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地球千鳥足Ⅱ №53 [雑木林の四季]

ボランティアから元王女面会まで
   ~アメリカ合衆国③コロラド州~

        小川地球村塾塾長  小川彩子
                                        
 コロラド州ポルダーへは以前松茸狩りに来たことがある。今回は友人の庭木の剪定を申し出た夫と別に活動を試み、その体験を通してポルダーを紹介することにした。
 到着翌日活動開始、家なき人々への月1回の食事提供に参加した。食材の質も栄養価も上々、料理の種類も味も良い。ボランティア仲間には中学生2人や彼らの母がいたが、この国では奉仕活動で学校の単位が取得できるのだ。
 会場作り、料理手伝い、スタッフとの会話などを楽しんだ頃、いよいよ家なき人々の登場。全員大きな寝袋を持っていた。食事が終わりそうな頃合いを見て、みなさんに交わり会話した。元大学教授で奥さんに放り出された人、領事だった人の息子、マイケル・ジャクソン似でおしゃれな人、雄弁な女性など、大抵は気質穏やか、物腰柔らかでお喋り好き、笑顔の素敵な人々だった。今夜の宿の相談をし合っていた。金儲けに縁がなく、社会からボンッとイジェクトされた人々だ。「また来てね!」と言ってくれた人、無言でしっかりとハグしてくれた人など、何人かと言葉や視線を交わし別れを惜しんだが、心が通い合い宿舎を持たぬ彼らへの同情と悲しみで胸が詰まった。
 来年100周年を迎える仏教会の二寺を訪問した。浄土真宗で教諭師はなんと女性。袈裟に包まれていてさえ、魅力的な教諭師。代表いわく、「長い歴史で女性は2人目、教諭師探しは至難の業だ」。
 参加者は開拓時代に入植した人々の二世が多く、ほとんどの人が会話は英語だけだが、大変な知識人だった。K夫妻の夫、Eさんは農学博士で少し日本語を話せる。「漢字を習う頃戦争に突入した」と。夫人も戦争体験者だ。
 コロラド大学は西都が誇る大学の一つで、赤タイルの屋根が明るい。カフェテリアで学生と会話しつつ食事。ポルダー・ディナー・シアター(BDT)では歌劇を楽しんだが、近々グレン・ミラー・オーケストラもやって来る立派な劇場だ。ハイキングやバイク乗り、マラソン・トレーニングに適したボルダーは、もちろんアメリカ有数のスポーツの街であろう。
 革命でイラン最後の王朝となったパフラヴィー朝の王女様だという方を、親交があるという知人と共に訪問した。76歳、夫君と一緒に面会頂けた。壁いっぱいの絵がかけられていた。国王が日本の画家から頂いたものだという。富士山を囲んで7羽の雁が飛んでいる、150号はあろうかという巨大な水墨画だ。美味しい紅茶とお菓子でおもてなしを頂いたが、元王女様は所作が優雅、年経てなお品性があった。ボランティア活動に熱心だという。夫君は皇帝の忠臣の子息とか。脳梗塞の後遺症でつらそうだったが、「また来てね」と笑顔で見送ってくださった。亡命先で年経ても、他人のために奉仕活動する元王女の人生に乾杯!
         (旅の期間一2015年 彩子)

『地球千鳥足』 幻冬舎


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