地球千鳥足Ⅱ №58 [雑木林の四季]
奔放の旅 2
小川地球村塾村長 小川律昭
ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで航空機のチケットを紛失し、やってきた空港カウンターでの出来事。コンピューターには予約されていることがわかっていても、お金を支払ったかどうかわからないから領収証を見せろと言う。その領収証も紛失したと言ったら、改めて航空券を買えと言う。そんな無茶な! 夜だから代理店は閉まっており連絡のしようもない。運良く切符を買った航空代理店のスケジュール表と購入金額の記載したコピーがあったので提示した。押し問答の末に係員が上司に相談することになった。その結果は再発券、手数料七〇ドルを支払って乗ることが出来た。言葉は満足に通じないし、汗みどろだった。航空券と領収書は大事なものだからと一緒に切符袋に入れて携帯しがちだが、両方失うとこんな苦労が待ち受ける。最近では大抵E(電子)チケットなので紛失しても大丈夫なのだが。
小川地球村塾村長 小川律昭
ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで航空機のチケットを紛失し、やってきた空港カウンターでの出来事。コンピューターには予約されていることがわかっていても、お金を支払ったかどうかわからないから領収証を見せろと言う。その領収証も紛失したと言ったら、改めて航空券を買えと言う。そんな無茶な! 夜だから代理店は閉まっており連絡のしようもない。運良く切符を買った航空代理店のスケジュール表と購入金額の記載したコピーがあったので提示した。押し問答の末に係員が上司に相談することになった。その結果は再発券、手数料七〇ドルを支払って乗ることが出来た。言葉は満足に通じないし、汗みどろだった。航空券と領収書は大事なものだからと一緒に切符袋に入れて携帯しがちだが、両方失うとこんな苦労が待ち受ける。最近では大抵E(電子)チケットなので紛失しても大丈夫なのだが。
同じチケット関連で別の冷や汗。これは自分のミスではなくどこかの空港のチェック・イン・カウンターの係員のミスだが、乗り継ぎを繰り返したグァナアキル(エクアドル)でのこと。行き先ごとにチケットを一枚ずつ取られていくのだが、「貴方のサンホセ(コスタリカ)行きのチケットがない」と言う。そんなはずはない。サンホセから来たのだから。「前の乗り換え時、空港の誰かが間違って二枚取ったのだろう」と言い合いになる。よくあることだ。結果は「上司に相談して」と言うことで当然ながら搭乗出来たが、その間三十分は待たされた。この時はガラパゴス諸島を観光しての帰りであり、乗り継ぎ時間を気にしながらの降って湧いたようなトラブルだった。個人旅行をしていると次には何が起こるかわからない、と覚悟すべきだが時間さえ余裕があればクリアー出来るだろう。
これもエクアドルのグァナアキルだが、ヒッチハイクをあてにして温泉に行くことにした。行きは長距離バスがあり、同じバスで下車した地元の人の迎えの事に乗せてもらって温泉へ。大きい浴槽、砂浴、泥浴とそれらしき設備はあったが、お客を歓待するには何とも質素な施設であった。車でしか来れないのでパラパラ程度のお客だった。それでも温泉地、近辺に食事をする場所もあり、温泉に浸かった気分になった。帰りの草はヒッチハイクしかない。教えられたそれらしき場所で待つこと一時間以上。地元のおじさんも同じく待っていた。せっかく温泉浴をしたのに、イライラと時間を過ごしたせいか汗もかき不快になったが仕方ない。
その時一台の事が猛スピードで目の前を通りぬけた。何と無謀な運転だ、と目を見張っているうちに道路をはみ出しヤブの中に突っこんで止まった。隣のおじさんが駆けて行った。運転者が車から出てきて、ボンネットを開けてなにやらしている様子。再び車をバックさせ、元の道路に戻ってきた。おじさんが呼んだので乗せてもらえることになったのだ。大丈夫かな?このボンコツ車、アクセルが元に戻らなくて止まらなかったというのに…。だが他に車が来ないのだから、乗せてもらうしかない。いざという時、車から飛び出せるよう、ドアロックが開けられれば、と捜したが、壊れていた。外からでないと開けられない始末。乗ったからには運は天に任せようと観念した。生きた心地のしない十五分間だった。どうにか主要道路のバス停に出てホッと一息ついたが、とんだ温泉行きだった。
ところで旅をするにあたっては、まずおおざっぱな計画を立てる。実行の段階では、状況次第で計画の変更も柔軟に。宿や交通機関を予約すれば、却って行動の制約を受ける。後ろ髪を引かれる思いはしたくないし、二度と来られないかも知れぬ土地、気にいれば滞在を延長、気にいらねば省略する気ままさがあってよい。予約がないことの不安もあろうが、「心配しないで!」と言いたい。たとえ出迎えを予約してあっても、その時の事情で相手が来られないことだってある。一人旅の体験はとっさの判断の訓練にもなる。
提案をひとつ。海外ビジネスで現地法人に出張する場合、迎えなどしてもらわない方がよいと思う。国際感覚を体得するためにも、事務所やホテルまで一人で行っていただく方が好ましい。海外で、初めから日本人に会って、日本語を使って、日本食を食べたのでは、グローバルに仕事の出来る人間は育たない。まずその国を体験し、人々に交わることだ。
本稿では紙面の都合上第二部は中南米中心になったが、次稿では「地球千鳥足」としてより広範囲に及ぶ国々の旅を紹介したく思っている。
旅を通じて思うこと。とっさの判断を要求される場面や文化、習慣の違いから起こる問題への対応と、みずからの汗を流さざるを得なかった体験は、長く脳裡に刻まれる。私の旅は緊張感と解放感が隣り合わせで大変楽しいものだった。もちろん日本の生活は忘却のかなた。旅は私にとって心身の活性化、老化防止、つまり「予防医学」そのものなのである。
(二〇〇二年四日
『万年青年のための予防医学』 文芸社
『万年青年のための予防医学』 文芸社
2024-11-29 09:55
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