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ニッポン蕎麦紀行№15 [雑木林の四季]

  ニッポン蕎麦紀行 第15話 家訓・蕎麦製粉を専業にせよ ~埼玉県鴻巣~

                                     映像作家  石神 淳
       
   取材で蕎麦行脚をかさね歩くうち、蕎麦粉製粉の知識をもっと知りたくなった。蕎麦粉の特性を科学的に勉強しなければ、旨い蕎麦が打てないと開眼した。今回は、僣越で恐縮ながら、蘊蓄のお裾分けを少々させていただくことにした。
    「ニッポン蕎麦紀行」取材の折り、近くに住んでいた友人の紹介で知己を得た、五代目・長島新一氏が代表をつとめる製粉工場は、明治3年の創業から、「蕎麦製粉を専業にせよ」 との家訓を代々守り続けている。 
hp石臼.jpg   訪ねてみると、工場の裏手には、人力ではとても稼働できそうにない、年代不明の大きな石臼が苔に包まれていた。四代目・長島一也氏の話によると、昭和20年代までは、東北や北海道から玄蕎麦を満載した貨車が鴻巣駅に到着すると、荷馬車の行列が延々と店まで続いたそうだ。
   現在、五代目・長島氏は、コンピュータ制御の石臼を稼働し、(なみ粉)・(挽きぐるみ粉)・(荒挽き粉)を製粉している。石臼の設計と目立てから保守全般を自分が行い、4レーン36の石臼を稼働させているが、最新型のロール製粉機の10分の一の効率にもみたないそうだ。どうして、そこまでして石臼製粉に拘るのか。その理由を訊ねると、粉の水分の含有比率(14~15%が理想)の保持と、石臼製粉特有の不均一な粒度成分にあるという。試しに、粉を強く握ると、ギュッと固まってしっとり感があるのが石臼粉で、サラリとバラけるのがロール製粉の粉だった。味覚的には、石臼製粉で打った蕎麦は、 喉越しに味覚の奥行きを感じる一方、ロール製粉で打った蕎麦は、歯切れのよいシャッキリ感があり、何となくあっさりした感じだ。といっても、評価は微妙で、そこが蕎麦の奥ゆかしいところだ。旨い蕎麦とは、玄蕎麦の収穫タイミングから、乾燥・保存・製粉・加工と、コストの割に手の掛かる農産物だ。石臼製粉による蕎麦粉は、蕎麦を探求するうえでの究極的な存在だ。小生の持論であるが、蕎麦打ち職人と客の両方に哲学的な思考を感じる。立ち食い蕎麦が成り立つのも、単に安さだけでは無く、日本人の遺伝子にかかわる「食の因縁」ではなかろうか。俗に言う「田舎蕎麦」は、蕎麦特有の雜味と郷愁が脳裏で入り混じったもので、純然たる蕎麦の評価とは、少しばかり異なるものだと思う。石臼製粉3.jpg

  実践的に話しを戻し、石臼製粉の蕎麦粉とロール粉の蕎麦粉を、手打ちで比較すると、蕎麦粉百%の十割蕎麦も、ロール製粉の方が打ちやすく感じる。これは、(水まわし)が楽にできるからではなかろうか。それに対し、石臼製粉での挽きぐるみ粉や荒挽き粉の扱い難さは、熟練の(水まわしに)に感と慣れを要する。味覚と難易度は相反するものかも知れない。余りごちゃごちゃ言っていると、プロに叱られそうだが、更に極めたい方は、長島新一さんが解説した、DVD「蕎麦新時代」をご覧いただきたい。小生の場合、蕎麦打ちは「精神統一」、「老化防止」になっている。是非、熟年の趣味のひとつとしてお勧めしたい。
          
      ○長島製粉(株)埼玉県鴻巣市本町7-3-31 電話048-541-3622・3624 
                          FAX048-543-2305
      ○DVD「蕎麦新時代」 
http://www.jukunen-dvd.jp ご参照

「心は、自然と人間の共生」をめざし映像を制作する『石神映像工房』も訪ねてください。
URL:http://www.jukunen-dvd.jp/SHOP/399987/list.html
                        

                                                                                    


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