私の中の一期一会 №271

　　　　  岸田首相は早々と「脱マスク」に踏み切る。Ｇ７議長国を意識か？

　　　～厚労省幹部は「一気に“脱マスク”となることはないのではないか」と～

　　　　　アナウンサー＆キャスター　　藤田和弘

　政府は１０日、コロナ感染症対策のマスク着用ルールを３月１３日から緩和することに決めた。

　５月には広島でサミットが予定されている。

　Ｇ７の議長国日本が各国と比べると感染対策が遥かに厳しいことを岸田首相は気にしていたという。

　だからＧ７までにルールを緩和することは政権の優先事項だったと新聞にも書かれていた。

　コロナは５類になって、感染症法上ではインフルエンザと同等になったが、コロナウイルスはインフル

ザウイルスと同類ではない。

　コロナは感染力がインフルエンザの３倍ぐらい強いそうで、オミクロン株の感染者数はケタ違いの増加をみせてきた。

　高齢者の死者数もインフルエンザより多い。

　ウイルスの変異株はまだ世界中で現れ続けている・・

　となれば、インフルエンザより厳しい感染対策が必要になるのではないか。

　感染拡大の度に悲鳴を上げてきた医療体制を「5類」に適したものに整備するのは容易ではない筈だ。

　東京都医師会の尾崎会長も、「５類へ移行しても多くの診療所が積極的にコロナを診察するようになることは現実的でない」と述べているではないか。

　岸田首相の早とちりは国葬強行ばかりではなかった。

　国民は３年以上もマスク生活を続けてきたから、気持ちの上では“マスク無しの日常”を待望しているのは確かである。

　だが、マスク着用を何故３月１３日から緩和するのか分からない人は私ばかりではないだろう。

　丁寧な説明もなしに、政府は１３日以降“マスクを着用するかどうかは個人の判断に任す”ことを決定してしまった。

　東京都は１４日に２２３２人の感染者を確認している。

　和歌山県ではこの日初めて、オミクロン変異株XBB・1・5（クラーケン）の感染者が見つかった。

　１４日は全国で３万２４２６人もの新たな感染者が出ていた。

　クラーケンはアメリカやカナダで流行しているウイルスで、感染力が強いことが分かっている。

　新しい変異株が国内に入ってきたことが確認されたということは、感染拡大の心配がまだ続いているということだろう。

　岸田内閣の無能無策ぶりは目に余る。

　政府は、屋内、屋外を問わずマスクを着用するかどうかは個人の判断に委ねるという。

　それなのに、周りの人に感染を広げないため医療機関を受診する時や高齢者施設を訪問する場合にはマスクの着用を推奨している。

　ラッシュ時など混んだ電車・バスに乗る時や混雑した場所に行く時などもマスクは必要だという。

　政府の新たな方針によると、全員が着席可能な新幹線や航空機内ではマスクを外すことが容認される。

　しかし新幹線の自由席が混んでいたら“マスク着用”となるのだろう。

　何だか支離滅裂で、個人の判断に委ねた意味が感じられない。

　新幹線の車掌さんはご苦労様だなあ・・

　電車内ではこれまでもマスク着用をめぐって乗客同士のトラブルがあった。

　日本全国の交通機関で、マスクをめぐるトラブルが多発するかも知れない。

　ベビーカーと共に乗ってきた若い母親がマスクをしていなかった。

　座席から年配の男性が「マスクをしないと降ろされますよ」と声を掛けた。

　「私に話しかけないでください」と若い母親は取り合わない。

　「私は弁護士だから注意するんです」と男性・・・

　若い母親はマスクをつけようとしなかった。

　昨年、私が電車内で見かけた実際にあった光景である。

　社会調査研究センターが今月5日に行った全国世論調査によると

　政府がコロナを「２類」から「5類」に引き下げることについて「妥当だ」という回答が３６％、「時期尚早だ」と答えたのが３７％で拮抗していた。

　「引き下げを早めるべきだ」は１０％しかなかった。

　マスク着用を個人の判断に委ねる政府の方針に対して、どうするかを尋ねたところ「これからもマスク着用を続けたい」が過半数の５２％を占め、「外す機会を増やしたい」の４２％を上回った。

　この調査に女性の６１％が「これからもマスク着用を続けたい」と答えていた。

　男性は５１％が「外す機会を増やしたい」と回答した。

　日本人は男性より女性の方が感染防止に関心が高いことが分かった。

　感染症の専門家は、「マスクには感染防止効果がある。着用緩和が国民のメリットになるか疑問だ」と溜息をついていた。

　厚労省幹部は「３月は花粉が飛ぶシーズンだ。日本人は周囲を気にする国民性もある。この国が一気に“脱マスク”となることはないのではないか」と見通している。

　最新世論調査によると

　岸田内閣を「支持率する」　　　　２３％　１月より２ポイント減で過去最低。

　　　　　　「支持しない」　　　　６５％、１月の６３％より増えて過去最悪。

　岸田内閣のコロナ対策の評価

　　　　　　「評価する」　　　　　２３％

　　　　　　「評価しない」　　　　４０％

　　　　　　「どちらとも言えない」３７％

　岸田内閣の物価対策

　　　　　　「評価する」　　　　　　８％

　　　　　　「評価しない」　　　　７２％

　　　　　　「わからない」　　　　１９％

　先日、冷たい雨の中をクリニックに行くため外出した。

　マスクから漏れる息でメガネが曇って困ったが、“マスクを外す”気にはなれなかった。