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山羊の歌 №5 [文芸美術の森]

朝の歌

         詩人  中原中也

天井に 朱(あか)きいろいで
  戸の隙を 洩れ入る光、
鄙(ひな)びたる 軍楽の憶ひ
  手にてなす なにごともなし。

小鳥らの うたはきこえず
  空は今日 はなだ色らし、
倦(う)んじてし 人のこころを
  諫(いさ)めする なにものもなし。

樹脂(じゅし)の香に 朝は悩まし
  うしなひし さまざまのゆめ、
森竝(もりなみ)は 風に鳴るかな
ひろごりて たひらかの空、
 土手つたひ きえてゆくかな
うつくしき さまざまの夢。

[中原中也全詩集』 角川ソフィア文庫


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