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私の中の一期一会 №167 [雑木林の四季]

    日大アメフト選手の悪質タックルで内田前監督らの“除名処分”が決まった!
~たとえ監督・コーチの指示でも、「やらない」と判断できればよかった~

                            アナウンサー&キャスター  藤田和弘

 5月6日に行われたアメリカンフットボールの“日大対関学大の定期戦”で、日大の守備選手がパスを投げ終えた関学大のQB(クォーターバック)に背後からタックルして全治3週間の怪我を負わせた。
 アメリカンフットボールでは“QBサック”といってQBに襲い掛かるプレーは許されているが、それはQBがボールを保持している間だけである。ボールを手から離したQBを倒したら“反則”を取られるのだ。
 問題になった場面の映像をみると、関学大のQBはボールを投げ終え無防備な状態にあった。笛も吹かれてプレーの区切りもついていた。そこへ日大の選手が背後から突進しているのだ。明らかに、故意だとしか思えない悪質なものに思えた。
 スポーツマンらしからぬこの違反行為は、「最初のプレーでQBを潰せ」という監督の指示があったからだという指摘が早くからあり、選手非難よりも「日大アメリカンフットボール部の指導体制に問題ありだ」という流れになっていった。
 怪我を負わせた選手が日本記者クラブで行った22日の謝罪会見は、異例の“顔出し会見”で行われた。弁護士の同席も特例で認められたが、宮川泰介(3年=20)と実名を名乗ってのものであった。
 この会見は「被害選手と家族、関学大への謝罪の意味が大きい。顔を出さない謝罪はないだろう」と本人と両親が希望したものだと弁護士が説明した。
 会場にはテレビカメラ20台以上が並び、358人の報道陣が詰めかけたほど世間の注目を集めた。
 宮川選手は、「最初に、本件で怪我をさせてしまった関学大のQB選手、及びそのご家族、関学大アメフト部、及び関西学院大学関係者の皆様、日大アメフト部のチームメイトに対し、この度の事でご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます」と頭を下げてから、陳述書を読み上げていった。
 悪質なタックルは自分の独断で行ったものではない。「内田正人監督(62)や井上奬コーチ(30)の指示に従って行ったもの」だと説明した。
 これまで指導者の指示を否定して「指導者と選手の間に乖離があった」としてきた日大側の見解とは全く違う内容の陳述であった。
 練習後、コーチから「監督に、お前をどうしたら試合に出せるか聞いたら、“相手のQBを1プレー目で潰せば出してやる”と言われた。“QBを潰しに行くので僕を使ってください”と監督に言いに行け」・
「相手QBが怪我をして、秋の試合に出られなかったらこっちの得だろう」・・
 コーチから「これはホントにやらなくてはいけないぞ!」・・
 監督には「やらなきゃ意味ないよ」と言われた・・
 コーチには「出来ませんでしたでは済まないぞ!」と・・・
 選手が監督に口を利ける雰囲気など全くない・・もう何も考えられない状態だった。
 反則後、相手QBが怪我をして代わったことにも気づかなかった。
 退場になってテントに戻った時、事の重大さに気付いて泣いているところもコーチに見られている。
 5月11日、監督の部屋で両親と一緒に、監督、コーチに面会した。
 父が「個人的にでも相手方の選手とご家族に謝りに行きたい」と申し入れたが、監督からは「今はやめて欲しい」といわれた。
 たとえ監督やコーチに指示されたとしても、自分自身が「やらない」と決断できず、指示に従ってしまった。自分の弱さが今回の原因だ。
 退場になってから今まで、思い悩み、反省してきた。事実を明らかにすることが、償いの第一歩だと決意してこの陳述書を書いた。改めてお詫び申し上げます。
 彼の陳述には誠意が感じられた。犯した行為は間違いだったが、真摯に反省していたように感じた。
 特に、好きだったフットボールがだんだん嫌いになって、「もうフット―ボールを続けるつもりはない」と彼が言った時、20歳になったばかりの若者を不憫に思った人が多かったのではないかと私は思う。
 関東学生アメリカンフットボール連盟(関東学連)は29日、臨時理事会を開き、日大の内田正人前監督と井上奬前コーチを「除名処分」とすることを決定した。
