山羊の歌 №8 [文芸美術の森]
都会の夏の夜
詩人 中原中也
詩人 中原中也
月は空にメダルのやうに、
街角(まちかど)に建物はオルガンのやうに、
遊び疲れた男どち唱ひながらに帰ってゆく。
――イカムネ・カラアがまがつてゐる――
その唇(くちびる)はひら(月+去)ききつて
その心は何か悲しい。
頭が暗い土塊になって、
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。
商用のことや祖先のことや
忘れてゐるといふではないが、
都会の夏の夜の更(ふけ)――
死んだ火薬と深くして
眼に外燈の滲みいれば
ただもうラアラア唱ってゆくのだ。
2025-01-14 09:03
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