雑記帳2024-12-1 [代表・玲子の雑記帳]
2024-12-1
◆11月初め、福島へのツアーに参加して、二本松や飯館村の復興の現状を見てきましたが、下旬には、「福島を丸ごと食べる」集いがありました。場所は今はやりのコワーキングスペース「千代田プラットホームスクエア。今年オープンしたばかりのビルの1階にある 「結ぶ食房 しまゆし」が会場でした。
◆11月初め、福島へのツアーに参加して、二本松や飯館村の復興の現状を見てきましたが、下旬には、「福島を丸ごと食べる」集いがありました。場所は今はやりのコワーキングスペース「千代田プラットホームスクエア。今年オープンしたばかりのビルの1階にある 「結ぶ食房 しまゆし」が会場でした。

「しまゆし」は、客が持ち寄った故郷の食材を調理し、提供してくれる店です。なんだか暖かなイメージがあります。この日はタイトルの示すとおり、福島の阿武隈高原の野菜や卵、飯館村の飯館牛が食材でした。
阿武隈で有機農業を営む農家の菅野正寿さんを講師に、集まった人の中には、東京で有機栽培にとりくむ練馬の農家、白石さんの顔もみえました。
講師の菅野さんは、水田3ha、トマト14a、野菜・雑穀1haを耕す一方、農産加工所や農家民宿を通じて、里山と都市をつなぎ、食と農の価値を伝えてきました。
菅野さんによると、この日の朝の気温は-3度。安達太良に雪が降る、今年一番の寒さでした。けれども、福島はこの半年、10月になっても30℃を越える日が続き、四季がずれて紅葉は短かったそうです。
大豆は花の時期が高温だったため不作でした。季節をずらして植えた自家用の味噌の豆も足りない。トマトやニンジンも実がならない。リンゴはカメムシの被害にあった。東北にはいなかったカメムシが北上中ということを実感したということです。これは温暖化というよりも、気候の危機的状況ではないかとさえ思えてくるというのです。
菅野さんは詩人でもあります。私たちは、この日、菅野さんの詩を通して「復興を越えて進む地域農業の今」を学んだのです。
田んぼのとんぼ
6月の終わりの 生暖かい初夏の朝
僕は棚田に水を引くため あぜ道をいく すると
稲の葉から ヒラヒラと 羽化したとんぼが飛び立った
1つや2つではない 20羽、50羽、いやいやもっと飛び立った
ヒラヒラ ヒラヒラ やわらかな羽が 朝陽に輝き銀色に光ってる
僕はあぜ道に立ちつくす なんて美しいんだろう
緑の葉と葉の間には くもが糸をはる タガメがいる カマキリがいる
カエルが足元で飛びはねる 田んぼは小さな生命の世界
暑い夏に里山に上り 自由に空を飛ぶ
稲穂が黄金色になるころ とんぼはつがいでふるさとに帰ってくる
穂波に小川に産卵をする
僕は棚田に水を引くため あぜ道をいく すると
稲の葉から ヒラヒラと 羽化したとんぼが飛び立った
1つや2つではない 20羽、50羽、いやいやもっと飛び立った
ヒラヒラ ヒラヒラ やわらかな羽が 朝陽に輝き銀色に光ってる
僕はあぜ道に立ちつくす なんて美しいんだろう
緑の葉と葉の間には くもが糸をはる タガメがいる カマキリがいる
カエルが足元で飛びはねる 田んぼは小さな生命の世界
暑い夏に里山に上り 自由に空を飛ぶ
稲穂が黄金色になるころ とんぼはつがいでふるさとに帰ってくる
穂波に小川に産卵をする
田んぼから飛んだので とんぼというのだ
菅野さんはポット苗で稲を育てています。
ポットの間隔をあけて植えると光が当たって稲は太くなり、病気や雨風に強くなる。
農業は教育と似ている。40人学級よりも30人学級、20人学級の方が子どもが育つ。
薦められて殺虫剤をまいたらトンボがいなくなった。有機リン系の殺虫剤は後年禁止になったが、殺虫剤をつかわなくなって6~7年経ってようやくトンボが羽化した。
農家は野菜をつくっているだけでない、生き物を育てているのだと感じた瞬間でした。そして、都会の消費者に田んぼの光景を通して里山を丸ごと伝えたいと思った矢先に起こったのが原発事故でした。
ポットの間隔をあけて植えると光が当たって稲は太くなり、病気や雨風に強くなる。
農業は教育と似ている。40人学級よりも30人学級、20人学級の方が子どもが育つ。
薦められて殺虫剤をまいたらトンボがいなくなった。有機リン系の殺虫剤は後年禁止になったが、殺虫剤をつかわなくなって6~7年経ってようやくトンボが羽化した。
農家は野菜をつくっているだけでない、生き物を育てているのだと感じた瞬間でした。そして、都会の消費者に田んぼの光景を通して里山を丸ごと伝えたいと思った矢先に起こったのが原発事故でした。
土の力 稲の力
耕す 耕す 土を信じて
ぼくは種をまく 野菜をつくる
原子の鬼を土の中に 閉じ込めて耕す
土へんに鬼で「塊」だ この鬼を退治する
土はいきている 土のふところを
ぼくは信じて 今日も耕す
ぼくは種をまく 野菜をつくる
原子の鬼を土の中に 閉じ込めて耕す
土へんに鬼で「塊」だ この鬼を退治する
土はいきている 土のふところを
ぼくは信じて 今日も耕す
どんな冷害も 干ばつも乗り越えて
3000年 種は生きている
原子の鬼を塊にして 閉じ込めて耕す
葉が茎が籾が 種を守り 実をむすぶ
田んぼは生きている 稲の力のふところを
ぼくは信じて 明日も耕す
3000年 種は生きている
原子の鬼を塊にして 閉じ込めて耕す
葉が茎が籾が 種を守り 実をむすぶ
田んぼは生きている 稲の力のふところを
ぼくは信じて 明日も耕す
君よ 忘れないで 生きている土の営みを
君よ 忘れないで 未来に続く稲の道
君よ 忘れないで 未来に続く稲の道
福島では2011年の夏から放射線量の調査を始めました。研究のためではなく、住民のための調査をと依頼にこたえた新潟大の調査で、耕したいい土ほどセシウムを吸着して、野菜の根からは放射線が検出されないことがわかったのです。
かって東北は冷害に苦しみ、東北の歴史は冷害と闘った歴史でした。その中で生まれた雑穀や山菜、南瓜等の野菜たちが造り出した豊かな食文化を、わずか50年の歴史しかない原発に奪われていいはずがない。
阿武隈の詩(うた)
わらび ぜんまい たらの芽の いのちの芽吹く里の山
耕す春に心が踊る 耕す春に躰がうずく
黒い土が顔を出し カエルがぴょんと飛び跳ねる
ああ 君はわすれていないか いのちの春を
耕す春に心が踊る 耕す春に躰がうずく
黒い土が顔を出し カエルがぴょんと飛び跳ねる
ああ 君はわすれていないか いのちの春を
トマト、なす きゅうり 汗ばむ躰を冷やすから
丸かじりして田んぼに走る 夕立の来る入道雲
穂に花柵 稲妻の夏
ああ 君はわすれていないか ホタルの光を
丸かじりして田んぼに走る 夕立の来る入道雲
穂に花柵 稲妻の夏
ああ 君はわすれていないか ホタルの光を
きのこ 白菜 大根 里いも 芋にで躰を温めて
飴色の稲穂に 山の神 田の神 水の神が舞い降りて
老若男女が酔いしれる 秋の祭り
ああ 君は忘れていないか 優しいさざめきを
飴色の稲穂に 山の神 田の神 水の神が舞い降りて
老若男女が酔いしれる 秋の祭り
ああ 君は忘れていないか 優しいさざめきを
干し柿が北風に輝き 臼から上がる白い湯気 白い餅
みそ 納豆の仕込むころ 甘酒できたと
ばあちゃんのこたつに入る 寒いな
ああ 君はわすれていないか 里の温もりを
みそ 納豆の仕込むころ 甘酒できたと
ばあちゃんのこたつに入る 寒いな
ああ 君はわすれていないか 里の温もりを
ああ 君と歩きたい 美しい野の道を
ああ 君と歌いたい あぶくまの道
ああ 君と歌いたい あぶくまの道
山菜にはカロリーはなくても新芽の命をいただく。その山菜も今は出荷停止です。きのこも摂取制限、そして、避難した住民の、村によっては6割、9割がまだ戻らないのが現状です。干し柿や干しいもは干して水分を抜くとセシウムが凝縮されると言われて作らなくなった。芋煮会は冬の風物詩でした。もう一度旬を取り戻したい。旬を食べる大切さを農家は伝えていかなくては。菅野さんの願いです。
最後に菅野さんがとりだした紙には「風味」と「案山子」の文字が書かれていました。10月になっても暖かく湿気が多い今年は、稲の自然乾燥に苦戦したということです。冷たい風にさらす干し柿や干しいもの「風味」のある文化も残したい。
刈り取りの終わった田んぼにたてる案山子にこの字をあてるのはなぜ? 実は案山子は山の神様を案内する子どもなんです。山の神と人間が一体になった稲作文化を伝えたい。
刈り取りの終わった田んぼにたてる案山子にこの字をあてるのはなぜ? 実は案山子は山の神様を案内する子どもなんです。山の神と人間が一体になった稲作文化を伝えたい。
都会に住む私たち消費者は食べることでしか応えることはできませんが、耕す農村へ思いをいたすことを忘れずにいようと思います。農村と消費者が一体となって作る共生社会は、菅野さんのいうように、消費者自身も耕す時代なのかもしれません。
この日のメニューは、阿武隈山麓の東和町産の野菜の前菜に、飯館村の飯館牛のしゃぶしゃぶ、締めの雑炊でした。



