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猿若句会秀句選 №90 [ことだま五七五]

猿若句会特選句集  90 (2018年10月20日)

                       猿若句会会亭  中村 信

  朝寒の改札拒む電子音   丸本 武
  美術展自画像運ぶ秋の朝   内野和也
  カタログを何度も見直す夜長かな   宮島久代
  漫ろ寒欠けたコップで薬飲む   中村呆信
  新市場豊洲で漁る秋味覚   原 健一
  美術展裸像の並ぶ二号室   高橋 均
  炊きたての松茸飯を病床へ    伊藤 理
  山寺や蕉翁像に初時雨   花柳小春
  ベレー帽同士目の会ふ美術展   大橋一火

◆猿若句会十月例会の特選句集です。例によって一句だけの短評から始めます。
[短評]  [朝寒の改札拒む電子音 ]。今月は参会者も多く、さらに全員の特選句が全部異なっていました。上掲がその結果です。晩秋の季語には「寒」の一字が入っている季語「秋寒、秋小寒、そぞろ寒、漸寒、肌寒、うそ寒、朝寒、夜寒」と意外に多くあり、初冬と間違い易いのもあるので要注意です。今年の夏は異例の暑さもあって、変則的に到来した涼しさを表す季語として多用されていたようです。この句も「朝寒」を選んでおります。句意もわかり易く[朝寒のある日の改札口はスムーズに流れていた。するとその中の一台に電子音がして入退出がストップ、流れが乱れてしまった。しかし、すぐに何事もなかったように改札口は機能しだした]とでもなるでしょう。この句意には異論があるかもしれませんが、「朝寒の」との季語の使い方から私はこう読みました。「朝寒」を選んだことで早朝の清々しさ、通勤・通学が醸し出すエネルギーみたいなものまで詠まれているような気になります。わかり易い佳句ですが、陥穽が二つあります。ひとつは類句・類想句の心配です。「こんな発想したのは私だけだろうか?」「すでに誰かが、同じ発想で俳句にしていないだろうか?」の悩みです。もう一つは季語が動かないだろうかと言う心配です。同じ季節内だったら、「季語選び」が正しいだろうかという思う俳句の基礎に関することですから正常です。さらに進んでの季語選びは、季語を他季に変えてみても俳句として通じる句になっていないかの悩みです。この解決策は悩みに悩む(別な言葉で言えば。推敲に推敲を重ねる)ことしかありません。結果、やはりこれしかないとの答えに達したなら、誰に何を言われようと自信を持って出句してください。
◆句会での特選以外の秀作・佳作については中村信のホームページ《あ》[ http://saruwakakukai.web.fc2.com]をご覧ください。(ただし、該当欄が一時的に更新不能のため、同「掲示板」投稿欄にて代替しています)


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