上農は草を見ずして草を取る~農に見る人生の極意 №2 [ふるさと立川・多摩・武蔵]
農に学ぶ
語り 立川市民俗の会会員 豊泉喜一 聞き取り 日本聞き書きボランティア協議会・多摩 大屋美良
家畜のオスはみじめだね
砂川も家畜はいっときでしたが豚や牛の飼育が結構あったと思います。豚屋さんが不思議と五番の地域に集中していたんです。豚屋は農家で飼育した豚を買って屠殺場へもっていくのが仕事なんです。それと必ず豚屋には種オスがいたんです。オスは子を産まないし、売り物にならないから農家ではどこも飼わなかったから。
子豚が産まれるとオスはすぐ去勢しちゃうんです。昔はこの去勢でとった睾丸を焼いて粉にしたものを、寝小便の薬だといって子どもに飲ませたものですよ。効目はともかくおまじないだね。
子豚の去勢は自分の家でやったもんですよ。安全カミソリの刃でさっと切り取り、消毒に赤チンをつけて縫い針で縫っておくんですよ。
鶏のオスもみじめでしたね。孵化するとすぐオスとメスに仕分けして、オスは大きな鍋で煮られて豚の餌にされたんですよ、卵を産まないから飼っていてもしようがないというわけで。
家は乳牛も飼っていたんです。牛もいまは去勢するからいいけど、かつてはお産するでしょ。これもオス、メスを見分けて、メスは育てて搾乳も、子牛を産ませることができるが、オスは飼っていても何の役もしないから一週間でつぶしたんですよ。
牛はお産すると一週間はドロドロの乳なんで牛乳として出荷できないんです。それを子牛に飲ませて一週間たって普通の牛乳になるころ子牛は豚屋に渡され屠殺場に持っていかれるんです。
木 ぼ け
「木ぼけ」というんですが、木がぼけちゃう、図体ばかりでかくてろくな実がならないことをいうんですが過保護なんです。肥料分がちょっと足らないような作り方をすると、子孫を残そうとするのか必死に実をつけようとするんですがね。この辺のことは理屈にかなっていると私は思います。
これは作物でも家畜でも私両方見ていてすごいおもしろいことだと思います。
私は思うんですよ。いま日本人は肥満でね、結婚なんかしなくたって暮らしていける、子どもなんか産まなくたっていい、あくせくすることないやという状態、畑でいえば過剰な肥料の土壌で過保護な環境に育った作物のようで葉っぱばかり繁り、ひょろひょろ背丈は伸びるがろくな実をつけないのにどこか似ているんじゃないかと…。
いま日本は少子化で子どもが産まれなくなったと取り沙汰されてますが、
「木ぼけ」 でないといいのですが…
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