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浦安の風№3 [雑木林の四季]

浦安の風(3)  “なんとなく”・・・ってこと

              ソーシャルオブザーバー  横山貞利

今年も、623日が間近になってきました。と言っても大概の人々は、623日が何の日かわからないでしょう。623日は、沖縄戦が終結した日です。1945(昭和20)年の敗戦から60余年も経ち、若い人たちは戦争があったことさえ知らないのですから仕方ないのかもしれません。

 60年代後半から70年代にかけて報道の仕事をやっていたころ、623日、86日及び9日そして815日はニュースにとって特別な日でした。

 623日・・沖縄戦の組織的戦闘終結。86日・・広島に原爆。89日・・長崎に原爆。815日・・終戦(敗戦)。 このように6月から8月にかけては、「ニュースコープ」や「ニュースデスク」などのニュース番組だけでなく報道特別番組などで、必ず先の戦争に関する番組が放送されました。

 ところで、1931(昭6)年満州(現在の中国東北部)事件、1937(昭12)年には盧溝橋事件が起こり、中国大陸全土で本格的な戦争へと拡大していきました。更に、1944(昭16)年遂に太平洋戦争に突入していったのです。そして、1945(昭20)年815日廃墟と化した中で敗戦を迎えました。この15年間の戦争の時代は、いま考えると狂気が支配していたとしか思えません。この暴挙を許してしまったのは、いったい何だったのでしょうか。確かに治安維持法があり、特高(特別警察)や憲兵などがいて国民は常に看視されていましたし、隣組などの組織も看視機能の末端にありましたから、“なんとなく”大勢に従っていかざるを得なかったでしょう。

 私は、1944(昭19)年、国民学校(現在の小学校)に入学しましたが、私なりに“小国民”、“軍国少年”でした。朝、学校の門に立ち、真正面にあった奉安殿(天皇皇后両陛下の写真であるご真影と教育勅語が納められていた)に向かって最敬礼し、それから校舎の昇降口で下駄と藁草履を履き替えて教室に入ったものでした。こんなことは誰に教えられたものでもなく、“なんとなく”自分なりの決まりになっていたのです。実は、この“なんとなく”が怖いのです。

 多分、昭和前半(昭和元年から昭和20年)には、大多数の日本人が“なんとなく”戦争を受け容れていたのではないでしょうか。たった1枚の召集令状(所謂、1銭5厘の赤紙と言われていたもの)を受け取り、近所の人たちや国防婦人会の女性に見送られて営門をくぐって入営し、そして戦地に送り出されていきました。

 私が生まれ育った信州の小都市には、歩兵第50連隊がありました。家の横の坂道は、国鉄(現JR)の駅から連隊に通じていましたから、入営する人とその家族が黙々と登って連隊の方へ歩んで行きました。それは至極当然なこととして受け容れられていたのでしょう。そうした光景を幼少時から“なんとなく”見つづけていると、何の疑問ももたないものです。いま、考えてみると何と怖いことでしょう。こうしたことは60余年前のことであり、現在は全く関係ないと言い切る自信はありません。 

 当時のマスメディアは、新聞(朝刊)とラジオしかありませんでしたが、いまはテレビ、雑誌を加えた4媒体のほかに、ケータイ(ケイタイではない!)&ネットが日常生活の中に蔓延しています。そうしたメディアを通して、意識するとしないに拘わらず“なんとなく”世の中の動向がもたらせられます。なんと便利なことでしょう。しかし、便利さということは必ずしもいいこととは限りません。便利さの裏には大きな落とし穴が伴うものです。つまり、かえって不便であったり危険であったりします。

 それでも、“なんとなく”便利さを受け容れ、それに頼った生き方をします。しかし、人間は“なんとなく”と言う性をそう容易く捨て去ることはできないものです。05(平16)年の郵政選挙では、メディアによって連日刺客報道が流され、“なんとなく”刺客に投票しました。先日、民営化された日本郵政株式会社社長人事をめぐって総務相が更迭されました。前総務相が主張した「かんぽの宿」をめぐる発言のほうが“なんとなく”正しいように思われるのです。「郵政民営化とは何か」という本質の問題について、どれほどの人たちが考えてきたのでしょうか。この問題は“なんとなく”で済まされない要因を含んでいますが、そのことについて充分論議がつくされたとはとても思えません。現在のところ日本郵政株式会社の株は政府が100%保有していますが、株が売り出され完全に民営化されますと、郵貯・簡保合わせて300兆円とも400兆円とも言われる資産をめぐって投機・投資ファンドが見逃す筈はないでしょう。この資産は国民のものですが、そんなことはファンドにとってはどうでもいいことです。先週、東京証券所の日経平均株価が一時的にしろ1万円の大台を記録しましたし、ニューヨークの原油先物取引では徐々に値上がりしつつあります。まだ顕著ではありませんが、再び投機ファンドが動き出しているのかもしれません。

 それにしても“なんとなく”ということは、決して“なんとなく”では済まされないことが多いように思いますが、如何でしょうか。

 
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