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地球千鳥足 №33 [雑木林の四季]

時がゆっくり流れる心豊かな社会 ~アメリカ合衆国~ 

                               グローバル教育者  小川彩子 

電気無しで豊かな生活
アーミッシュのコミュニティーをいくつか訪問、親切な家族に何組か会えて屋内を見学させて頂けた。ここではオハイオ州アダムス郡のメアリー・ダニエルご夫妻の家庭を紹介しよう。電気と自動車は使わないアーミッシュだ。屋根にはソーラーが並び、太陽エネルギーは地下のバッテリーに保存され、そこからインバーターを経てコピー機やミシンを動かす。部屋の天井にはガスによる灯り。ガスと「ソーラー+インバーター」システムを併用し、便利な生活だ。家具会社を経営している夫婦だが、ダニエルは家では豚の世話をし、メアリーはベビーシッターをし、子ども5人に各種の仕事を分担させ、家族全員働き者だ。テレビ、ラジオとエアコンは無く、Simplicityを重視する。重視するからこそ仕事は無限にあり健康的生活だが、時はゆったり流れ、心は豊かだ。余談だが我が家も昨年の7月以降テレビを捨てた。テレビ受信の代わりに外で活動する我々夫婦、生き方に共通点が多い。
エネルギーの効率的生産は怖いものだ。つい先月ウクライナを訪問し、チェルノブイリの犠牲になった子どもたちの写真や遺品の玩具、奇形の馬、等に胸を詰まらせた筆者、福島の犠牲者たちが未だ故郷に帰れないでいる現実を他人事と思えない筆者にとって自給自足のアーミッシュ・ライフは魅力だ。なお、アーミッシュとよく似て厳しいルールを守るメノナイトというグループがあるが、メノナイトは電気を使い、車は制限しつつ使う(例えば3軒に1台だけ、とか)。いずれも厳格なキリスト教徒で、教会は持たずシンプルライフを維持し、日常生活でキリストの教えを実践している。

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                              メアリー&ダニエルご夫妻

地球に優しいバギーでラララ
 地球千鳥足夫婦が世界を歩きつつ口にする嘆き節:夫「車が地球を滅ぼす!」妻「プラスティックが地球を滅ぼす!」だ。ドミニカ共和国のような海に囲まれた平和な国でも路上は車の数珠つなぎで排気ガス吹き出し放題。インドはカシミール地方、風光明媚なタール湖にも、マチュピチュの麓の美しい川にもプラスティックの容器が渦巻き、アマゾンの奥地の小村では紙とプラスティックを一緒に燃やしていた。水も空気も汚染され続ける地球!だが、馬の蹄で軽やかに走るバギーは地球を汚さない。「ラララ、車を止めてバギーにしよう、緑の街によく合うバギー、ラララ、貴方も私もバギー、バギー!」と歌いつつ、筆者は今、せめてこれぐらいは、と公害を生まぬ車に切り替えた。なお、美味しいパンにもちょっと触れよう。20年ほど前にもアーミッシュ村を訪れパンを買った。とても美味しかったので今回も沢山求めたが、お店にはお客が溢れていた。チーズその他の酪農品、蜂蜜、ナッツ類等、食品添加物が含まれていない食料は安心でその上美味しい。

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                              バギーで夕食にお出かけ

シンプルライフは若者にも魅力
北米最大というオハイオ州、ホルムズ郡のヘリテージ博物館は一訪の価値がある。Heinz Gaugelが描いた一大絵巻にアーミッシュ&メノナイトの歴史が世界史と関連させてリアルに描かれ、円形に一周する。幼児洗礼を認めず再洗礼派と呼ばれるアーミッシュは16世紀、宗教改革の嵐の中チューリッヒで生まれた。迫害を受け結束を固め、その後ドイツに移住し、17世紀の30年戦争時アメリカへの移住を決めたアーミッシュ。北米ではペンシルベニア、オハイオ州等28州やカナダに20万人以上が住み、南米にも分布が見られる。ここで夫が質問した。「アーミッシュ村は若者が出て行きシニア村になっていない?」と。答えは「否」だった。「そんな時期もあったが今は若者の比率が多い」そうだ。若者だけでなくアーミッシュ全体の人口増が報告されている。利便性を追求するあまり地球を破壊し続ける我々先進国の生活への反省から、人々は、交通事故、公害や犯罪のない平和な社会を希求するアーミッシュ社会に誘引され始めたのだろう。
筆者の人生を振り返ってみた。小虫のように急ぎ足でやみくもに歩き廻り、立ち止まることも少なかった人生。アーミッシュに移住出来れば…と今心から憧れている。

(アメリカ、Angle Press. Inc. 発行、Weekly Jangle 第152回、「時がゆっくり流れる心豊かな社会 ~アメリカ合衆国~」に修正を加えたもの)。


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