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住宅団地 記憶と再生 №45 [雑木林の四季]

Ⅵ 武蔵野線町団地(武蔵野緑町パークタウン)
 
     国立市富士見台団地自治会長  多和田栄治

武蔵野市の対応、都営住宅の併設

 武蔵野線町団地建て替えの特徴として、自治会の地元自治体、武蔵野市にたいするねぼり強い働きかけと市の積極的な対応による大きな成果は見逃せない。
 公団の建て替えがはじまって、なによりも心配だったのは家賃の問題であるが、つぎには緑ゆたかな住環境がどうなるかであった。自治会は予想される建て替えにそなえ、1988年7月に市の協力をえてまず団地内の「緑のウオッチング」をおこない、その後なにかとすぐ近くの市役所に足しげく出かけていった。市長とも早い時期に意見を交わし、市長が、①高齢者対策、②緑の保全、③適正な家賃対策を条件に建て替えには反対しない意向であることも知っていた。
 市は、公団が緑町団地の建て替えを内示した91年7月9日の直前に企画部企画課にまちづくり担当を設け対応することにした。この時期、市は第3期長期計画の策定をはじめており、同団地の建て替えを市の9つの優先事業の1つに位置づけていた。さらに公団の説明会がはじまると10月23日、庁内に「公団建て替え対策調査検討委員会」を発足させた。検討委員会は自治会の住民案を評価し、これをベースにしながら要望事項をまとめて公団との協議にのぞみ、公団もそれをもとに公団案を修正、実施設計をすすめていった。市と公団の基本協定は93年3月25日に結ばれた。
 市長の建て替え同意3条件のうち自治会がもとめる家賃・高齢者対策は、公団との協議では進展しなかった。建て替え後の高家賃にかんしては全国的な運動の高まり、国会審議もあって公団は若干の手直しをよぎなくされたが、多くの居住者が戻り入居できるには及ばず、この地を離れなければならなかった。居住者には異論もあったが、自治会は団地内に都営住宅の併設を要望していた。市と公団の基本協定書にも「都営住宅併設への協力」が書きこまれ、市は1993年12月㌶日都知事あてに都営住宅併設の要望書を提出した。自治会、多摩自治協からも都にたいし執拗に要請行動をくりかえした。異論というのは、同じ敷地内に所得によって入居者が区分される住棟を併設するのは住まいに差別をもちこむもの、個々に家賃基準はちがっても同じ住棟に住める制度にできないのかという、それ自体真っ当な指摘であった。
 曲折はあったが、6年がかりで1997年5月に団地の敷地内に都営住宅の併設がきまった。120世帯からの都営住宅入居希望は全員かなえられ、ともかく同じ団地に住みつづけることができる。都営住宅だから一般公募枠も必要で、120戸をくわえ、計240戸建設されることになった。ちなみに、同じ時期に東京多摩地区では久米川(200戸)、府中(121戸)、武蔵野線町(240戸)の各団地で都営住宅併設(小金井は借上げ公営住宅110戸)の実現をみた。他府県でも若干の進展はみられたが、20㈹年代にはいると全国的にもまったく聞かない。武蔵野線町団地ほか一部の団地での公営併設はこの時期かぎりの稀有な例にすぎない。
 これも地価バブルの産物で1990年代に生まれて消えた制度に、住都公団が事業主体の「シニア住宅」(賃貸)があった。横浜市の港北ニュータウンに初のシニア住宅(ボナージュ横浜)を建てたが続かず、94年に公団は第2号として緑町団地の敷地5,000㎡を用意するからと武蔵野市に建設の提案してきた。入居に多額の出費を要し、これには団地自治会は反対した。経過は省くが、結果的にはシニア住宅では折りあわず、公団から約3,000㎡を無償で借り、西窪病院に託し民設民営の介護老人保険施設ハウスグリーンパークの建設となった。

 武蔵野線町団地の建て替え事業は12年間におよんだ。住都公団は1991年に着手し、96年3月に第1次の戻り入居がはじまり、98年10月の第3次で戻り入居は完了、都市公団の2003年4月の第5次までの新規公募と入居がつづいて団地全体の事業が完成し、その名を「武蔵野線町パークタウン」と改めた。敷地には公団賃貸855戸、都営住宅240戸、介護老人保健施設100床が建設された。
 新規の公団家賃(公募家賃=戻り入居者の最終家賃)は、2DK(45~52㎡)99,600~132,200円、2LDK(57~68㎡)130,300~178,300円、3LDK(66~89㎡)147,0
00円=189、000円である。容積率は61%から107%へ、駐車台数は176台(17.3%)から456台(53%)に増えた(『武蔵野市史 続編』)。
 公団が当初計画していた分譲70戸は36戸に減らし建設はしたものの、そりころすでにバブルは崩壊し6,000万円台もの高値で買い手がつきそうになく、国会でも批判をあび、分譲仕様のまま賃貸に変えていた。

『住宅団地 記憶と再生』 東信堂


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