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こふみ会・句会物語 №118 [文芸美術の森]

こふみ会・句会ものがたり  
行くも良い良い、行かぬも良い良い……コロナ禍による在宅句会その32 
「若鮎」「陽炎」「蜆汁」「猫の恋」 
                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

幹事の尚哉さんから、≪令和5年3月の句会≫の案内状が送られました。

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こふみ会の皆さま

ここのところ、暖かな日がつづいています。
春が来ているんだなあ、と実感させられますね。

さて、こあみ句会3月のお題を発表いたします。
虚視さんにもご協力いただきました。
「若鮎」 「陽炎」 「蜆汁」 「猫の恋」

3月15~17日のあいだに、尚哉まで、お送りください。
以降、順調にいけば、28日ころには最終結果をお届けできると思っています。

では、よろしくお願いします。

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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。14名 56句

【若鮎】
01 いのち立つ若鮎速し空は晴れ   (一遅)  
02 清流に香を運びたる若鮎や    (なつめ) 
03 若鮎の上りくるらん多摩川に   (玲滴)  
04 若鮎や千の命と輝ける      (尚哉)  
05 若鮎のまだ世も知らずに釣られたり(茘子)  
06 川下る生死を恐れぬ若鮎の    (兎子)  
07 髭面が苦がそうに食む上り鮎   (孑孑)  
08 戦場の水澄みて若鮎遊ぶ     (下戸)  
09 若さとは突つ走ること上り鮎   (すかんぽ)
10 若鮎と呼ばれる時の短さよ    (虚視)  
11 若鮎の宇宙めざして昇りけり   (矢太)  
12 水面ゆれ若鮎さばしる影の見ゆ  (弥生)  5
13 漕ぐ舟の 櫓に追われゆく上り鮎 (紅螺)  
14 若鮎光る青春の一瞬(ワンショット)(鬼禿) 

【陽炎】
15 陽炎の海道行くやワレキューレ  (下戸)  
16 陽炎や母一文字に眉を引く    (矢太) 
17 遠く陽炎にゆれる東海の原子炉  (鬼禿)
18 いづこへか君消えひとり陽炎見てる(弥生) 
19 陽炎のごとき女の恥骨かな    (すかんぽ)
20 かげろへる人街もみな崩れゆき  (虚視) 
21 推敲の道ゆらり陽炎の迫る    (一遅)
22 薄眼して陽炎のなか猫蕩け    (孑孑) 
23 陽炎に我が行く末も揺れてをり  (尚哉) 
24 別れ来て君居ぬ里に陽炎の立つ  (玲滴) 
25 陽炎を布団がわりの午睡かな   (茘子) 
26 ビル歪むCGのよに陽炎に    (兎子)  
27 ギブスつけ少女陽炎の道渡る   (紅螺) 
28 陽炎を連れて旅立つ飛行機や   (なつめ)

【蜆汁】
29 研ぐ味噌にその人があり蜆汁  (下戸) 
30 吞んだ朝岳父とすする蜆汁   (鬼禿) 
31 良き酒の〆や手作り蜆汁    (尚哉) 
32 蜆汁砂鉄混じりの椀の底    (すかんぽ) 
33 深酒の夫のたわ言蜆汁     (弥生)   
34 蜆汁啜りて父の背の丸き    (なつめ)  
35 蜆汁瀕死の心を滋養する    (兎子)
36 蜆汁ふるまって終う老舗かな  (孑孑)  
37 妻老いて声音も優し蜆汁    (紅螺)  
38 明日死すと思いて啜れしじみ汁 (矢太)  
39 病床に蜆汁吸う父の肩     (玲滴)  
40 貝裏に幽けし(かそけし)青さ蜆汁(虚視) 
41 背を向けし母に懺悔の蜆汁   (茘子)
42 蜆汁ひとくちすすり恋となり  (一遅)  

【猫の恋】
43 前髪を唾でととのえ猫の恋    (下戸)  
44 裏切りは人だけのこと猫の恋   (矢太)
45 恋猫は忍ぶ恋などできませぬ   (茘子)  
46 虚勢せし我が家の猫の恋知らず  (虚視)
47 赤ちゃんの夜泣きいやあれは猫の恋(玲滴)
48 塀の外寝た子を起こす猫の恋   (兎子)  
49 ただ闇雲に走って泣いた恋猫の頃 (鬼禿)
50 猫の恋笑い飛ばして四十路坂   (一遅) 
51 渾身の呼び声届け猫の恋     (紅螺) 
52 姿なき裏の空き地の猫の恋    (なつめ) 
53 辛かろうモンローウォーク猫や恋 (孑孑)
54 猫の恋ドタンばちゃんで静かなり (尚哉) 
55 恋猫に舐められてゐる膝小僧   (すかんぽ)
56 おさなにはただ恐ろしき猫の恋  (弥生) 

