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山羊の歌 №7 [文芸美術の森]

臨 終

        詩人  中原中也

 秋空は鈍色(にびいろ)にして
 黒馬の漣のひかり
   水涸(か)れて落つる百合花
   あー こころうつろなるかな

 神もなくしるべもなくて
 窓近く婦(をみな)の逝きぬ
   白き空盲(めし)ひてありて
   白き風冷たくありぬ

 窓際に髪を洗へば
 その腕の優しくありぬ
   朝の日は澪(こぼ)れてありぬ
   水の音したたりてゐぬ

 町々はさやぎてありぬ
 子等の声もつれてありぬ
   しかはあれ この魂はいかにとなるか?
   うすらぎて 空となるか?


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