四季つれづれ №25 [ことだま五七五]
陶枕
俳人・「古志」同人 松本 梓
山の寺風がばらまき落し文
近づけば蜩の声遠ざかる
忽然と燕去りけり朝の空
新涼のはじめ鱸のあらひかな 鱸・・・すずき
学校のプール干されて桐一葉
はばからず出来る昼寝の淋しけれ
陶枕の唐子の声か昼寝覚
広州の南越王墓博物館で古墳から出土した数々を見たあと、別室に陶磁枕が展示されていて足をとめた。香港の知名文物鑑蔵家の楊氏の寄付による200点余りの品品である。時代も唐から元にわたり、唐三彩、青釉、緑釉、黒釉など釉の極上品、それに模様や絵柄のすぐれている白地黒花枕、白磁花枕、黄褐釉貼花枕、釉下彩枕、詩文枕などなど。特に北宋時代の汝官窯から出た天青釉如意形枕はもっとも極上の珍品という。形もさまざまで変わったものでは虎形枕。臥した虎の背に頭をのせるもので虎の顔には眼が光っていた。又臥婦形枕は臥婦の背に頭をのせると美女の顔と並ぶ。いかにも中国らしい趣向だが、実際には気が散ってゆっくり眠られないのではと思ってしまう。260字の詩文がびっしり書いてある枕は乗せただけで頭が痛くなりそうだ。
蓮の花を持つ童子の絵柄はどれもあどけなく可愛らしい。
それにしても17㎝もある高枕ではひんやりとした感覚を味わう前に肩が凝らないかと気になった。ふだん柔らかい枕に馴れている我々には日本の籐や籠枕の方がやさしくて安眠できそうである。むしろ深みのある釉の色や洗練された絵柄を楽しんで飾り箱として眺めたらと思ったことである。蓋が開かないけれども。
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