出を時系列で調べてみると

        実収(円)     可処分所得(円)   非消費支出(円) 
2000年   509、000   429、000   80、000
2005年   473、000   400,000   74、000
2008年   487,000   403,000   84,000
2009年   465,000   384,000   81,000
(リーマン・ショックの年)
2011年   462、000   381,000   81,000
* 総務省・家計調査報告によるー平均年齢45.6歳(世帯人員2.79人)
*実収(毎月の賃金+ボーナス12等分)100円台で四捨五入した。
*非消費支出(税金+社会保険料など)

これを見ると2000年から2008年までに約20、000円減少し、2009年の
「リーマン・ショック」で更に約20、000円減少してデフレを一層促進し現在に至っていることが判る。

 しかし、経団連の「経営者労働政策委員会・春闘方針」によれば、勤労者の賃上げは難しいとし、定期昇給も延期するか凍結するということである。精々ボーナスが多少増加する程度になるかもしれないということのようだ。日銀の統計によれば大企業の内部留保は215兆円に達しており、また、海外の子会社からの受取配当などは年3兆円に達しているが、これらの資金がどのように有効利用されるのか、その実態は全く判らない。

  また、15歳から65歳の勤労年代にある人口は減少しているうえ、仮にこの世代にあっても正規雇用されている者は年々減少し、派遣・契約・パートなどの不正規雇用者化が進んでいる。こした雇用の不確実性が、勤労者世帯の実収入・可処分所得に影響を与えており、更に消費税率の引き上げが待ち受けているのである。
  因みに、現在の雇用形態を見てみると、雇用職員(役員を除く)は5173万人で、その内訳は正規職員は3330万人(64.4%)、非正規職員は1843万人(35.6%)である。また、賃金は、非正規職員のうち派遣・契約職員の場合は正規職員の約半分、パートの場合は正規の22.3%、派遣・契約の44.5%であるということだ。
  こした雇用形態や賃金形態の格差をそのままにして、健全な中間層を創り出して安定した購買力を維持できるようになるか甚だ疑問である。それにしても、この国を支えている勤労者に対する国や企業の施策は今後どうなっていくのだろうか。
  確かに、輸出に頼らざるを得ないこの国の産業にとって「円安」は有難いけれども、石油をはじめ輸入に頼らざるをえない物資は値上がりし始めている。政府が輸入した小麦の卸価格は4月から9.7%の値上がりが決まったし、大豆や家畜の飼料など日常欠かせない物資の値上がりは避けられない。また、電気やガスなどの公共料金も値上がりになる。そこで、「円安」のメリットとデメリットを比較してメリットが大きくなるような経済運営を図り、同時にできるだけ早く賃金に反映させながら雇用と賃金を改善していかねばならない。
  しかし、去る2月25日のイタリアの総選挙の結果が今後どうなっていくのか解らない状況下では「円安」がこのままつづくかどうか見通しがたたない。そうした複雑な要因が絡み合っている現状でデフレからの脱出するのは非常に困難な隘路である。「円安・株高」と喜んでいる場合ではない。
  すべては、政治・経済界の責任に係っている、と思う。


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