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地球千鳥足Ⅱ №48 [雑木林の四季]

おもてなし、ワイン、温泉、えにしだ並木
   ~ジョージア~

       小川地球村塾塾長  小川彩子

 アルメニアのイェレヴァンから国際バスでジョージアのトビシリに入った。バスで一緒だったイランの若い旅行者、アミールとムトゥクバリ川に沿って中心部の自由広場へ。三方を山に囲まれ、この川を中心に開けたトビシリはなんと美しい街だろう。彼と一緒にホステル「ネスト」に狛まったが、母孝行息子経営のこのホステルは巣のごとく温かかった。
 夕食は家族同士のように和やかで自家製ワイン付きの大ご馳走。干し葡萄もとびきり美味だ。聞けばジョージアはワイン発祥の地、ワインという語はグルジア語の「ghvino」だという。遥々一緒に来てここで寝食を共にしたアミールと別れる時彼も寂しさを隠さなかった。
 ジョーージアの紹介パンフには「ヨーロッパはここで始まった」とある。「欧州最古の人骨が出た、最初のヨーロッパ人はこのグルジアでドマ二シ原人として骨が見つかった、欧州最高山頂はここで最高地定住もここ、葡萄の品種数は世界一、品種最高のワインで最高のおもてなしをする国」とも。フレスコ画の豊富な教会はもちろん、温泉もある。
 ホスピタリティーは最高だ。道端で困った顔でもしていたら必ず近くから「メイアイヘルプユー?」が聞こえる、バスの行き先表示が英語でなくて困っていたら、ある紳士がアメリカ英語で「カモン!」を連発、、バスに乗せてくれ、降りる場所を運転手に依頼、お礼を言う間もなく去った。散歩中の中年女性が、「日本の震災孤児を養子にして育てたいんです!」温泉浴場を探していたら、片目がつぶれ、首にも手術跡のある青年が一緒に探しあて、値段を確認し、「Royal Bathは高いから一般用の浴場へ行きましよう」とSulfer Bathへ案内してくれた。トビリシは「温かい」という意味で、語源は温泉だ。昔、王に撃たれた雉が温泉に落ち、癒えて飛び立ったことから王がその温泉の周りに作った都がトビリシだとか。良い浴場で地元民と交流できた。熱々のチーズパンをかじりながら近くのナリカラ要塞に登った。ムトゥクパリ川。丸屋根の温泉、ゴーリキーが幽閉されていたというメテヒ教会、グルジア正教の総本山シオニ教会等、美しい国際親善都市トビリシの街が眼下に聞けた。
 自由広場近くの地下鉄出口で客待ちしているマムカのタクシーは3回利用した。1回目は古き良き時代のジョージアを見るため民族建築村に行った。ここで小学生の遠足と一緒になったが、アルメニアやアゼルバィジャン出身の小芋生がいたので引率の先生に質問しつつ見学した。トビリシでは多くの民族が仲良く暮らしていると話してくれた。旧市街にはユダヤ街、アゼル街、アルメニア街があり、共生してきた歴史がある。2008年のロシア・グルジア紛争から丸3年経つが、この紛争はロシアと欧米間の非難含戦の様相を呈している。
 マムカの車でムツヘタに出かけた。イベリア王国の首都で世界軍産、力士「栃ノ心」の郷里でもある、ロシアに続く軍用道路の一部を通りジョージア最古のスヴェティ・ツホヴェリ大聖堂へ。薄暗い大聖堂内で聖像、壁画やィベリリア国土の写真が神々しい。グルジア正教の聖堂は上品な採光法でひっそりとした趣、欧州の教会のように威圧しない。世界遺産の他の一つ、山頂の小さな教会ジュヴェリ聖童は6世紀建立の素朴なものだがグルジア正教のシンボルで、上から見ると十字架の形をしているという。この教会から見下ろす風景は雄大だ。眼下に大河の三叉路が見え、延長線上はロシアとトルコとアゼルバィジャンだ。山肌には可愛い家や教会の尖塔が張り付いて美しい集落を作っている。三叉大河の行方と山肌に巣を作っている人々の幸せを見守っているのがこの十字架教会なのである。
 道中のえにしだ並木の見事さ。日本のえにしだの数倍の大ききで、並木のアーチを作り、黄金色が辺りを染めていた。マムカに空港行きの予約をした時、おまけだと言って、ライトァッブした夜の教会に案内してくれ、お礼も拒否した。空港で強くハグし合って別れた。
トビリシ空港には大きく「Tbilisi is the city that loves you」とサインがあった。
                   〈旅の期間:2011年 彩子)

『地球千鳥足』 幻冬舎


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