あとで知ったことですが、菅野さんは有機農業を始めるにあたり、山形県高畠町の星寛治さんに弟子入りしたそうです。高畠は、戦後の食糧増産が叫ばれて化学肥料や農薬が推奨された時代に、その政策には乗らず、昔ながらの米作りを選択した先駆の町です。そのリーダーだった星さんは「西の山川(聡一)、東の星(寛治)」と呼ばれた詩人でした。『知の木々舎』では星さんの詩を連載させてもらったことがあります。
お二人が亡くなって、農の語り部がいなくなったと先述の白石さんは哀しんでいましたが、私はこの日、新しい語り部に出会えた気がしました。
お二人が亡くなって、農の語り部がいなくなったと先述の白石さんは哀しんでいましたが、私はこの日、新しい語り部に出会えた気がしました。
◆今年は、東京は10月をすぎても30℃を超える暑さが続き、紅葉が遅れました。平地では色づくまで待てずに葉が落ちたり、紅葉しても色がさえないと感じた人も多かったと思います。国営昭和記念公園も、楓やイチョウは今一つ、元気だったのが原種シクラメンでした。昭和記念公園の遅い秋です。


日本庭園

原種シクラメン(花木園)

つわぶき(日本庭園)

楓風亭のお菓子のお題は「里の秋」
2024-11-29 10:04
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