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雨の日は仕事を休みなさい№2 [アーカイブ]

『会社へ行くのがつらかったら休みなさい 会社(道場)は建物ではなく、人の心にあるもの』                                                                                  

                              鎌倉・浄智寺 閑栖  朝比奈宗泉

  「道場」という言葉の本来の意味は、お釈迦様が菩提樹の下で悟りを開かれた樹下の座のことです。禅僧が修行する場所をいい、ひろくは学道を修めるところを指すようになりました。

 サラリーマンにとって、会社は人生の修行の場でもあり、その意味ではまさに道場です。道場というのは神聖な場所や建物をいうのではなく、真剣に自分の仕事をする場所と言い換えてもいいでしょう。最近は、自宅に帰ってもパソコンを使って仕事をする人が増えています。だから、たとえ四畳半一間のアパートに住んでいても、そこがその人にとっては道場となるのです。

 禅語に「直心是道場」という言葉があります。何かに懸命に努めれば、どこでも道場になるという意味です。また、幕末の勤王僧(浄土真宗)である釈月性は故郷の山口を出るときに作った「まさに東遊せんとして壁に題す」という漢詩のなかで、「人間、到るところに青山あり」(広い世間には自分の墓とする場所はどこにでもある)と詠んでいます。自分の信念をきっちりと持っていれば、どこにいようが良い道場になるのです。要は、懸命に仕事に励める場所があればいいということです。

 人はときには体調不良となることもあります。本当に疲れているのなら、会社を休んでいいと思います。会社の規則を守ることは大切ですが、病気になったらもっと大きな損失が出ます。だから「腹が痛い」、「頭が痛い」などのいろいろな理由をつけて、堂々と休みなさいと言いたい。疲れた心身を休めるために家にいることも、大切な修行のひとつです。

 私が早稲田大学に入学したころ(昭和17年)は、太平洋戦争が始まっていました。入学してから1年ほどで入隊し、半年後には、帝都(東京)地区防衛の高射砲レーダー隊の幹部要員として訓練に入っていました。

 ある日の夜、サーチライトの部隊との合同訓練のため、東京湾七号地に集合するよう、命令されました。私は昼間の訓練で疲れ果て、夕食後、兵舎で居眠りをしてしまいました。そのときの戦友たちは、「熱があるから寝かせておけ」と、そのままにしておいてくれたのです。おかげでよく眠れ、疲れがとれました。そういうふうに周りから助けられることも人生には多々あります。

 何が何でも規則に従わなければならないのではなく、疲れている同僚、友達を見たら、周りから「おまえ、今日は休めよ」と親切にしてやるのもひとつの方法です。無理に仕事をしてミスをするよりは、しっかり休んでリフレッシュする。そして、その後、速やかに出社して、仕事に取り組んだほうが能率も上がり、結局は会社のプラスにつながります。規則の遵守だけでなく、柔軟に人生を送らなくてはいけません。
 直心是道場(直心是道場)(じきしんこれどうじょう)『維摩経』菩薩品(ゆいまきょうぼざつぼん)
 インドでは修行する在家の裕福な資産家を居士(こじ)と呼びました。維摩居士は、維摩経に登場する人物で、説話のために理想的な人間像として創造された在家の信者です。あるとき、修行中の光厳童子(こうげんどうじ)が路上で維摩居士に出会い、修行にふさわしい道場の場所を尋ねました。それに対して維摩居士が答えたのが、「直心是道場なり、虚仮(こげ)なきが故に」という言葉です。
 「直心」とは、真直ぐな正しい心。「虚仮」とは、嘘・偽りのことをいいます。偽りのない正しい心が、すなわち立派な道場であるということです。道場とは修行のための神聖な場所を指し、建物をいうのではありません。そこは、修行する人の心がけしだいでよくも悪くもなります。つまり道場は、人の心そのものを意味することになります。
 たとえば、茶室1つにしても、直心をよく会得している人たちの集まりならば、たとえ粗末であっても立派な道場になります。しかし、一見閑静でよさそうな場所に見えても、心未熟な人ばかりの集まりでは道場とはいえません。
 2007年は、「食品表示偽装」「年金問題」「防衛省問題」など、嘘・偽りの年でした。その一年を象徴する漢字が「偽」と発表されましたが、日本人が「直心」を忘れてしまった結果であるといってよいでしょう。
 こうした時代だからこそ、日本人一人ひとりが無垢の心にかえることで、この直心を理解できれば、この世は誠意に満ちた安心できる社会になるのです。
『雨の日は仕事を休みなさい』実業之日本社                     

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