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地球千鳥足Ⅱ №49 [雑木林の四季]

天然の虹橋、レインボー・ブリッジ

      小川地球村塾村長  小川律昭

 世界の自然七不思議の一つといわれるこの岩橋は、ユタ州パウエル湖の中どころ、奇岩の谷間に架かっている。フラッシュ・フラッドと呼ばれる、瞬間的にドーツと押し寄せた洪水によって岩に穴が開けられて出来た、形状が虹にも橋にも似た天然記念物である。高さ八七メートル、幅八二メートル、頂上の岩幅一二メートルと巨大なもの、ネイティブ・アメリカンの崇める聖域で、そばには「近寄ることもくぐることもご遠慮ください」と警告されている。
 この虹橋を見るには、ラスヴェガスから巨大な奇岩がそびえるザイオン国立公園をいろは坂のように登りつめ、最後にトンネルを通過する。そそり立つ赤茶けた巨岩山の間を潜り抜けながら、標高を上へ上へと登っていくドライブは、アメリカならではの雄大な風景、度胆を抜く規模でスリル満点である。ちょうど紅葉時でもあり、荒々しい岩肌にスカーレット、ゴールデン、クリムズンなどの鮮やかな色が調和した最高潮時の景観に出くわして、もったいないほどの幸運に恵まれた気分であった。ここはワイフと私の好きな国立公園で、後年日本から来た娘にも案内したら、やはり喜んでいた。すぐ近くにあるプライス・キヤニオンも、信じ難いほど精巧な大岩石の天然彫刻群で、ここを見逃すわけにはいかない。ザイオンの山中の急坂ドライブは、緊張と感動の連続である。ザイオン国立公園を抜け、虹橋への途中に立ち寄れるコーラル・ピンクの砂丘の波紋は、珊瑚礁色も鮮やかで珍しい風景であり、ザイオンとともに風変わりな自然の魅力を満喫させてくれる。

 ページで宿泊。ここは観光の中継点、モーテル中心の街である。翌朝パウエル湖の出発点、ワーウィープから虹橋に行く船を利用する。湖上の風は冷たい。行く手の両側、水中にこヨキニョキと巨大な奇岩が現れては去っていく。湖から切り株状に飛び出したビュートと呼ばれる巨岩や連なった岩は、多様な色と形状で飽きることがない。この風景はそうお目にかかれるものではない。
 一時間も過ぎた頃、船は岩と岩の狭い通路にさしかかり、右回転する。岩肌を擦るかのような狭い谷間となり、なお運行して虹橋に近付く。ここまで来るとあまりにも澄明な湖水ゆえ、岩また岩の湖底を見続けながら遡上しているかのごとき錯覚におちいる。正面からの朝日で岩の影が本物の岩以上に明瞭に水面に反映して、湖の深淵を見ているようにも思え、あの世に来ているような異様な気分にもなるのだ。その時、虹橋の一部が見え、船が泊められる。
 切り立った巨岩石に囲まれているせいか、そばで見る虹橋は八七メートルの大きさに感じられない。が、まさしく虹状の岩だ。ちょうど太陽によるコロナ現象が虹橋の左半分にかかり、二つの輪が重なって神秘この上もない。この一瞬に来訪出来る人は少ないという。ネイティブ・アメリカンをして深く崇拝させ得た意味がよく理解出来た。この偉大な天然記念物への畏怖の念は時代が変わろうとも訪れる人々の心に深く刻みつけられることであろう。      (一九九五年十月)

『万年青年のためのお坊医学』 文芸社



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