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こふみ会・句会物語 №117 [文芸美術の森]

こふみ会・句会ものがたり  
行くも良い良い、行かぬも良い良い……コロナ禍による在宅句会その31 
「二月」「春泥」「桜貝」「草の芽」 
                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

幹事のすかんぽさんから、≪令和5年2月の句会≫の案内状が送られました。

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こふみ会の皆さま

立春も過ぎ、にわかに空が明るくなってまいりました。
2月のこあみ句会のご案内をさせていただきます。

●【1月天】の茘子さんにもご協力いただいた2月の兼題は以下の通り。
①二月
②春泥:春の泥
③桜貝
④草の芽:名草の芽(甘草の芽:桔梗の芽:菖蒲の芽など特定の芽でも可)

●投句締切は2月15日(水)とさせていただきます。
●投句先は、このメールのすかんぽまで。

うかうかしていると、2月はあっという間です。
この、めくるめく季節を存分に吟じてください。      すかんぽ

*選句締め切りは22日(水)にいたします。

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【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。15名 60句

【二月】
移住せし町とも馴染み二月かな    (虚視)     
春を産む苦かこの寒さ今二月     (一遅)     
躰底に重石残して二月いく      (鬼禿)     
気まぐれな二月花粉の風も吹く    (弥生)
肩寄せて二人でいます二月です    (孝多)  
北国の二月の祭り絵蝋燭        (玲滴)  
ストーブが壊れ思案す二月の朝        (兎子)
卵割る二月の朝の黄身ふたつ        (なつめ) 
二月や土の産むものみな光る          (矢太)   
新調の服着る二月目に力              (紅螺)    
いつもより安くならぬか2月分        (尚哉)
梅組も桃組もファイト桜組も          (孑孑)       
まあいいか晴れた2月に布団ほす      (下戸)   
これ二月何もせぬうち逃げてゆく      (茘子)      
球根の花剪り二月逝かせけり          (すかんぽ) 

【春泥】
県道を渡るトラクタ春の泥          (すかんぽ)   
春泥は義理チョコの色足とらる        (茘子)    
春泥に投げ飛ばされて五分と五分      (下戸)
春泥の大地ひまわりきっと咲く        (孑孑)
春泥に靴を取られし我小2            (尚哉)   
奇声上げ春泥の道駆ける子等          (紅螺)
春泥を噛んで戦車は逡巡す            (矢太)      
ひかえめに獣通るや春の泥            (なつめ)  
この街で春泥もなく歳重ね            (兎子)       
無残やな春泥に足とられけり      (玲滴) 
美しき人帰り行く春の泥       (孝多)  
靴底に巡りし遠野の春の泥     (弥生)  
いま覚めし生命(いのち)の匂い春の泥 (鬼禿)  
春泥にまみれ軍靴のまま眠る     (虚視)  
足取られ取られつつ行く我が春泥   (一遅)   

【桜貝】
透いて見る昔見た夢桜貝              (なつめ)    
甘波に弄(もてあそば)れて桜貝    (鬼禿)    
櫻貝あしたもいっぱい遊ぼうね        (矢太)
マニュキュアの手にさらさらと桜貝  (孝多)    
砕いたよ或の日の恋は桜貝            (兎子)    
耳たぶの血の色透けて桜貝   (虚視)  
津波の浜手向けの花か桜貝            (茘子)    
人魚見ました確かネイルは桜貝    (一遅)    
桜貝小瓶の中の潮の騒                (紅螺)    
桜貝さがして海に日が落ちる     (弥生)
桜貝たとへば淡き恋ごころ            (すかんぽ)
スマーイリン恥ずかしがり屋桜貝      (孑孑)
前世のどこで逢ったか桜貝            (尚哉)    
桜貝ありて昔の恋偲ぶ         (玲滴)
桜貝あんた得してるわとうちの妻      (下戸)        

【草の芽】
名の通り山に草芽の二月堂      (鬼禿)    
草の芽やもういいかいまあだだよ      (矢太)   
立ち入るな生きているだろ草の芽も    (兎子)
眠りから醒めて芹の芽背を伸ばし      (紅螺)
喜びは草の芽の瞳あちこちに          (茘子)
ものの芽や下校の子らの駆け抜ける    (尚哉)    
草の芽は伸びる私は縮みゆく     (弥生)   
ものの芽が突き上げている空がある   (孝多)   
草の芽や広野はソフトフォーカスに  (虚視)      
草の芽の大室山を駆け登る           (すかんぽ)  
木々芽吹きこの方舟にも希望あり   (一遅)     
はしばみの声次々と草の芽や          (なつめ)
草芽ぶきアイネクライネナハトムジーク(下戸)   
落葉から顔出す草の芽の青し      (玲滴)    
草の芽を思春期の犬嗅いでいる        (孑孑)   

