SSブログ

夕焼け小焼け №13 [ふるさと立川・多摩・武蔵]

 ラーメンを楽しむ その2

            鈴木茂夫

 TBSも東京・赤坂に本拠をかまえて3年、町の中になじんで来た。
 昭和33年(1958)のある日、地元の情報に明るい坂元が、嬉しそうに口を開いた。
 「うまい料亭があるんですよ」
 「ここは料亭の町だ。どこのだって、うまいに決まってるよ」
 「中華料理の赤坂・栄林(えいりん2022年閉店)です。昼なら俺たちも食えますよ」
 坂元を先頭に一ツ木通りからみすじ通りへ出た。栄林は立派な構えの店だ。丁寧な女性の挨拶を受け、テーブルに着く。
 「この店は、料亭栄林(りょうていえいばやし)だったのですが、中華料理・栄林に改めました。ご贔屓にしてください」
 メニューを眺める。料理はそこそこの値段だ。坂元の顔を見ると、
 「スーラータン麺お願いします」
 と注文した。10分ほどすると丼が運ばれてきた。
 とろっとした仕上がりのスープ。口につけると、酸と酸と辣が入り交じって酸味を強く感じる。爽やかな感触。麺は細めで柔らかい。具は椎茸、タケノコの細切り、溶き卵の甘みと酸味が舌に優しく絡む。
 誰も黙って食べている。先に食べ終えた坂元が、口を拭って、
「スーラータン麺は、酸辣湯麺と書くんですよ。ここのシェフが創り出したので、これはここにしかないんです」
 「ご馳走さま、うまかったなあ」
 誰もがうなずいた。私もその一人だった。栄林の麺はこれだけではない。豚肉あんかけ焼きそば、豚肉つゆそば、青菜つゆそば、五目つゆそばなど。それらを食べるのにせっせと通ったものだった。通算で30年を超えるつきあいだった。
 スーラータン麺はカップラーメンとなっている。明星 中華三昧 赤坂榮林 酸辣湯麺 (スーラータンメン)
 栄林・赤坂店は2022年に閉店。栄林・神楽坂店に移転、東京都新宿区袋町3-6 神楽坂センタービルANNEX 2F 電話050-5589-2383として営業している。
 榮林・軽井沢店は、毎年4月中旬から11月初旬までの季節営業

 昭和35年(196011月、ある夜、取材先からハイヤーで帰社する途中、千駄ヶ谷の国立競技場の近くに、タクシーが10数台も停車しているのを見かけた。運転手に、
 「どうしたんだろう、何かあったのかな」」
 「ラーメン店があるんですよ。私もときどき食べてます」
 「有名なんだ。ここは。食べていこうか」
 車は道路脇に駐車した。
 「ホープ軒」の看板。店のカウンターに席はない。立ち食いするのだ。メニューを手にし、ワンタンメンを注文した。空いた席に座る。丼が出された。
 スープは濃い味だ。うまい。太めの麺は腰がある。予期していたよりも、上質のラーメンだ。ふうふう言いながら食べ終わった。この日の夕食はこれで間に合う。
 「ご馳走さま、美味しかったよ」
 カウンターの中にいる鉢巻きした親父に声をかけると、
 「ありがとうございます」
 良い笑顔で応えた。それから数日して、仕事仲間とお昼にやってきた。たまたま、客が少なかったので、親父さんが牛久保英昭と名乗って話してくれた。
 昭和35年に、屋台で商売をはじめたとか。ラーメンの作り方は我流で勉強しました。
  昭和50年(1975)に、この店を構えました。豚の背脂を入れたスープ。麺は中太で腰があります。今は4階建てにして、自前の製麺所で生産しています。
 おかげさまで多くのお客様に支えられ、繁盛しています。店は若い者と一体になり、店の味を良くしていくつもりです。
 24時間営業のホープ軒は、賑わっている。


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。