オオバギボウシ (ゆり科)
エッセイスト 中込敦子
[外部画像] 深緑色の艶のある長楕円形の葉の合間から花茎が30~40センチの高さに伸び、その頂きに白や薄紫色の変化のある漏斗状の鐘形の花を、次々と開いてみせてくれる。
この鐘形の花の筒は本来は6枚の花被片が離れていたが、途中まで癒合(ゆごう)してしまったものだそうで、花筒となっている部分をよくみると、癒合した跡となる線は透き通って見えている。
擬宝珠と書いてギボウシと読み、ギボウシュから転じたそうだ。擬宝珠とは橋の欄干などに付けられたネギの頭のように尖った飾りのこと。
花の形は擬宝珠とは程遠いが,春先に芽吹いたときの草の姿が似ている。コバギウボシに比べると花も葉もスケールが大きい。
オオバギボウシにも多種あるが、上水土手のものはイワギボウシ(岩擬宝珠)であると思う。
不心得者によって少なくなっていたが、ここ数年は8月から9月頃、あのとぼけた感じを与えると共に落ち着きを感じさせてくれる漏斗状の花が、木の間隠れに見られるようになり、散歩していて嬉しさが込み上げてくる。
這入りたる 蚊にふくるるは 花擬宝珠 高浜 虚子 『モグラ通信』