「除名」は最も重い処分で事実上の「永久追放」にあたるという。
 危険なタックルをした宮川泰介選手とチームに対しては「今季の公式試合出場停止処分」とした。
 宮川選手とチームへの処分は再発防止策などの理事会承認を条件に、処分を解除する可能性が残された。
 関東学連による“除名という重い処分”は初めてで、加盟チーム代表や理事による総会で承認を得て最終決定される。
 関東学連の理事ら4人で構成する規律委員会が、日大、関学大の関係者や審判ら約20人から聞き取りを行った。この規律委員会による処分案は賛成16、反対4で承認された。
 規律委員会の森本啓司委員長は、争点となった“反則行為の指示があった”とする宮川選手の主張を「具体的で迫真性がある」と全面的に採用している。
 内田前監督や井上前コーチの発言について「選手の受け取り方に乖離があった」という日大側の主張は、聞き取りの結果「乖離は存在しない」として退けられた。
 指示には“怪我をさせて来いという意図”が込められていたと判断されたことになるして。
 内田、井上両氏は“虚偽発言”を繰り返したとされたことが、除名処分の一因になった。
 宮川選手の監督への直訴について、内田氏が「何を言っているか分からなかった」というのは、井上氏が「内田監督を守ろうとして事実を捻じ曲げたのは明らかだ」と述べ、信用性がないと断じている。
 内田氏は「悪質タックルを見ていない」とされていたが、当日の試合映像を検証した結果、“タックルを見ていた”ことが確認されたと認定している。
 実名を名乗って謝罪会見までした宮川泰介選手は、すでに社会的制裁を受けている。
 彼に再起へのチャンスを与えないことは、教育をモットーとする関東学連としてはありえない」と述べ、秋のリーグ戦での復帰を否定しなかった。
 これまで日大側が関学大側に説明してきた「指導者と選手の間に受け取り方の乖離があった」という主張は一蹴されたものになった。
 学連側の調査では、内田監督が宮川選手に「(反則行為を)やらなきゃ意味ないよ」なんて言っていないという主張も、理事会によって「監督のウソだ」と断定されたのである。
 今後は日大側が立ち上げた“第3者委員会”の調査と“警視庁”の捜査に委ねられることになる。
 怪我をさせられた関学大のQB選手は、27日の関大との試合で実戦に復帰した。
 彼は「直接謝罪を受けて心苦しいというか彼が可哀想に感じた」と話し、「フットボールをする権利はないというのは違う。選手として戻ってきて、正々堂々とプレーする中でまた勝負したい」と語っている。
 宮川選手は、被害選手が復帰したことを新聞で知って、「安堵しました。今後の活躍を祈っています
 選手のお父様が嘆願書の呼びかけをしてくださり、多数の署名を頂いたことを深く感謝いたします」というコメントを30日に発表した。
 加計学園問題で、首相の元秘書官は愛媛県の担当者らと会ったことを1年以上経っても認めようとしない。
 森友問題では財務省が公文書を改ざんしてまで権力者の首相を守ろうとしている。
 日大のアメフト部の不祥事も、すぐ謝罪していればこんな大騒ぎにならなかったかも知れない。
 すぐ謝っていれば解決したかも知れないのに、過ちを認めない。都合の悪いことや問題点を指摘されるとウソを言ってでも誤魔化す・・
 今回の騒動では、日大アメフト部と安倍政権は同じ構図だという見方も多かった。イエスマンで固められ“あったもの”を“なかったこと”にしても恥じないから謝らないのだろう。
 自らの不祥事を顔を晒して語り、自分の弱さを反省しつつ深々と頭を下げて謝罪した20歳の若者の潔さを見習ったらどうだ!
          「優秀な人は自分自身を責めるが、並みの人間は他人を責める」
            NFLマイアミ・ドルフィンズのドン・シュラ監督の言葉である。




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笠井康宏

藤田さん、こんばんは。内田、井上両氏の逮捕は間近と噂されています。アメフトが危険なスポーツというイメージを広めた功罪は大きいと思います。親としてはやらせたくありません。
by 笠井康宏 (2018-06-04 01:54) 

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