SSブログ

こふみ会・句会物語 №116 [文芸美術の森]

こふみ会・句会ものがたり  
行くも良い良い、行かぬも良い良い……コロナ禍による在宅句会その30 
「歌留多」「金目鯛」「お正月」「ダイバーシティ」 
                俳句・こふみ会同人・コピーライター  多比羅 孝

幹事の下戸さんから、≪令和5年1月の句会≫の案内状が送られました。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
こふみ会の皆さま

2023年1月   あけましておめでとうございます
こふみ句会の新しい一年が始まりました!
早速、今月の兼題をお届けいたします。

兼題は、①歌留多(百人一首) ②金目鯛  ③お正月  ④ダイバーシティ(多様性)
です。

①歌留多(百人一首)と ③お正月は、孝多先生からいただいた兼題です。
 「歌留多」は「百人一首」も可、「お正月」は「正月」も可とします。
④ダイバーシティ(多様性)
 ダイバーシティは最近のトレンドワードのひとつで、「多様性」と訳されます。
 性別、国籍、人種、年齢などの「壁」のない社会のキーワードです。
 「多様性」の言い換えも可。無季です。各自で季語をお願いします。

投句の締切を1月11日(水)といたします。
新春第一回のこふみ句会、ふるってご投句ください。
                以上  1月幹事 下戸

※選句は23日(月)までに幹事へお送りください。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
【上載の通知によって作成・作句された今回の全作品】は下記のとおり。15名 60句

◆歌留多
一瞬の静けさが好き歌留多とリ  (下戸)
孫の手にばあば及ばぬ歌留多かな  (玲滴)
先取りは戦きの始まり初歌留多  (矢太)
お座敷に眼鏡もとんで歌留多女子  (孑孑)
蝉丸がいつも気になる歌留多取り(すかんぽ)
小町飛び 法師も跳ねて 歌留多取り  (孝多)
女子会は 歌留多 男子の品定め  (紅螺)
修羅となり皆腕まくり歌留多取り  (虚視)
似たような恋もあったか歌留多とり  (なつめ)
折節にイロバがるたの句読点  (鬼禿)
業平も小町も跳んで春うらら  (一遅)
振袖で競う歌留多の雄々しさよ  (兎子)
淡路島と聞くや須磨取る歌留多会  (弥生)
1ミリ差 歌留多取りにも VAR  (尚哉)
歌留多とりはしゃいだ母の乙女顔  (茘子)

◆金目鯛
大皿の金目鯛皆を睥睨し  (虚視)
金目鯛煮付けにしても虹々と  (なつめ)
金日鋼 紅の鱗の 筋目抜き  (紅螺)
食うてみよ 清濁にらむ 金目鯛  (尚哉)
ふたり宿責めるなその目で金目鯛  (一遅)
金目鯛お前も晴れ着で皿の上  (茘子)
朝夕の空が染めたか金目網  (孑孑)
言いたいこといろいろあれと金目鯛  (矢太)
金目鯛で  呑んだのが最後  だったなあ  (孝多)
せり人の声上ずるや金目鯛  (下戸)
金目鯛光る鱗や伊豆の春  (玲滴)
鍋底の金目鯛見る長い夜  (兎子)
黒船や下田朝市金目鯛  (弥生)
金目鯛 青空写して泣いており  (鬼禿)
目の玉をまずは突つかん金目鯛  (すかんぽ)

◆お正月
寝ておれば 正月なんぞ すぐ終わる  (尚哉)
正月や 一茶と歩く一里塚  (鬼禿)
子らを噛む 獅子にもマスク お正月 (孝多)
シンプルな間取の家のお正月  (すかんぽ)
お正月いつもの煮染に舌鼓  (なつめ)
寝正月一年の計夢の中  (茘子)
お正月今年は箱根の花御殿  (玲滴)
日付無き日記帳買う正月  (虚視)
外つ国の戦はやまずお正月  (弥生)
正月やちょい先延ばしだあの決断  (矢太)
ファンデーション少し厚めにお正月  (一遅)
お正月なにはともあれ朝湯かな  (下戸)
有為転変 乗り切りめでたく お正月  (紅螺)
小旗振る昭和の令和のお正月  (孑孑)
寝て起きてまた寝て起きて消ゆ正月  (兎子)

◆ダイバーシティ
和洋中ダイバーシティおせち重  (弥生)
雪溶けてダイバーシティよ死語となれ  (兎子)
埒(らち)のないダイバーシティや 春の雪  (鬼禿)
初観音ダイバーシティの極まれり  (一遅)
雑草の雑多混ざった枯野かな  (すかんぽ)
人の世は維多で佳ろし初詣  (孑孑)
のぴやかに ダイバーシティで 四方の春  (紅螺)
この春は在宅勤務も多様性  (玲滴)
多様性を 認めぬ国に 春は無く  (孝多)
ダイバーもシティもおいでよ囲炉裏ばた  (下戸)
見つけたり お節料理は 多様性  (尚哉)
対岸のダイバーシティの明の春  (なつめ)
ダイバーシティ十人十色の初出動  (茘子)
冬銀河アンドロイドを愛せるや  (虚視)
正月の神戸の匂ひダイバCITY  (矢太)

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
【天句の鑑賞】
「天」に選んだ句とそれに関する鑑賞短文を簡潔に書くというこふみ句会の約束事。