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

【孑孑選】 おさなにはただ恐ろしき猫の恋
      ・・・こわがらなくていいのよ。なんでもないの。ほんとなんでもないのよ。

【矢太選】 陽炎のごとき女の恥骨かな
      ・・・ほんに、遥かなる陽炎であるなあ。と郷愁が疼く

【弥生選】 戦場の水澄みて若鮎遊ぶ
      ・・・千曲川と犀川をのぞむ川中島の古戦場をおもいました。往時茫茫、今は        
        若鮎が遊ぶ平和な時代。

【茘子選】 蜆汁ひとくちすすり恋となり
      ・・・理屈抜きに心に飛び込んできました

【鬼禿選】 若鮎の宇宙めざして昇りけり
      ・・・確か先日発表した新宇宙飛行士の名は 米田「あゆ」。まだまだ「昇り        
        けり」は先でしょうが「若鮎」明るさと元気に【天】。

【一遅選】 貝裏に幽けし青さ蜆汁
      ・・・蜆の小さな貝裏の青味に目を止める作者の観察眼に天。

【すかんぽ選】 明日死すと思いて啜れ蜆汁
        ・・・「大袈裟な」と笑い飛ばせぬお年頃

【なつめ選】 水面ゆれ若鮎さばしる影の見ゆ
       ・・・まだ冷たさが残る川の水底に、姿が見えないほど生き生きと泳ぐ若鮎。         
         写実的な美しさの中に生命の力強さを感じます。

【下戸選】 恋猫に舐められてゐる膝小僧
      ・・・猫になめられる気持ちよさ、悪さがつたわってきてぞくぞくしました。

【兎子選】 陽炎に我が行く末も揺れてをり
      ・・・暑い日の午後、陽炎が見せる焦燥と憔悴を感じました。

【紅螺選】 水面ゆれ若鮎さばしる影の見ゆ
      ・・・格調高く若鮎の動きを詠んで素敵です。さ走るがいいですね!

【玲滴選】 蜆汁啜りて父の背の丸き
       ・・・私はシジミ汁の句に年老いた父の肩を詠んだのですが、生煮えのまま         
         でした。この句を読んで、こう書きたかったのだと思いました。

【虚視選】 陽炎を布団がわりの午睡かな
      ・・・兼題から飛び方が素晴らしい!なんと、陽炎が布団がわりとは。

【尚哉選】 研ぐ味噌にその人があり蜆汁
      ・・・飲みの席のわき役にも愛を。とても健気な句だと思います。

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≪今月の天地人句≫

天 ギブスつけ少女陽炎の道渡る(紅螺) 22点
地 陽炎に我が行く末も揺れてをり(尚哉) 20点
人 水面揺れ若鮎さばしる影の見ゆ(弥生) 15点

≪今月の天地人≫

天=紅螺さん・虚視さん 33点
    代表句=ギブスつけ少女陽炎の道渡る(紅螺)
    代表句=若鮎と呼ばれる時の短さよ(虚視)
地=すかんぽさん 31点
    代表句=恋猫に舐められてゐる膝小僧
人=弥生さん 29点
    代表句=水面揺れ若鮎さばしる影の見ゆ
    
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≪幹事より、ひと言≫

桜の開花以来、いろんな「命」が、地上に萌え出てきました。わが家の「鰻の額」ほどの庭にもエンドウの花が咲き、蝶や蜂が舞っています。足の怪我もだいぶ良くなってきたので、こんな陽気のもと、もっと外に出て、春を満喫しなければなあ。万歩計アプリ片手に、またウオーキングに精出すことにします。

この集計作業の途中に、「孝多さんご逝去」のニュースが飛び込んできました。
TCCに、そしてこのこふみ句会に、多大な貢献をされた方でした。謹んで、ご冥福をお祈りいたします。折から「リアル句会」開催の話が持ち上がっていますが、孝多さん追悼句会、ぜひリアルでやりたいものですね。5月か6月になるでしょうか。ぜひ検討しましょう。(尚哉) 
                

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