住宅団地 記憶と再生 №36 [雑木林の四季]
21・補記 ライネフェルデの団地 Leinefelde Sudstadt (37327 Leinefelde-Worbis,Thuringen) 2
国立市富士見台団地自治会長 多和田栄治
『ライネフェルデの奇跡』はみごとな写真集でもあり、手にとって見てほしい.。わたしが読んでライネフェルデ再生事業の特徴と思えた点をあげれば、つぎの4点である,①内側の住棟を撤去して共同の中庭を造成、②長大な住棟を縦割りにしてポイントハウスに転換、③住戸平面の多様化、1階部分の公共施設化、④解体パネルの活用とパネル工法住宅の可能性の探求である,。
団地の縮小は、まずフイジカー街区中央の2棟撤去からはじめた。最初の1棟の解体工事のさい、廃材の破片が飛び散り、樹木を倒すなどして、周辺住民の怒りが爆発した。作業上の不備だけでなく、建築家たちは、PCパネルを廃材にして道路に敷く砂和に使うのではなく、もっと意味のある活用のしかたはないのかと反省、再検討をくわえた。その結果、2棟目は基礎の1階部分を残し、改築してエレガントな団地の共甘施設、住民集会所に生まれ変わらせることにした。これを「かつての住棟の厳かな記念碑」「パネル工法住宅への敬意にみちた取り組み」と表現している。
住棟撤去の跡地には「日本庭国」を造園した。
ハノーバー万博に出展して喝采を浴びたのは、ヘルシェル通りの200メートルにおよぶ住棟を縦割りに中抜きし、ネーミングも「アーバンヴィラ」としたポイントハウスヘの改築である。
仕宅の絶対量の削減が要請され.、ほとんとが5~6階建てを4階以下にすべきとの意見で一致していた。さらには水平ではなく垂直方向での減築も提案された。5階建ての最上階をとりこわせば5分の4にはなるが、また屋根を作るので金がかかる.アーバンヴィラは、5階建て200メートルの長台住裸の最上階をとりこわし、さらに階段室2つごとに縦の住宅を中抜きして既存の階段室からアプローチする住宅にしたものである。つながる基壇のうえに整然と並ぶ立方体8棟、改修されて四面の外壁に不規則に配置された大型バルコニーや大小の開口部をもつ建物群は「偉大な都市改造実額のショーケース」と称賛され、いくつか賞も獲得した。
建物とその内部の改造をつうじて証明されたのは、バネル住宅のもつ価値、可能性である。中の鉄筋は錆びておらず、躯体は100年はもつ。パネル工法の建物は性能上きわめてフレキシブルであり、多様な住戸プランを可能にする。住宅内の改修はもちろん、店舗や事務所への改造もできる。解体パネルを活用して現に戸建て住宅が建てられている,。
2000年にはじまった「東の都市改造」は単なる住戸撤去プログラムではない。いぇっきょと並行して建物の建物の再利用に取り組んだライネフェルデの事績は「都市を生かす改造」といえよう。団地再生は、ここを起点に「全体整備」へと展開し、とくに駅周辺の地域の店舗や事務所、中庭住宅、幼稚園や学校などの修復、改築がすすめられた。駅前通りはショッピングストリートとして-新し、リンガウ適りとフールロット通りのあいだの地域は、昔のライネフェルドのロマンチックな雰囲気をとりもどした。,
1995年にGRSがマスタープランでライネフェルデ南地区の計舶的「縮小」のイメージをしめし10年をへて、主要な対策はすべて完了した。住宅地は外周から内部にむけて縮小され、1980年代末の人口廿14,000人が2006年末には約5,700人になった.1,600戸の住宅を撤去、2,002戸を完全リニューアル、878戸を部分改修して、40戸を新築した。建物撤去、インフラや外構整備、個人投資などもふくめて、1億4、400万ユーロ(当時230億円)かかったこと仁なる。
ライネー7ェルデ住宅公社は2005年から黒字になった。賃貸住宅居住者の4分の1以上が生活扶助世帯であり、日々の家賃は郡から支払われる。改修後の住宅でも平米あたりの基本家賃は4.5ユーロ(約720円)をこえない。これに光熱費が加わる。高齢者向けや3世代共住コンセプトの住宅も供給される。
本書の「ライネフェルデに学ぶ」の章の結語を引用して、わたしの補記をむすぶ。「近代の計画された世界一工業的住宅建設と機能主義的都市計画―の正常化が、じつは世界的にわれわれを待ちうけている次の文化的な挑戦になるであろう。パネル工法の住宅が歴史的市街を守るための単なる取り壊しストックとみなされているかぎり、問題の世界的な重要性は見失われる。重要なのはエコロジーの見地である,。近代の建物資産も資源であり、それを捨てることはできない。。再生して未来へ引き継がねばならない」(The Marvel of Leinefekke.p159)
『住宅団地 記憶と再生』 東信堂
『住宅団地 記憶と再生』 東信堂
2024-05-30 10:45
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