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地球千鳥足Ⅱ №20 [ふるさと立川・多摩・武蔵]

歩いても歩いても眼前に虹、霊感の大藩布
   ~ジンバブエ共和国~

         小川地球村塾塾長  小川彩子

 世界三大瀑布はイグアス、ナイアガラとここヴィクトリア、私にとって3つ目のここに、やっと本年来ることができた。ヴィクトリア・フォールズ空港に着くやいなやバスでキングダム・ホテルへ。バスを降りる時「さよなら」と運転手のロから日本語がこぼれた。続いてホテルのベルボーイが「私の名前は“マジメ(日本語)″です」と私の反応をうかがいながら自己紹介、もちろん、「最高のお名前ね!」と会話を楽しんだ。どの国に行ってもホステル級の安ホテルか精々三ツ星ぐらいまでに泊まる私たちだが、ジンバブエは「かなり危険」という情報に依拠し、「かなり良い」ホテルを予約しておいた。危険の理由はインフレや高い失業率に起因するが、雄大な自然の中を歩く間に危険を感ずることはなかった。しかし物価は高い。通貨は米ドルや南アフリカ共和国のランドが使われており、滝の入園料30ドルだ。先に飛び出した夫は「そんなお金払わなくても見られるよ!」という人について行き、やがて「滝はなかったがとても美しい風景だった」と戻って来た。ザンベジ川上流へと自然保護区をガイド付きで散策し、象や鰐を見て来たのだ。
 何はさておき滝へ突進、入園料2人で60ドル、ビニールコート2つと傘1つを借りて11ドルと結構なお値段。観光はこの国の重要な収入源なのである。
 盛り上がり迫りくる滝と水煙には恐怖を覚えた。滝にかかる虹には神秘性があり、周りの森林も砦の威力を高める絶好の背景だ。人間が造った社会の無力さを思い、「自然は人間より偉大なり」と唱えつつ、大雨のような水飛沫でずぶ濡れになりながら歩き進んだ。だが風景は期待したものとは異なり、迫力はあるものの「写真で見るあの、水と虹のバランスの美しいヴィクトリアの滝はどこ?」と首をひねった。4月中旬は水量が多すぎて美観が落ちるのだろうか。滝から距離のある遊歩道でも飛沫に打たれる。困ったことに2人ともデジカメに水が入ってしまい、体も冷えてきて、ほうほうの体でホテルに戻り、夫はカメラの内部を乾燥させるのに必死だった。
 夕食時には太鼓とダンスのショーを観た。毛皮の腰布と帽子の男性コーラス・グループがダンスと太鼓の伝統音楽を披露、実にアフリカ的だ。客の中から希望者を募ってダンスに参加させる。おめでたい私も飛び出した。盆踊りとディスコダンスをミックスした奇妙キテレツな踊りに、見よう見まねのアフリカダンスも混ぜた3種ちゃんぽんダンスは唯一の日本人客へのお義理もあってか拍手喝乗だった。余韻さめやらぬ私の目に、鬱蒼と茂る樹木の上に満月が見えた。あ、そうだ!満月の夜には滝のゲートが開く。私はホテル従業月のフアプリエを誘ってまたまた滝へ。玲瀧(れいろう)の滝にかかる満月と虹と雷鳴、これほど幻想的な光景があろうか。ヴィクトリア大瀑布の満月の夜を私は忘れえないだろう。
 翌日は夫と別行動で街を散策、土産物屋が侘しく佇み、点在するホテルも華やかさがなかった。昨夜のショーグループの練習風景に出くわし、言葉を交わしてまた滝へ。現地の人に「滝を見るのは午後がいい」と言われていたが理由がわかった。午前の滝はこの時期は逆光のため写真は難しい。その上昨日よりひどいシャワー(飛沫)、まるで大雨だ。そのせいか、今日の虹は滝の前にはない。遊歩道を歩く私の眼前に、身の丈程度の小さい虹が次々と現れる。歩いても歩いてもまた次の虹がある。信じられず何度か後戻りして確かめたが同じ場所に虹はあった。
 1時間の歩行中10回は現れただろうか。全身濡れ鼠で「歩いてもォ、歩いてもォ、虹は目の前にイ~」と歌いながら虹のアーチを次々とくぐり続け、道の反対方向からやって来る人々にも小さな虹の存在を教えた。小川彩子というちっぽけな人間がいよいよ小さく思え、幼児が縄跳びをするように虹のアーチをくぐつた。子どもに帰った私は霊感を受けながら、未来への小道を足取り軽く歩き続けた。シャワーはもはや脅威ではなかった。
                        (旅の期間‥2011年 彩子)

『地球千鳥足』 幻冬舎



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