●冬銀河アンドロイドを愛せるや(虚視)
鑑賞短文=・・・良し悪しは別としてそんな時代ももうすぐそこに。説明的になりがちな兼題を見事に昇華させた秀句。(すかんぽ)
鑑賞短文=ダイバーシティからアンドロイドの飛躍が面白いですね。そこに冬銀河というロマンチックな季語がくる。俳句でサイバーパンクとは。(下戸)

●小町飛び 法師も跳ねて 歌留多とり(孝多)
鑑賞短文=役者揃いでした。業平さん、残念でしたが、私は「法師」の「跳ねて」にコンマ5を加点しました。(孑孑)
鑑賞短文=任天堂のマリオゲームをみているような。(尚哉)
鑑賞短文=静かな会場で行われる歌留多とりの、実は体育会系の、一瞬の試合場面が見えるようでした。「飛ぶ」と「跳ねる」の2語で臨場感が増しました。(玲滴)

●雪解けてダイバーシティよ死語となれ (茘子)
鑑賞短文=寒冷は人の心も縮こめる。他者を受け入れない頑なさから戦争も始まるのだ。深い句をありがとうございます。(一遅)

●シンプルな間取りの家のお正月(すかんぽ)
鑑賞短文=そして、シンプルな句。いいですね~。句の姿もさりながら、詠み手の考え方が気持ちよく伝わってきます。ありがとう。(鬼禿)

●似たような恋もあったか歌留多とり(なつめ)
鑑賞短文=有名な平兼盛と壬生忠見の忍ぶ恋の歌争い。詠者にもかってそんな恋の思い出がおありなのでしょうか。(紅螺)
●金目鯛光る鱗や伊豆の春(玲滴)
鑑賞短文=柔らかな日差しに揺れる海と光る鱗の取り合わせから、視覚・聴覚・嗅覚全てが感じられる句だと思いました。(なつめ)

●一瞬の静けさが好き歌留多とり(下戸)
鑑賞短文=そうなんです。この共有する感覚を見事に表現されてあっぱれ!(茘子)

●淡路島と聞くや須磨とる歌留多会(弥生)
鑑賞短文=そう、そうと景が浮かびます。心はずむ新年の記憶が甦ります。(紅螺)

●金目鯛で 呑んだのが最後 だったなあ(孝多)
鑑賞短文=実感、迫るものがある。矢太の歳になると、周りがつぎつぎ逝っちまう。(矢太)

●歌留多とりはしゃいだ母の乙女顔(茘子)
鑑賞短文=確かにそんな瞬間がある。鎧を脱いだ乙女顔が素敵だ。(虚視)
鑑賞短文=いいお母さん!若返ってはしゃぎすぎたかしら、と、テレているのです。とりまく御家族も、みんな、ニコニコ。佳句をご提示いただき、有難うございました。(孝多)
鑑賞短文=穏やかで、平和な正月の風景が目にうかびます。この時だけは、幸せなひとときです。(兎子)

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
≪今月の天地人≫

総合天 茘子さん(47点)
  代表句=歌留多とりはしゃいだ母の乙女顔
総合地 孝多さん(41点)
  代表句=小町飛び 法師も跳ねて 歌留多とり
総合人 下戸さん(31点)
  代表句=一瞬の静けさが好き歌留多とり

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *  
≪幹事より、ひと言≫

3人の天を獲得した茘子さんの「はしゃいだ母の乙女顔」は、「穏やかで平和な正月の風景が目に浮かびます」「いいお母さん!取り巻く御家族も、みんな、ニコニコ」「鎧を脱いだ乙女顔が素敵だ」など、幸せな正月のビジュアル喚起力に、多くの共感が集まりました。
一方、 こちらも3人から天を獲得した孝多さんの「小町飛び 法師も跳ねて」は、思い切った角度からの創作で、「法師も跳ねてに、コンマ5を加点」「任天堂のマリオゲームみたい」など、歌留多会の臨場感を鮮やかに活写したと評価を得ました。
おふたりの一騎打ちとなった1月のこふみ句会、最後は孝多さんを麩ふりきって、茘子さんが総合天に輝きました。

私は今回、虚視さんの「冬銀河アンドロイドを愛せるや」に天を入れました。俳句でこのようなサーバーパンクな表現ができるとは。見事なお点前に感動いたしました。ありがとうございます!

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *  
≪孝多より、ひと言≫

幹事から兼題が提示された。
意味を知ったり、例句を調べたりしたくて、歳時記をめくる……。
それはそれで、当たり前のことである。
しかし、たとえば、特定の3賢人、子規・漱石・竜之介。
あの人たちなら、その題で、どんな句を作っているか。
それが。ひと目で分かる歳時記は無い。
たとえば「時鳥(ほととぎす)」で……。
◆時鳥(ほととぎす)一尺の鮎(あゆ)串になり
と、作ったのは子規。
◆聞かふとて誰も待たぬに時鳥
と作ったのは漱石。
◆時鳥山桑(やまぐは)摘めば朝焼くる
と作ったのは竜之介。
と、分かる歳時記。いわば『三賢(さんけん)歳時記』。
仕方が無いから自分で作ってみよう!
幸い、今、私の手元には3冊の文庫本があります。これを使えばいい。
手間は掛かりますが、出来ますよね、皆さん。       (孝多)


nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。