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【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●卵割る二月の朝の黄身ふたつ (なつめ)
鑑賞短文=感覚のみずみずしさ、さわやかさに天。(茘子)
鑑賞短文=早春の、光とかいのちとか愛とかを、黄身二つで表象した。(矢太)

●球根の花剪り二月逝かせけり(すかんぽ)
鑑賞短文=・・・なんと綺麗な句。こうすれば、「逝」の字も使えるんですね。(尚哉)

●甘波に弄(もてあそば)れて桜貝 (鬼禿)
鑑賞短文=甘波と言う言葉に惹かれました。波と桜貝が絡み合っている。ちょっとエロティックですね。(虚視)

●北国の二月の祭り絵蝋燭 (玲滴)
鑑賞短文=寒い北国。特にきびしい二月のかまくらで聞くおばばの話。聞く一同は我れを忘れています。佳句をありがとうございました。(孝多)

●いま覚めし生命(いのち)の匂い春の泥 (鬼禿)
鑑賞短文=春泥と言えば着衣を汚すイメージしかなかったのですが、こんな風にとらえれば春泥も悪くないと思えました。(玲滴)

●草の芽を思春期の犬嗅いでいる (孑孑)
鑑賞短文=思春期の犬にまいりました。とてもいい視点と、表現だと思いました。(下戸) 

●靴底に巡りし遠野の春の泥(弥生)
鑑賞短文=早春の遠野の旅から帰られたのですね。河童淵、民話、宮沢賢治、高村光太郎の侘住い・・・懐かしく甦ります。(紅螺)

●桜貝小瓶の中の潮の騒 (紅螺)
鑑賞短文=私も瓶に貝やシーグラスをいれて潮騒や潮の香を懐かしんでおります。五感に訴える句。(弥生)

●二月や土の産むものみな光る (矢太)
鑑賞短文=命が絶えたと思ってしまう冬に「産むもの」に目を向けた、その視線の向かう先にハッとさせられました。(兎子)
鑑賞短文=着眼点が秀逸。新しい息吹の生命力が見事に表現されています。(すかんぽ)

●草芽ぶきアイネクライネナハトムジーク (下戸)
鑑賞短文=耳慣れたこの曲、なるほど芽吹きの陽気さを感じる。七五調にうまくはまった春の呪文のような心地よさです。(一遅)

●春泥にまみれ軍靴のまま眠る(虚視)
鑑賞短文=戦争や大地震が重苦しい二月。TV画面そのままの叙事詩です。少し眠らせておいてあげましょう。(鬼禿)

●美しき人帰り行く春の泥 (孝多)
鑑賞短文=美しい人と泥の対比がなんとも艶めかしい…。想像力が掻き立てられます。
(なつめ)

●ものの芽が突き上げている空がある (孝多)
鑑賞短文=微細な生物を「ものの芽」と壮大に捉え、「突き上げている」のが青空ではなく、二月のどんよりした重い「空」。目眩く遊ばせてくださいました。(孑孑)

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≪今月の天地人≫

総合の天は・・・虚視さん 37点
    代表句=春泥にまみれ軍靴のまま眠る
総合の地は・・・なつめさん 33点
    代表句=卵割る二月の朝や黄身二つ
総合の人は・・・鬼禿さん 32点
    代表句=今覚めし命の匂い春の泥
    
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≪幹事より、ひと言≫

今月は選が割れ10点以上の句が11句ありました。
そんな中でなつめさん・矢太さんの句が天を2名づつ獲得して上位に輝きました。
高得点者は虚視さん。二月8点、春泥11点、桜貝13点、草の芽5点と
満遍なく選を獲得。安定した力を発揮されました。

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≪孝多より、ひと言≫

 都内某所から、先日贈られて来た或る同人誌の座談会の記事でのことですが、或る人が、何故、その人は歴史的仮名遣いで作句するのか、質問を受けておられました。
 すると、そのお答えのひとつは、師匠がそうだったからであり、もうひとつは、歴史的の方が格調が高いような気がしたから、というものでした。
 いろいろなご意見を承りたいと思います。
 皆さまは如何ですか。歴史的仮名遣いと、新カナ遣いのことです。決して会としてまとめると言ったような暴挙に出ようというものではありません。どうぞ、ご自由に率直なご意見をお願い申しあげます。
              令和5年2月26日      孝多拝



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